少数による蹂躙
カバネによって生み出された人型、獣型、鳥型の多様な骨の軍団が、俺達を取り囲んでいる。
眼前には百体の敵、追加可能な戦力を加味すればその数は千を超えるという。
対してこちらは魔王一人に鬼が二人。
数で考えれば、笑える程の差だ。
「数の差は圧倒的だが……やれるよなお前達?」
俺の両側で、今にも眼前の大軍に飛び込んでいきたい、といった様子の二人に声をかける。
「おうっ!」
「はい!」
短く返事をするオーガの兄妹。二人の実力は、実際に手合わせしたから解っている。
危ないと思ったらフォローしてやればいい。
今回は、こいつ等のやりたいようにさせてみよう。
「よし、魔王が命じる……スタンそしてシアよ、目の前の敵全て屠ってみせよ!」
俺の声と同時に、二人が左右に分かれて眼前の敵に向かって駆け出す。
骨の軍団が響かせる音の大合唱の中で、二人の石畳を蹴る音と、武器が風を切る音が俺の耳にはっきりと聞こえた。
二人は圧倒的多数の敵の中に、無謀とも言える突撃を敢行する。
しかし、白色の波に飲み込まれる事もなく、赤と青の鬼の行く手を阻む事はできなかった。
スタンは大きく敵に向かって踏み込み、上方から斜め下に一気に切りつけた。
骨の巨熊が一刀で切り伏せられ、相手の体が二つに割れて崩れ落ちる。
横から武装スケルトンが剣で切りつけてくる。
大剣で受け止めながら、角度をつけて、相手の剣を滑らせる。
体勢の崩れたスケルトンを、下から切り上げて真っ二つに断ち割った。
負傷した時のように、隙を伺っていた骨犬が口を開け、牙をつきたてんと飛び掛ってくる。
体を捻る事で、大剣で自分を中心とした周囲全てを、粉塵を巻き上げながら切りつける。
襲い掛かってきた骨犬だけでなく、囲む敵全てを巻き込むその斬撃は、さながら旋風の如く。
「おらぁぁぁ! どんどんこいよー!」
シアの方は単純だ。彼女の前に立った敵は全て原形をとどめていない。
骨を軋ませながら襲い来る四足歩行の大型獣は、頭から背骨の中ごろにかけてを粉々にされた。
大盾を構えながら突撃してきたスケルトンは、彼女が振り下ろした大鎚によって、大きく歪んだ盾と同じ形に潰された。
地面を這って近づく骨蜥蜴は、獲物を丸呑みしようと開けた大口に、大鎚を喉の奥まで突っ込まれて大きく裂けた。
空から爪を立てんと近づいてきた鳥型は、自分が砕かれた事さえ気づかないまま、粉微塵になって四散した。
「先程、兄様を傷つけたお返しは、まだ終わっていませんよ!」
数がいても、武装していようと二人の進みを止める事はできなかった。
あの様子ならどれだけ数がいようと大丈夫だろう。
俺の方はといえば、二人の様子をたまに見ながら、視界に入る敵を全て倒していった。
槍を、俺に向かって突き出すスケルトンがいれば、槍を二つに叩き折り、相手の腰の辺りを背骨ごと蹴り砕く。
口を開いて飛び掛ってくる獣型がいれば、その口の中に拳を突き入れ、内側から真っ二つに裂いて倒す。
三体、四体と同時に空から襲い来る敵がいれば、魔力弾を、連続で叩き込めるだけ全て叩き込む。
俺の周囲には、そうやって出来た白い砂山が無数に生まれていた。
そして俺の眼前で、隊列を組み、揃った動きをするスケルトン達が行く手を遮る。
「ほら、ちゃんと攻撃して来い……そして満足させてみろ、この俺を」
横に並ぶ奴等の間を、強引に押し開くように飛び込む。
両手それぞれでスケルトンの頭を掴み、無理やり頭を下げさせるように、地面に向かって折り畳む。
敵の頭蓋骨が、俺の手と大地の間で、水が凍っていく時のような乾いた音をたてながら潰れた。
こちらに向かって武器を振り下ろす者達を、二、三体まとめて右の回し蹴りで吹き飛ばした。
石畳の上を、吹き飛んだ奴等の体がバラバラになり、音を立てながら散らばる。
原形を残したまま、吹き飛ばされた先にいる不運なやつも、凄い速度でぶつかってきた仲間と共に、どの骨が自分のものかわからない程粉々になって消えた。
俺は日頃の鬱憤を晴らすつもりで、眼前の敵全てを千切っては放り投げ、引き倒しては頭蓋を踵で踏み砕き、魔力弾を雨のように連続で撃ちだしては、相手を穴だらけにして倒した。
武器を持とうが、防具を身に纏おうが、俺は意に介する事なく装備ごと潰して周る。
俺達三人は数の差の事などすっかり忘れて、切って、潰して、砕いていった。
次から次へとカバネは追加の骨兵を生み出すが、ただ素材の消費を早めるだけだ。
「流石は魔王様デス。数で倒せないなら……ワタクシのとっておきを使うしかありませんデス」
そう言ってカバネは自分のコートの内ポケットに手を突っ込んだ。




