10◇王子達の観察メモ
マーティングは私の可愛い弟で、それなりに有能な子だ。瞳の色から、少しばかり厄介な立場なのだが。
そのせいで、マーティングがいらん気を回すハメになったのは可哀相だと思う。ので、狸爺達には相応の末路を用意しておこうと心のメモに深く記す。
マーティングの婚約についても、恐らくは瞳の色が関係していると思うのだが。
これについては私が手を尽くして調べても全く分からない。手がかりすら掴めないのだから、やはり何か重大な秘密があると考えて良いだろう。
しつこく調べていたので、父上から『お前が即位する時に教える』と言われたので当面は保留。
そのかわり、その婚約者について調べておいたが…別に問題はなさそうだ。気になる点はやはり瞳の色だが、父上が今は話す気がないのだから探るだけ時間のムダなようだ。
マーティングの問題行動の報告書が届く。
件の婚約者に関してのみ、との注意書きがあるので相性が悪いのかと憂いたが違った。2人の婚約は解消不可と父上から厳命されたものゆえに憂慮していたのは杞憂のようだ。
『好きな子をイジメるガキ』
端的に言えば、それだけのこと。
我が家の男は少しばかり残念な性質があるので、婚約者のご令嬢には苦労をかけると思うが。
マーティングに限れば、婚約者限定の嗜虐嗜好と強い独占欲が顕著だ。まぁ、王族の男としてみれば可愛いものだ。
あれで少し繊細な面もあるし、過激なことは無かろうから見守ってやればよい。過激どころか、エスコート以外では手も握って無いのは男としてどうかと思うが。
マーティングの下の弟の方が厄介な性質だろう。あれには早く受け皿たる嫁…順番的には婚約者を用意せねば。自力で調達してくれれば良いのだが。そんな奇特な令嬢は国内にはいないかもしれない。
更に下の弟については、明らかに政治的な思惑で結ばれた婚約者がいる。これについては本人が望めば解消できるので問題ない。この子は分かり易く嫉妬深いので、相手が可哀想かもしれないが。
隣の国と密約を結ぶべく、マーティングを留学へ。
あちらの国の男達は筋肉バカ…もとい脳筋…違う…体育会系の暑苦しい人が多いので、不憫ではあるが私のかわりに生贄として差し向ける。マーティングが筋肉に洗脳されない事を祈ったお陰で無事に密約を結んできた。
予定より半年近く早い事を褒めたが、婚約者の誕生日には間に合わなかったとボヤいていた。
そんなマーティングだが、帰国後の様子には微笑ましいものがあった。婚約者をイジメていた者を婚約者の見えない所で一掃したり、それに箝口令を敷いたり。
その割に、婚約者の前では気のない素振りとか笑える。
挙げ句に露骨に避けられて半泣きだし、新年の儀も新年会も欠席されて見舞いにすっ飛んで行く慌てぶり。
見舞いで何があったか知らないが、上機嫌で帰ってきた。
婚約者の体調が戻った後の二人の関係は………。
まぁ、見ていて楽しいので不問に処するとしよう。
弟の新たな性癖の発露には言及したくないし。
筋肉バカの国とは反対の、平和ボケの国から使者が来たので弟二人に相手を任せた。特に問題はなかったが、外交官の娘のお陰でマーティングのヘタレぶりが少し解消した礼にこちらからもマーティングの下の弟を外交に出した。




