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11◆◆覚 悟◆◆

隣国から外交官が来ており、父親が公務中のその娘を我が家で歓待する役を仰せつかる。



私はこの出逢いに生涯、感謝を捧げる。



「レイベーニア様の瞳はとても綺麗ですね。でも、見ている世界がとても狭いようですわ」



初対面から数刻後のこの言葉には面食らったが、父親と一緒とはいえ隣国から来た彼女。我が国では未婚の女性が嫁入り以外で国外に出るなど、聞いた事がない。


隣国から来た彼女の言葉だからこそ、私は『そうかもしれない』と素直に思えた。そう思った直後に目から鱗が落ちる思いで、目を見開いた。



背後から目隠しされた指の隙間からしか世界を見ていなかったことに気がついてしまった。



「レイベーニア様、お気を悪くされてしまいまして?」


エメラルドの瞳を眇めて私を覗き込む彼女に、ふるふると首を横に振るので精一杯。

そんな私を輝くエメラルドに写した彼女はさも嬉しいと言わんばかりに、私の傍へ来た。



その後、私は彼女と長く長く話し込んだが家人は特に気にしなかった。歓待と言えば言葉は良いが、宴もなければ催しも無いのだ。隣国からの客人とはいえ、シアは未婚女性。


軽んじている自覚はなくとも、帝国だからこんな扱いがまかり通ってしまう。既にレイ、シア、と呼び合仲ではあるが非礼を詫びる。


「レイは…本当に、とっても勿体ないわ……私のあの言葉だけで、こんなに……心底……悔しいけれど…………」


ブツブツと何やら言ってはいたが、彼女は我が家の対応に不満はないそうだ。外交的にも全く問題ない、とも。


「帝国No.2の御屋敷で、そのご息女自らの歓待を受けてるのよ?この帝国からは最高の扱いだと理解できるし、事実レイとのお話は凄く楽しいもの」


それならばせめてと、晩餐の席では私の拙い盾琴を披露。シアは大絶賛してくれたが、幼少期に爪弾いた程度なのであまり褒められると妙に罪悪感がわく。


「盾琴って…本当に盾の琴なのね!初めて見たわ」


「帝国でも我が家にしか無い…ああ、神殿に奉納したりはするか。でも、珍しいは珍しいと思う」


文字通り、盾に弦を張った代物で防具としても楽器としても中途半端な代物なので普及しなかったのだろう。


我が家では大昔から子供の成長を祝う儀式の時に玩具感覚で与えられる。






シアとの別れの日、私は勿論見送りの儀に参加した。





マーティングの婚約者として、私はあと何回かはこうして隣に立つのだろうね、シア。



10歳で目が覚めた。


15歳で夢から醒めた。


そして今、私は覚悟を決めた。さようならシア、ありがとう。

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