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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
1章 生まれからは逃げられない
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声の主

「おい! 誰か知らんがここを開けろ!」


 声の主がどこにいるかわからないが、誰かいるなら丁度いい。

 ここを開けさせて、先に進む事ができるかもしれない。

 俺を間抜け扱いした事は、その後でゆっくり追求してやる。


「…………」


 微妙に沈黙があった。別に変な事は言ってないはずだが、相手は何も答えない。

 周囲を警戒しながら反応をうかがう。


「あけろと言われて、あけるやつはおらぬわ~」


 一拍おいて閉ざされた空間に間延びした声が響く。ちょっと腹が立つ。

 いや、本当に怒ったりはしないぞ。

 冷静に対応しないとな。

 大きく息を吸って吐く。


「いいから……早く開けた方が身のためだぞ。今ならまだ許してやらんでもない。さぁ! 早くここから出せ!」


 冷静に要求を伝えた。


「こ、ここはわしらまおう軍一のかじちドヴェルグがとおさぬ」


 会話になってないし、かじちって噛んでるし。 

 

 ドヴェルグ。魔王軍随一の鍛冶師の種族だ。市場で彼らが作ったという商品は良く見かけるが本人達はほとんど市場に姿を見せる事はないと聞く。


「そうか……ドヴェルグの者か。ここの管理はお前達がやってるのか?」


「あ、はい…わたしはたいした事できませんけど…」


 最初と比べて口調が変わってるが、普通に返事が返ってきた。 

 こっちが普段の口調なんだろうな。


 言葉でやり取りをしても一向に開けてくれる様子が無い。

 いっそ一度門の広間まで戻ってから、ドヴェルグの区画に出向いてもいいが……

 魔王が罠にはまって、閉じ込められ、そして尻尾を巻いて逃げ帰った。

 それからどのような顔でドヴェルグ達の所へ行けというのか。

  

「俺は侵入者でも敵でもない。魔王城に住む者がこの俺の顔を見忘れたとは言わさんぞ」


「えぇっと……聞こえんなぁ」


「いや聞こえてるよな? あぁ! もう顔も見ずに喋ってるから会話にならんのだろう。いい加減ここをあ・け・て・く・れ」


 先程閉じられた通路の壁を数回手で叩く。


「…………」


 また沈黙か。なんなんだ一体。


「まぬけな奴らがなにか言っておるが聞こえんなぁ」


「聞こえてるだろっ! 大体俺は一人だ。見たらわかるだろう!」


「あれ? えっと……き、聞こえんなぁ」


 だから聞こえてるだろう、と言いかけてやめる。流石に少しイライラしてきた。

 黙って近くの壁に近づき、魔力を込めた拳で思い切り殴りつける。

 爆発のような大きな音が響き、拳を打ち付けた箇所から振動が伝わり壁全てが大きく震えた。


「思ったよりも威力がでてるな」


 ここまでのイライラをぶつけた分すっきりした。


「きゃぁ! ごめんなさい! ごめんなさい!――――ころさ……ない……で……ぐすっ……えぐっ……」


 あれ?もしかして泣きだした? 相手の声が泣き声に変わった。

 俺が悪いのか? イライラっとしてやったのは確かだが。


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい――――」


 声の主はずっと謝り続けている。悲しげな声が響く。


「あぁ……脅かして悪かった。泣くな泣くな、別にお前に危害を加えるつもりはないんだ」


 相手がどこにいるかわからないがなだめるしかなかった。

 しかし相手はまだ謝りながら泣き続けている。声が響く分余計に辛い。


「えぇい! 魔王の名で命ずる、ドヴェルグの者よ泣き止め!」


 半ば自棄気味に命令した。他に方法が思い浮かばなかったのだから仕方ない。

 これで泣き止んでくれる事を願う。


「……えぐっ…………ま……おう様?」


「そうだ、わかったのであれば早く俺の前に姿を現すがよい! それともこの俺の命令が聞けぬのか?」


 この状況を変えるためにも一気に畳み掛ける。


「は、はいっ!」


 相手から返事があった後しばらくして、四方の通路を塞いでいた壁が再び音をたてながら動き出した。

 どうやら一度に閉まって、一度に開く仕掛けらしい。

 そして塞がる前と違っていたのは、通路の先に一人の少女が立っていた事だ。


「お前が――――ドヴェルグの者だな?」

「はい……ドヴェルグのネーファ……といいます」

 

 まだ怯えているのだろうか。消え入りそうな小さな声で名を名乗った。

 身長は俺の腰ぐらい。子供? いや、ドヴェルグは小柄な者が多いと聞くからそうとも限らないか。

 目は前髪で隠れて見えないが、大きな耳が今の感情を表しているのか、力なく垂れている。

 それに、胸の前で大事そうに紙束を抱えている手が震えている。


「大丈夫だ! 俺は別に怒ってないし、お前に危害を加えたりもしない! だから怯えるな」


 そう言ってネーファに近づいて彼女の頭に手をおく。

 今の俺は怒ってないから大丈夫だ。そう伝えようとした。


「ここの仕掛けを動かしているのはお前なのか?」


「い、いえ違います。仕掛けは勝手に動きます。日々確認に見てまわるだけで……」


 消え入りそうな声でネーファはそう答えた。


「あ、あと……仕掛けにつかまった人達がいたらこれをよむのもおしごとです」

ネーファは俺に持っていた紙束を見せてくれた。


――――――


【侵入者が捕まっているのを見つけた時】

「ほっほっほっほっほ。どこかの間抜けが、わしらの罠にかかったようじゃな」


【ここを開けろと言われた時】

「開けろと言われて、開ける奴はおらぬわ」


【壁を壊そうとして暴れた時】

「その程度で壊せるものか。無駄じゃ無駄じゃ」


(中略)


【書かれてる事以外を言われた時】

「聞こえんなぁ」、「間抜けな奴らが何か言っておるが聞こえんなぁ」等でごまかす事。


――――――


 紙束には罠にかかった相手の言葉に合わせどう言うかが箇条書きにされていた。

 ネーファはこれを見ながら喋っていたのか。

 間があったり、おかしかったりしたわけだ。


「ま、まおう様……たいへん失礼してもうしわけございませんでした」


「気になくていい、ネーファは仕事をしていただけだ。務めご苦労!」 

 

「あ、ありがとうございます……でもわたしあたふたしちゃって、まおう様だと気づかずに……本当にごめんなさい……」


 そんなにびっくりさせてしまったか。まぁ俺だと早く気づいてくれたら良かったのだが。


「だれかが仕掛けにつかまっているの……はじめてだったのでびっくりしちゃいました……」


「あぁ……そっちか」


 初めてひっかかった間抜けな奴、とかいう称号がつかない……よな? 

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