表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
4章 骨肉の戦いからは逃げられない
52/86

今後の課題

「おい、大丈夫か? しっかりしろ」


 俺達と戦っていたカバネは、シアの一撃で体も意識も飛ばされていた。

 戦いの結果は、術者のカバネが気を失って骨魔物達は全員活動停止。

 止まった後スタンとシアが全て綺麗に倒していた。


「ん~……はっ! ま、魔王様、夢をみていたデス。ワタクシのディブランスが、ばらばらにされてしまうという悪夢を」


 カバネはようやく意識が戻り、上半身だけが起き上がった。

 そして現実逃避なのか、本当に夢だと思っているのかわからない発言をする。


「残念だが、それは現実だ」


 そう無慈悲に告げて、俺の後方にできている白い山を指差す。

 先程まで暴悪竜ディブランスの骨魔物として形を保っていたが、完全に破壊されてしまって砂の山になっている。


「あばばばばば」


 事実を受け止めきれず、泡を吹いて再び気絶した。



 再度カバネの意識が現実に帰ってくるまで、しばらく時間を必要とした。

 次に目を覚ました時は、少しは落ち着いており、三度目がなくてほっと胸をなでおろす。


「ワタクシの……負けデス。」


 生み出した骨魔物達が全滅したと知って、一目でわかる程に肩を落とし、自らの敗北宣言をした。

  

「俺達の勝利だな! だが、良い戦いであったぞ」


「兄貴は最後敵になってたじゃん!」


 勝ち誇ってみたら、スタンから指摘が入った。

 

「あれは、まだ未熟なお前達に、試練を与えるため涙を堪えて仕方なく、だ!」


 実戦経験の少ないからか、それとも若さゆえかはわからないが油断はよくない。

 

「随分楽しそうに見えましたけど?」


 シアが下から俺の顔を覗き込むように、微笑みながら聞いてきた。


「気のせいだな。もしくはシアの勘違いだ」


 とりあえず否定しておく。


「ではそういう事にしておきましょう」


 くすくすと楽しそうにシアが笑う。


「さて、カバネよ。防衛を見させてもらったが、まずはお前の感想を聞かせてもらおうか」


 何かを悟ったような澄んだ目で、白い砂山を見つめていたが、俺の声に反応して顔だけこちらに向けてきた。


「切り札まで使って勝てなかったのがとても残念デス。うぅ……ワタクシのディブランス……」


 涙目になりながらシンプルな感想がかえってきた。


「ディブランスは良かった。だが、生み出してからは他の骨魔物の操作がおろそかになっていたな」


 暴悪竜(ディブランス)の体が大きい分、動けば周囲を巻き込みやすいのはわかるが、ただ遠巻きに待機しているというのは勿体無い。


「いっそ、俺達にスケルトン達をしがみつかせて動きを鈍らせて、その状態のままディブランスに攻撃させても良かったかもな」


 消耗品と割り切って使える兵士なのだから、こういう手段だって有りだろう。

 そこまでしなくても、武器を投げつけたり、合間に横槍を入れて意識を逸らすという手だってあった。

 

「うぅ、切り札を使ってみたくて仕方なかったのが敗因になったデス」


 その気持ちはわかる。ここぞという時に使う! と決めたものって使い所を判断するのが難しい。

 使える機会自体も少ないし、折角チャンスがやってきたのなら存分に使ってみたくなるよな。


   

「ディブランスの操作に意識を向けなきゃいけないのもわかるが、他の骨魔物に簡単な指示を与えるぐらいの準備はしておかないとだな」


「はい、連携を含めて考えてみるデス」


 話をしていて、少し気が紛れてきたのか、カバネの表情から暗さが幾分かやわらいできた。


「うむ。しっかり研究して今後の防衛に活かしてくれ」


 色々考えて、試して、また考えての繰り返しになるのだろうが、有事に備えて頑張ってもらいたいものだ。


「それじゃあ俺達は先に進む。お前は少し休んでから帰るといい」


 スタンとシアを引きつれ、俺は先に進もうとした。


「魔王様、本日はありがとうございました。今度は負けないデス。そのために準備をせねば!」


 そう言うと、休めといったのにカバネの方が先に走り出した。

 シアに思い切り吹き飛ばされただろうに、結構丈夫な奴だ。 

 カバネの姿はすぐに通路の向こうへ消えた。

   

「やれやれ、それじゃあ俺達も先に進むぞ」


 少し体に痛みがあるが、進めない程ではない。  

 スタンとシアも多少負傷しているが、まだやれると主張した。

 だが、危険を感じたらすぐに引き返そう。


 進む事を再開した俺達。部屋を出た後は特に罠も、骨魔物がいる事も無かった。

 カバネは恐らく全戦力を、先程の部屋に集めたのだろう。

 特に抵抗がなかったが、分岐が幾つかあったので、先への道を探しながら進んだ。

 メモに道を記載しておくのも忘れていない。


「今度は一人で、万全の状態の奴と戦ってみたいなぁ」


 進みながらスタンが話始める。

 

「二人がかりでなくて大丈夫なのか?」


 今回勝てたのはシアとの連携あってこそだと思うが。


「むぅ。ガーゴイルの時もそうだけど、相手が硬くても切り伏せられる力が欲しいー」


 骨の継ぎ目を狙うのは良かったが、一人では威力が足りなかったものな。

 まだ未完成の攻撃スキルを身につければ……という所か。


「大型の敵も良いですが、私は集団を相手に戦う機会が持てて嬉しかったです」


 うっとりした目でシアがそんな事を言う。

 こいつと相対した小型の骨魔物は、原型留めていなかったからな。

 きっと大鎚を思い切り振り回して、凄く気持ちよかったのだろう。


 この後もお互いに戦いの感想や、戦い方について話をしながら進んでいった。

 


≪攻略メモ≫


【骨の防衛線】

・管理人は魔族のカバネ。

 骨・牙等の一部から、骨だけの状態ではあるが、元の生物を再現可能。

 完全にカバネ自身の意思で操作する事もできるが、一度に多くを操作する事は無理。 

 簡単な指示であれば複数同時に動かす事は可能。


 →一体の強さはたいした事がないので、囲まれたりしないようにだけ注意。

  またはカバネ自身を狙って無力化をはかる。


  骨魔物を生み出すには素材が必要な点から、一度突破すれば補充まで時間が必要。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ