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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
5章 生まれもった性質からは逃げられない
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今やらなければならない事

 シアがスタンの治療が終わるまで側にいてくれるので、俺は一度医療施設から離れてヒナを探していた。

 スタンの治療を見守っていてやりたいが、先にどうしても調べなくておかなくてはいけない事がある。

 幸い書類の束を持って歩いていたヒナをすぐに見つける事ができた。


「ヒナ! すぐに見つかって良かった」


 こちらに気づかずに歩くヒナに後ろから声をかける。


「魔王様? 今日も早いお帰りですが・・・・・・まさか、また毒にっ!」


 手に持っていた書類を放り投げるように床へ落として、慌てた様子で駆け寄ってくる。


「いや、俺は大丈夫だ。今回はスタンの奴が大怪我をおって、今医者の所で治療してもらっている」


「そうですか・・・・・・また昨日の連中に襲われたのですか?」


 少し冷静さを取り戻したヒナが聞いてくる。

 今日あった事を、かいつまんで説明した。  


「そして、お前を探していたのは、奴らが管理人の一人を殺したと言っていた件についてだ」


 ヘアリーズは毒で動けなくしていた管理人を、スカルクローが勝手に殺したと口にしていた。


「今すぐに各管理人と連絡をとり、真偽を確かめてくれ!」


 そう指示を出しつつも、恐らく死んでいるのは間違いないと思っていた。

 だからこそヘアリーズ達がスカルクローを殺しにやってきたはずだ。


「は、はい! わかりました。すぐに確認に行かせます!」


 落とした書類を急いで拾い集め、ヒナは俺の命令を実行しにいった。

 死んでいるとしても、そのままにしておくのは可哀想だ。

 

 その後、俺はそのまま一旦執務室へ向かった。

 ヒナが俺の机の上に置いてくれている報告書関係にざっと目を通す。

 俺の命を狙っている連中が引き起こした事件、もしくは兆候のようなものが報告書の中に挙がってきていないか確認するためだ。

 

 だがこちらは残念ながら怪しいと思われる内容は見つからなかった。

 まだ全ての管理人達と連絡がとれるまで時間がかかるだろうから、俺は机にヒナ宛の書き置きをして、スタンの様子を見に医療施設へ戻る。


 報告書にざっと目を通しただけだが、時間は結構かかってしまっていたらしく。スタンの治療は終わっていた。

 とはいえ、まだ意識は戻っておらず、全身傷だらけだったからか、動けないほどの包帯が体中に巻かれている。

 スタンが寝かされたベッドの横には、少し安心した表情に変わっていたシアが座っていた。


「あ、魔王様! 兄様は無事に治療も終えて、もう大丈夫だそうです」


 俺が戻ってきた事に気づいたシアが、治療の成功を教えてくれた。

 

「そうか、あの医者の腕前も大したものだ――」


「そうでもないよ……この子の生命力の方が大したものさね」


 背後から件の医者が、白衣のポケットに両手を突っ込みながら、気だるそうな雰囲気を纏っていきなり現れた。

 

「よっぽど生きて成し遂げたい事があるんだろうね」


 そう言いながら山羊角の医者がベッドに近づき、スタンの脈や体の状態を確認している。

  

「ん……処置後の状態も良いし、もう大丈夫だろう」


 その言葉を聞けて俺も安心した。 

 

「でだ、魔王様……コレ一体どこの悪趣味な野郎にやられたんだい? 死なない程度に苦痛を与えたってのがすぐわかる状態だったよ」


 女医が振り返って俺に質問してくる。


「あぁ……やった奴はもう死んだ。俺の命を狙ってた奴でな……巻き込んでしまったのだ」

 

「ふーん、そうかい……」

 

 俺の答えにたいする反応はあっさりとしたものだったが、気だるそうな目は俺をじっと見て、何を考えているかわかりにくい。


「とりあえず、しばらくは入院だね。着替えとか必要な物を持ってきておいてやりな」


「あ、はいっ! 今回は兄様の治療ありがとうございましたっ!」


 シアが返事をして深々と頭を下げて礼をする。

 それに軽く手をあげるだけで、女医は来た時と同じように部屋からでていった。


「視察への同行はスタンが完全に治ってからだな。シア、すまないが着替えとか持ってくるのと家族への報告を頼む。俺も近いうちに顔をだす」


 シアに当面の事を頼んで、俺はヒナに頼んだ指示の報告を確認するためにも再び執務室へ向かった。

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