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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
6章 知りたいという気持ちからは逃げられない
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攫う理由

「すまない、俺が聞き間違えたみたいだ。もう一度言ってくれないか?」


 まさか攫ってくれ、と言われるはずないからな。何か別の事と聞き間違えたのだろう。

 再度ジュリエッタに聞きなおしてみた。


「あ、はい。魔王様、わたくしを攫っていただけませんか?」


 あぁ……聞き間違いじゃなかったようだ。

 少女は聞きなおした俺に対して、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。

 奇妙だと思っているのはむしろ俺のはずだが。

 

 よし、聞き間違いじゃないとしたらどういう意味で言ったかを考えてみよう。

 自分から攫ってくれという理由はどういう場合か?

 

 まずはロイドから結婚を申し込まれているが、嫌で逃げたいとかどうだ。

 これなら逃げるために攫ってくれというのはありえる。 

 ジュリエッタの事となったら周りの迷惑も考えず、突っ走るような奴だし。つきまとわれる側して迷惑しているかもしれんな。

 でも、もしそうなら断ればいいだけだ……別に親同士が決めたとか、まどろっこしい縛りは無さそうだし違うか。


 そうだ、さっきジュリエッタが「どれくらい好きかわからない」と言っていたな。

 ロイドが自分の事をどれくらい好きか確かめるため……かもしれない。

 先程彼女が呟いていた内容とも一致する。


 そんな風に考えを巡らせていたら、ジュリエッタが変わらず不思議そうな顔でこちらを見ている。

 いきなり突拍子もないお願いにびっくりしたが、このまま黙って考えていても状況は進まない。


「攫ってくれと聞こえたが、お前が攫われた時にどう行動するかを見てロイドの愛を確かめるのか?」


 ひとまず俺が出した結論で確認してみる。

 ジュリエッタは頬に指をあてながら首を傾げた。

 俺の出した答えは違ったのか? だが、自分から攫ってくれと言い出す他の理由なんて……。

 迷っていると、何かを得心したのか笑顔で俺に返答をする。


「はい、魔王様の仰る通りです。確かめるために是非ご協力を……お願いできませんか?」


 やはり合っていたようだ。両手を合わせて俺に頼み込んでくる。

 しかし、そのために魔王が自城に住む者を攫う真似をするというのは……どうしたものか。

 俺が唸りながら迷っていても、彼女はずっと祈るように頼み込む体勢を崩さない。

 彼女が纏う空気は強い意思を感じさせる。

 ここまでの願う事なら叶えてやりたいが、内容がなぁ。 

  

「お前の願いはわかった。だが、俺も立場上住人を攫うという行為はできんぞ」


 そう『魔王が視察中に女性を攫った』と噂されでもしたら、ヒナに何を言われるか想像するだけで恐ろしい。

 決してそれだけが理由ではないが、やはり攫うという行為は問題だろう。

 ヒナが怖いからじゃないと自分に言い聞かせてる訳じゃない。


「確かにそうですね。では魔王様だとわからないようにする工夫が必要と……わかりました、明日までに準備してきます」


 俺が頭の中でヒナに対して必死に言い訳をしている間に、ジュリエッタは一人で納得して解決策を考えると言いだす。

 つまり条件を満たせば彼女に協力するという事になっている。

 顎に手を当てながら、ぶつぶつと呟きながら何かを考えているようだ。 


「おい、まだ協力すると言ったわけじゃ――」


 慌てて彼女の思考を制止しようとするが、一歩遅かったようだ。


「それでは魔王様、明日転移魔法陣の所でお待ちしております」


 俺の意思に反して話がどんどん進んでいく。


「いや、魔法陣がどこかわからん。じゃなくて、待ち合わせ場所がどうとかではなくてな――」


 この区画は来た時の山の入口と、この村までの間しか知らない。


「そうでしたね、申し訳ございません。広場までの道はロイドに案内するように伝えておきますので、それまでここでお待ち下さい」


 この子は本当に俺の話を聞いてくれない。

 俺の道案内を頼みに行くために村の中へ走り出す。

 少し進んだ後でこちらを振り向いた    

   

「くれぐれもロイドには内緒にお願いします!」


 いや、心配しなくてもさすがに話せないだろう。

 ジュリエッタはそう言うと村の中へ走り、木々の合間に消えていった。

 俺は奇妙な沈黙に支配された村の入口に一人で取り残される。

 

「いや、心配するのはそこじゃなくて……はぁ」


 ため息しか出ない。完全に俺が協力する事になっているじゃないか……。



 しばらくして、ロイドがむすっとした表情を浮かべながら一人で戻ってきた。

 

「魔王様、ジュリエッタから聞きました。転移魔法陣まで案内するように頼まれたので早速行きましょう」


 声もさっきまでと違って何だか元気がない。頭も肩も先程より落ちているような。

 だが彼女に頼まれた道案内のために進む方角を示して歩き出した。

 

「どうした? 元気がないようだが」


 そう聞くと前を歩いていたロイドがこちらを振り向いた。


「ジュリエッタともっと一緒にいたかったのに、魔王様の道案内を頼んですぐに帰ってしまったのです……」


 声も何だか小さい。まぁ彼女に置いてきぼりにされたのだから仕方ないか。

 だが、明日以降もっと落ち込むかもしれんが……俺も原因の一つになって。


「まぁ……元気出せ。良い事あるさきっと……」


 そう思うと何だか励ましてやりたくなる。

 励ましたり、ジュリエッタとの話を聞きながら俺は転移魔法陣まで案内された。

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