戦いの終結
「敵が負傷しているからといって、気の抜けた心構えで戦うからそうなるのだ!」
俺が自分達の苦戦の原因だと知って、驚いた顔のスタン達に言い放つ。
「お前達二人はまだまだ弱い! 常に集中して、持てる力全て使って戦え!」
それができないから、さっきみたいにやられてしまうのだからな。
「こっからは兄貴の好きにさせないぜ……行くぞシア!」
スタンもようやく気持ちの切替ができたらしい。
「わかりました兄様! 私達が弱いかどうか、魔王様に見せてさしあげましょう」
シアも纏う雰囲気が変わる。
こちらには聞こえないが、二人でなにやら話をしている。
倒す算段をつけているか。だが俺が指示を受ける暴悪竜相手にどこまでやれるかな。
「くくく……」
それでこそだ。スタン、それにシアよ、来るが良い……ディブランスを越えてこれるのであればな!
「あの、魔王様。ワタクシ完全においてけぼりな気がするのデス」
む、俺も完全に忘れそうになっていた。
だが、それは表情に出さないようにしないとな。
「カバネよ、まだ勝負はついていない。このまま一気に行くぞ!」
再びカバネを通じてディブランスに攻撃の指示を出す。
二人に向かって暴悪竜が走り出す。
「……シア、任せたぞ!」
「兄様こそお気をつけて」
シアがスタンから離れる。
突撃を迎え撃つのはスタン一人か?
「まずは小僧からだ。左前足で一気に薙ぎ払え!」
「はいデス!」
スタンに向かってディブランスが攻撃を繰り出す。
しかし、スタンは避けようとしない。
さっきと同じか? ならば……、
「攻撃を受け止められた瞬間。右前足で追撃だ!」
カバネへ指示を出す。
スタンに向かって四本爪が迫る。
避けずに大剣を前に出し、受け止めようとする。
それで右の追撃を、どうするつもりなのやら。
大剣に爪が、激しい音をたてながらぶつかった。
右前足での追撃が始まる。
しかしスタンは、爪を受け止めたまま、踏ん張らずに吹き飛ばされた。
「なっ!?」
攻撃に無理に逆らわず、そのまま飛ばされただと?
ディブランスの右前足での追撃が空しく床を打ちつける。
「後ろが……がら空きですよ!」
ディブランスの後頭部へ、シアが愛用の大鎚を空中から打ち下ろす。
スタンへの攻撃が当らず、前足を交差するように不安定な体勢になっていたため、そのまま前に倒れこんだ。
だがその程度の威力では、大したダメージにはなるまい。
「まずは左手いただきっ!」
飛ばされた後、着地していたスタンがいつの間にか距離を詰めていた。
そして倒れて放り出されたディブランスの左手首、骨と骨の継ぎ目に向かって大剣で切りつける。
狙いはいい。だが惜しいな……その程度の攻撃では切り離すまでには至らないようだ。
「兄様! そのままで――合わせます!」
あ、そうだ……こいつ等にはそれがあった。
俺が、この二人に初めて会った時に見た攻撃。
あの時と同じように、スタンの大剣目掛けてシアの大鎚が振り下ろされる。
縄を無理やり引きちぎったような音がして、ディブランスの左手首から先が切り離された。
「あぁぁぁ! 左手までぇぇぇぇぇ!」
カバネが涙目で叫んでいる。右手は俺の攻撃で爪全壊。左手まで鬼二人の攻撃で壊れてしまったのだ。
「よし! シア、このままいくぞ!」
「はい!」
カバネが動揺してディブランスの動きが止まる。
その隙にスタンが骨の継ぎ目に切りつけ、シアがそこに鎚を打ち下ろして切断という攻撃が繰り返される。
左前足の間接部分全て、続けて右後ろ足までバラバラにされた。
遠慮のない連続攻撃だ。
「あばばばばばば……」
カバネが目を大きく見開き、口は餌をねだる魚のように開け閉めしている。
「まだ戦える! 気持ちを立てなおせ!」
俺がカバネに活をいれようとするが
「させると思ってるのか兄貴?」
スタンの声が近くに聞こえた。
「ちっ!」
俺に向かって大剣が下から振り上げられる。
半歩下がって避ける。
頬すれすれを剣が通り過ぎる。
「視線をそらした隙に俺の方へ来たか、それでいい。集中してからのお前達の動きは良かったぞ」
不敵に笑うスタンと視線が交差する。
初めからそれくらいの動きができればいいのに。
「ここで兄貴に問題です」
「ん?」
心の中で少し褒めていると、スタンが口を開いたが、言っている意味がよくわからず首をかしげた。
「俺は兄貴の所へ来たけど、シアはどこへ行ったでしょう?」
そう言ってスタンは悪戯した子供の如き笑顔を見せた。
「どこって……あ!」
答えがわかって、さっきまで泡を吹きそうだった魔族の方を向いた。
その時、既にカバネはシアの大鎚で天高く舞い上がっていた。
高く、高く、回転しながら上昇していった。
既に意識もなく、指示を出す暇もなかったのだろう。
ディブランスも、他の骨魔物も動きが完全に止まった。
「あぁ……ここまでか。仕方ないこっちの負けだな」
俺は両手をあげた。
こうして、ここでの戦いは終結した。




