油断と慢心
俺達三人の進路を遮るのは、数十体のスケルトン達。
所狭しとスケルトン達が通路を埋めつくす。
「一体の戦闘力は大したことがない。復活しないように、確実に潰していくぞ」
両拳に体内から魔力を集め、相手を砕いてやるための準備を整える。
「おぅ! 断ち割ってやるぜ!」
スタンも愛用の大剣を前に構えて不敵に笑う。
「潰して、砕くという事なら、私が一番得意です」
自分の身の丈よりも大きな鎚を担いで、シアは前へ歩みを進める。
俺が敵の集団に向かって突撃したのをきっかけに、二人も続いて敵中に切り込む。
俺は拳でスケルトンの頭を割り、背骨を砕き、魔力弾で吹き飛ばす。
次から次へ、襲い掛かってくる奴等を難なく粉砕する。
スタンとシアの方は大丈夫か? 二人の方を見ると、
「歯応え無いぜぇ、お前等!」
大剣を縦に振るい、眼前に立ちふさがるスケルトンを二、三体纏めて切り伏せている。
スタンが繰り出しているのは、床に剣がぶつかった衝撃で周囲のスケルトンが体勢を崩すほどの攻撃だ。
骨の畑を耕すかのような動きで、どんどん前へ進んでいく。
そして、スタンの反対側からは連続した衝撃音がする。
ちらりと音のする方を見ると、シアが霜を踏んで遊ぶ子供のような笑顔で、眼前の敵を潰して、砕いている。
大鎚が振り下ろされた先にいた敵は、原型がわからないほど粉々だ。
俺達三人は難なく眼前の敵を屠っていく。
攻撃が甘ければ、再び起き上がってくる面倒な相手。
しかし、それを踏まえた攻撃をとる俺達にとっては、全く問題にならない。
数十体いたスケルトン達が、次々と床にばら撒かれ、動かなくなる。
「これで終わりっと」
最後の一体を、壁に向かって殴り飛ばす。
勢い良く叩きつけられ、骨という骨が四方八方に飛び散る。
辺りを見回してみるが、今度こそ完全に動くものはいなくなった。
かろうじて、骨の形を保っていた残骸も、白い砂に変わっていく。
与えられていた魔力が尽きたのだろう。
「もう少し潰し甲斐があればいいのに……」
「こんなんじゃ物足りないよぉー兄貴ー」
二人共が不満を述べるが、俺に言われても困る。
動きは単調で、ただ進路を塞いで、群がってくるだけの相手だったしな。
「先に進めば、もっと戦い甲斐のある奴がでてくるさ」
そう、このスケルトン達を生み出した奴がいるはずなのだから。
「じゃあ早いとこ先に進もうぜ兄貴っ!」
進む事を再開する。
断続的に通路の床に骨が散らばっていて、近づくと起き上がり、襲い掛かってくる。
その度にスタンとシアが倒していく。
さっきみたいに集団でもなく、数体程度では全く障害になっていない。
「またか……」
何度目かの角を曲がり、その先の通路の両側にまた骨が散らばっている。
「次は俺がいくぞー」
さっきから二人が交代で倒している。
今度はスタンの番か。
散らばっている地点に向かってスタンが走っていく。
そして近づくにつれ骨が動き出し、起き上がる。
「あれ……何だか小さくないか?」
今までは骨が集まって、寝床から起き上がるように立ち上がっていた。
だが今回は、膝のあたりまでしか高さが無い。うずくまっているのか?
これまでとの違いを気にする事なく、スタンは攻撃せんと近寄っていく。
嫌な感じがして、じっと見る事で違和感の答えがわかった。
今度は人型じゃない、二本足ではなく、四本足なんだ。
俺は瞬間スタンに向かって叫んだ。
「スタン! 気をつけろ!」
「え?」
スタンが俺の声に反応し、反射的にこっちを見た。
そして前を向きなおした時、スタンに襲い掛かる二つの影が現れる。
「う、うわぁぁ!」
慌てて、大剣で体を守るようにして攻撃を受け止めた。
しかし受け止められたのは一体だけ、もう一体がスタンの脇腹に噛み付いた。
噛み付いたまま、傷口を広げるように敵が暴れる。
俺はスタンの所に向かって走り出していた。
今回は、ただ群がるだけのスケルトンじゃない。
獣型、骨で形作られた犬だ。
「スタン少し我慢しろ! 動くなよ!」
スタンの近くまで来た俺は、脇腹に噛み付いた骨犬の、首の辺り目掛けて殴りつける。
体の部分は砕けて地面にばら撒かれるが、頭の部分はまだ噛み付いたままだ。
両手で口をこじ開けるようにスタンの脇腹から引き剥がす。
「ありがと兄貴! こんにゃろぉぉぉぉ!」
隙を伺っていたもう一匹が、スタンの首目掛けて飛び掛ってくる。
傷を負わされたお返しとばかりに、大剣を思い切り横に薙ぎ払う。
俺にあたらないようにしているが、飛び掛ってきた骨犬を横一文字に断ち割る。
「人型だけじゃないとはな……傷は深いか?」
スタンの脇腹の辺りには歯型の穴が開いて、血が滲んできている。
「ん、大丈夫。噛み付かれたまま暴れられたから、血が結構出てきてるけど深くはなさそう」
平気そうだが、持ってきておいた薬草を使って処置する。
こういう時に治療できる魔法か技術のある奴がいると楽なんだけどな。
「すまない。今度も人型だと思って油断していた」
スタンに対して謝る。大して強くないスケルトンが続いていた事で慢心していた。
「ううん。兄貴が悪いんじゃないよ、俺も気が抜けてたもん」
起き上がり、大剣を背負いなおしたスタンが申し訳なさそうに言う。
「兄様……」
シアの大鎚を握る両手に力が入り、小刻みに震えている。
自分自身も油断していたと思っているのだろう。
「この先は気を引き締めなおして進むとしよう」
人型、犬型以外の奴が出てくる可能性も考えながら進まないと……。




