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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
5章 生まれもった性質からは逃げられない
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再会

 スカルクローが動かなくなったのを確認して、俺はスタンに意識を向ける。

 体に無数の刺し傷があり、流れ出た血で服が浅く染まっている。

 多量の出血から意識を失ったようだ。流れ出た量は多そうだが、新たに流れ出る血は少ない。

 それに、さっきからずっとかすかに呼吸はしている。

 今連れて帰って治療すれば助かるだろう。

  

「シア! スタンを連れて戻るぞ!」


 奴等が俺を狙う目的だけでも知りたかったが、アイツ相手ではな……。

 今は早い所連れて戻る事を優先させよう。

 罠に注意しながらシアのいる所まで戻った時、聞いた事のある二つの声がした。


「あっ! やっぱりここにいた……って随分な格好だねぇ」


「……オワッテイル」


 声がした方にいたのは、ポールアックスを肩に担ぎながら呆れた顔をしているヘアリーズとその横に立つ表情が全く読めないグスタフの二人だった。

 やられて動けなくなった仲間の所まで、罠にかかる事無く悠々と歩いていく。

 ここにある罠の位置が全てわかっているようだ。


「いつまで寝てるの? アンデッドがこれぐらいでくたばる訳ないでしょ!」


 そう言って床に横たわるスカルクローの腹の辺りを蹴った。

 仲間の割りにヘアリーズの起こし方が激しい。

 そのまま何度も蹴り続けている。 

 

「うぅぅ……お前達何故ココニ?」


 動かなかったスカルクローの体が揺れる、蹴りのおかげで目が覚めたようだ。

 だが目の前にいる二人が、なぜそこにいるのかわからないらしい。

 起き上がったスカルクローの顔をヘアリーズが不機嫌そうな表情で覗き込む。


「あんたさぁ、あたいが動けなくしといた管理人……勝手に殺したでしょ?」


 そして聞き捨てなら無い事を口走る。

 管理人を……殺しただと?

 

「それがドウシタ……我の勝手デアロウ」


 ヘアリーズが目を閉じ、黙って首を横に振った。


「じゃあ、これはあたいの勝手だね」


 そう言って奴を突き倒し、ポールアックスを振りかぶる。


「ナンダ! どういうツモリダ?」


 弱っている所に現れた仲間に、助けられる事も無く明らかな殺意を向けられ狼狽している。


「意味の無い殺しをやるような奴は気に食わないのさ。特にあんたみたいな自分の愉しみでやるような奴は特にねっ!」


「マテッ! 我等は仲間であ――」


 異形の手を持ったアンデッドは最後の言葉を言い終わる前に頭から真っ二つにされた。

 半分に裂かれ、宿っていた意思も消え去り、さっきまで動いていた身体が音を立ててぼろぼろと崩れ落ちた。


「ふんっ! あたいに仲間なんていないさ……ただ協力するように言われたから付き合っていただけだよ」


 床に白い破片となって散らばったスカルクローの残骸を踏みつけて言い放った。

 

「お前達はやはり何かしらの協力関係だったのだな」


 つまらなさそうな顔で足下を眺めるヘアリーズに向かって問いかける。

 すると、ようやくこっちに気がついたような顔で俺を見た。


「あら、魔王様まだいたのかい? その子早いとこ連れて帰ってあげた方がいいと思うよ」


 猫でも追い払うような仕草で俺に答える。


「今日は俺を狙ってここに来た訳ではないのか?」


 するとヘアリーズは肩をすくめて、無関心そうに言う。


「今は気分じゃないねぇ。ここに来たのは、こいつのやった事が気に入らなかっただけだしね」


 再び足元の白い残骸を蹴り飛ばす。軽い衝撃だけで大きな残骸もあっという間に粉状になり四散した。

 

「そうか……じゃあやり合うのは次の機会か」


 そう言うと、ヘアリーズの口元が笑った。

 今は戦うつもりが無いらしい、ならばさっさと引き上げるとしよう。

 背を向けて去ろうとした時、腕の中のスタンが動いた。


「兄……貴……ここは……あいつはいないの?」


 視線も虚ろで朦朧とした意識の中で俺に聞いてくる。

 

「あぁ、あのアンデッドならもういない。大丈夫だ、あまり動くな」


 少しの間があり、自分の状態を確認するように全身の傷を見ている。


「そっか……動けなくなった後、あいつにやられたんだった……」


 少し意識がはっきりしてきたのか、やられる前の記憶も思い出してきたようだ。

 そして周囲の状況を確認するように腕の中から周囲を見渡した時、気づいてしまった。

 部屋の向こう側で何を思っているかは読み取れないが、こっちを見ているグスタフに。


「いた……奴だ……あれ? 俺の剣が無い……」


 ここでようやく自分が剣を手放していた事に気づいた。

 

「剣ならシアが持ってきているから大丈夫だ。だがやり合うのは次の機会を待て」


 これだけ怪我をしていては戦う所か、立つ事さえ難しいだろう。

 だが、スタンは自分が求めた相手を見つけて、黙って帰る事はできないらしい。

 

「兄貴……ごめん……下ろして欲しい」


 そう言って腕の中で俺を見上げて言った。

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