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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
4章 骨肉の戦いからは逃げられない
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カバネの切り札

 カバネが切り札として取り出したのは、黒く汚れた骨だった。


「勿体ぶった割りに、後ろに積んである骨と変わらないようだが?」


 奴の後ろに積まれた、素材の山にある牙や骨との違いがわからない。

 その山自体もかなり小さくなっている。

 俺だけでなく、スタンやシアも順調に敵の数を減らしていた。


「ノンノン。コレはワタクシが一番大事にしている特別な一品デス」


 手にした骨を俺達に見せびらかすように持ち上げる。

 

「コレは、とても凶暴な『竜の牙』の一部……だから、とっても高かったデス」


 持ち上げていた骨を、大事に抱きかかえ頬ずりし始めた。


「そんなに大事なら、使わないでおいたらどうだ? 壊されたくないだろう?」


 カバネに話しかけながら、俺に挑みかかってきた武装スケルトンの頭蓋骨を砕く。

 部屋には俺達三人が、敵を砕いて倒す音だけが満ちている。

 

「魔王様をもてなすのに、出し惜しみは致しませんデス」


 名残惜しそうに握っていた骨を、地面へ落とした。

 床に浮かび上がったままの魔法陣に、骨が吸い込まれる。

  


「それに……大事にし過ぎては、使う機会が来ないままになりそうデス」


 存分に力を振るう、良い機会という事か。

 

「静寂を切り裂け、地を這う暴虐、時越えし舞台に今解き放つ、暴威を振るいなさい! 暴悪竜ディブランス!」


 骨を操る魔族が、己の最凶戦力の名を呼んだ。

 その呼びかけに応えるように、魔法陣から巨大な竜が、徐々に凶悪な姿を現す。


 牛を丸ごと一飲みにできる程の大きな口、鋼鉄にすら穿てるであろう歯が並び、上下二本ずつの巨牙を持つ。

 両腕は骨だけであっても、樹齢数百年の巨木ほど太くそして長い。

 腕に見合った禍々しい四本の爪と、後ろでは本来の姿よりは短くなった、骨の尻尾が激しく地面を叩く。

 武装スケルトンと他の骨魔物が、その尻尾の下敷きになって、数体が一瞬で潰れた。


「おぉっと……危ないデスねー」


 戦う俺達はもっと危ないんだろうよ。

 ちゃんと制御しろとカバネに心の中で言う。

 

「近くにいられると危なそうデスから、さぁ、魔王様に向かって突撃デース!」


 ディブランスと呼ばれた骨竜を俺に向かってけしかける。

 後ろ足を強く蹴り、右前足の爪を振り上げて、勢い良く飛び掛ってきた。


「骨だけでも大きな図体なのに、速いなっ」


 大きく右に避ける。

 数秒前に俺がいた場所に、四本の爪が突き立てられる。

 足をどけて、俺がいないのを確認している。

 仕留められなかったのが悔しいのか、顔を天井に向けて吼え……ているつもりなんだろうな。

 肉が一切無く、骨だけになっているから何の声もしない。

 キョロキョロと首を振り、獲物の姿を探す。


「こっちだノロマ」


 中身がスカスカの大きな頭に向かって魔力弾を放つ。

 ダメージは与えられないだろうが、俺が左側にいる事に気づいたようだ。

 今度は四足で地面を走ってくる。

 再び右へ避ける。

 しかし、この竜は軌道を修正して避けた位置へ向かってきた。

 右の爪が俺を狙って薙ぎ払われる 。

 

 上へ飛び上がり、間一髪で回避。

 着地をどうするか考えた刹那。

 奴は後ろ足を軸に体を回転させた。


「なっ!」


 空中の俺に骨の尻尾が襲い掛かる。

 

「ぐはっ!」


 避けきれず、まともに受けて、吹き飛ばされる。

 地面に叩きつけられ、三回地面にぶつかりながら転がされた。

 起き上がりながら自分の体のダメージを確認する。

 骨は……折れてない……がヒビくらいは入ってるかもしれんな。

 

 暴悪竜(ディブランス)は、俺に向かって大きな足音を響かせながら再び駆けてくる。

 大きな口を開けて、俺を飲み込むのか、噛み砕くつもりなのかはわからないが。

 進路上の骨魔物を踏み潰しながら、あっという間に迫り来る。


「魔王様に何するんですかっ!!」


 シアが荒れ狂う竜の前方まで近づいていた。

 暴悪竜(ディブランス)の顎に向かって、大鎚を下から上へ打ち払った。

 俺しか見てなかった所への不意打ち、巨大な頭が跳ね上がる。


「おらぁぁぁぁ!」


 反った頭から、背中にかけての首筋の骨目掛けて、ジャンプしたスタンが大剣を振り下ろす。

 剣と骨がぶつかった音は、まるで鉄塊に向かって思い切りきりつけたようだった。

 体勢を崩された暴悪竜(ディブランス)が滑りながら転倒する。


「すまん、助かった」


 体の各部の確認をしながら、援護してくれた二人に礼を言う。


「歯応えありそうなのが、ようやくでたぜっ」


 倒れた敵に油断せず、剣を構えたままのスタンは嬉しそうだ。


「でも、他のとは全然違います。とっても硬いです」


 二人の攻撃で砕けもしてないし、亀裂さえ入っていない。

 確かにカバネのとっておき、というだけはあるか。

 

「そうだな、だが丁度良い。俺も思い切り試してみたいと思っていたんだ」


 イオスから聞いてから気になっていた事。

 俺の魔力が魔王城の強化のために、常に吸われているという話だ。 

 そのため、俺達が激しく戦っていても床や壁に損傷は全く無い。 


 では、魔力を吸われ続けている今の俺は、どこまで力を出して戦えるのか? 

 

「俺にとっても良い機会になった。色々解消するのに付き合ってもらおうか!」


 実験台(ディブランス)も再び起き上がろうとしていた。

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