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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
4章 骨肉の戦いからは逃げられない
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少数による蹂躙

 カバネによって生み出された人型、獣型、鳥型の多様な骨の軍団が、俺達を取り囲んでいる。

 眼前には百体の敵、追加可能な戦力を加味すればその数は千を超えるという。 

 

 対してこちらは魔王一人に(オーガ)が二人。

 数で考えれば、笑える程の差だ。


「数の差は圧倒的だが……やれるよなお前達?」


 俺の両側で、今にも眼前の大軍に飛び込んでいきたい、といった様子の二人に声をかける。 


「おうっ!」


「はい!」


 短く返事をするオーガの兄妹。二人の実力は、実際に手合わせしたから解っている。

 危ないと思ったらフォローしてやればいい。

 今回は、こいつ等のやりたいようにさせてみよう。


「よし、魔王が命じる……スタンそしてシアよ、目の前の敵全て屠ってみせよ!」


 俺の声と同時に、二人が左右に分かれて眼前の敵に向かって駆け出す。

 骨の軍団が響かせる音の大合唱の中で、二人の石畳を蹴る音と、武器が風を切る音が俺の耳にはっきりと聞こえた。 

 二人は圧倒的多数の敵の中に、無謀とも言える突撃を敢行する。

 しかし、白色の波に飲み込まれる事もなく、赤と青の鬼の行く手を阻む事はできなかった。



 スタンは大きく敵に向かって踏み込み、上方から斜め下に一気に切りつけた。

 骨の巨熊が一刀で切り伏せられ、相手の体が二つに割れて崩れ落ちる。


 横から武装スケルトンが剣で切りつけてくる。

 大剣で受け止めながら、角度をつけて、相手の剣を滑らせる。

 体勢の崩れたスケルトンを、下から切り上げて真っ二つに断ち割った。


 負傷した時のように、隙を伺っていた骨犬が口を開け、牙をつきたてんと飛び掛ってくる。

 体を捻る事で、大剣で自分を中心とした周囲全てを、粉塵を巻き上げながら切りつける。

 襲い掛かってきた骨犬だけでなく、囲む敵全てを巻き込むその斬撃は、さながら旋風の如く。

 

「おらぁぁぁ! どんどんこいよー!」


      

 

 シアの方は単純だ。彼女の前に立った敵は全て原形をとどめていない。

 骨を軋ませながら襲い来る四足歩行の大型獣は、頭から背骨の中ごろにかけてを粉々にされた。

 大盾を構えながら突撃してきたスケルトンは、彼女が振り下ろした大鎚によって、大きく歪んだ盾と同じ形に潰された。

 地面を這って近づく骨蜥蜴は、獲物を丸呑みしようと開けた大口に、大鎚を喉の奥まで突っ込まれて大きく裂けた。

 空から爪を立てんと近づいてきた鳥型は、自分が砕かれた事さえ気づかないまま、粉微塵になって四散した。


「先程、兄様を傷つけたお返しは、まだ終わっていませんよ!」 

 

 数がいても、武装していようと二人の進みを止める事はできなかった。

 あの様子ならどれだけ数がいようと大丈夫だろう。


 


 俺の方はといえば、二人の様子をたまに見ながら、視界に入る敵を全て倒していった。

 槍を、俺に向かって突き出すスケルトンがいれば、槍を二つに叩き折り、相手の腰の辺りを背骨ごと蹴り砕く。

 口を開いて飛び掛ってくる獣型がいれば、その口の中に拳を突き入れ、内側から真っ二つに裂いて倒す。

 三体、四体と同時に空から襲い来る敵がいれば、魔力弾を、連続で叩き込めるだけ全て叩き込む。

 俺の周囲には、そうやって出来た白い砂山が無数に生まれていた。

 

 そして俺の眼前で、隊列を組み、揃った動きをするスケルトン達が行く手を遮る。

  

「ほら、ちゃんと攻撃して来い……そして満足させてみろ、この俺を」


 横に並ぶ奴等の間を、強引に押し開くように飛び込む。

 両手それぞれでスケルトンの頭を掴み、無理やり頭を下げさせるように、地面に向かって折り畳む。

 敵の頭蓋骨が、俺の手と大地の間で、水が凍っていく時のような乾いた音をたてながら潰れた。

 

 こちらに向かって武器を振り下ろす者達を、二、三体まとめて右の回し蹴りで吹き飛ばした。

 石畳の上を、吹き飛んだ奴等の体がバラバラになり、音を立てながら散らばる。

 原形を残したまま、吹き飛ばされた先にいる不運なやつも、凄い速度でぶつかってきた仲間と共に、どの骨が自分のものかわからない程粉々になって消えた。


 俺は日頃の鬱憤を晴らすつもりで、眼前の敵全てを千切っては放り投げ、引き倒しては頭蓋を踵で踏み砕き、魔力弾を雨のように連続で撃ちだしては、相手を穴だらけにして倒した。

 武器を持とうが、防具を身に纏おうが、俺は意に介する事なく装備ごと潰して周る。

 

 俺達三人は数の差の事などすっかり忘れて、切って、潰して、砕いていった。

 次から次へとカバネは追加の骨兵を生み出すが、ただ素材の消費を早めるだけだ。



「流石は魔王様デス。数で倒せないなら……ワタクシのとっておきを使うしかありませんデス」


 そう言ってカバネは自分のコートの内ポケットに手を突っ込んだ。

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