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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
3章 運命からは逃げられない
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小話 ネーファの日々2

 ご飯を食べてから、わたしはお店に向かって再び歩き始めた。

 まだ少し距離がある。人通りの多い所からはちょっと離れているわたしのお店。

 向かう途中、服屋の店頭に置かれた籠に目を奪われた。


「あ……これ綺麗……」


 そこには色取り取りのリボンが籠に並べられていた。

 値段も様々だけど、通常の価格よりは安くなってる。

 その中でも、わたしが見た瞬間惹かれたのは、淡い赤色のリボンだった。

 はっきりとした色合いの服や装飾はあまり好きじゃない。

 

「あぅ……どうしよう、買っちゃおうかな……」


 安くなってるけど、こういう買い物にお金を使う決断は中々出来なかった。

 これまで自分の洋服や装飾品を買う事なんて無かったから。

 でも魔王様と出会ってから、品評会で似合ってるって言ってくれてから変わった。

 服はどういうのが良いのかわからないけど、リボンやエプロンは幾つか市場で買っていた。

 着飾るためのものに、全く興味が無かったのに……自分でも、わたし変わったなぁと思う。

 リボンを手にとって悩んでいると、


「お客さん、お目が高いー。その色ネーファちゃんに良く似合うと思うよー」


 迷ってるわたしに声をかけてきたのは、このお店で働いているマリルさんだった。

 猫耳をぴょこぴょこ動かしながら笑顔でわたしの横に立っていた。


「あ……マリルさんこんにちは」


「はい、こんにちはー」


 わたしが挨拶したらマリルさんも花が蕾が開いたような笑顔で挨拶を返してくれた。

 品評会の時マリルさんは、今わたしが着ているこの服をフィーナさんと一緒に選んでくれた。

 二人はお友達同士らしい。わたしから見てもフィーナさんはとても綺麗で、マリルさんは凄く可愛い人。

 わたしも二人みたいになれるのかなぁ。


「この籠の中の物は、ここに並べてあるので最後なんだ。だから、もし気に入ったなら買っちゃうのがおすすめー」


 マリルさんがわたしの決断を大きく揺らす言葉を投げかけてくる。

 そしてわたしの中の天秤は一方に大きく傾いた。


「これ……ください」


 わたしは一目で惹かれた、淡い赤色のリボンを買うことに決めた。

 

「はーい。お買い上げありがとうねー。早速つけていく?」


「じ、じゃあ……お願いします」


 わたしが返事をすると、マリルさんは、はさみを取り出してリボンを適当な長さに切り分けてくれた。

 それを受け取って、手足に結んでいった。マリルさんは頭の両側にリボンを結んでくれた。


「ん、ネーファちゃんは可愛いねー」


 と言いながらマリルさんは後ろからわたしの頭を抱え込むようにして抱き着いてきた。


「え、マ、マリルさん……」


 そのまましばらく髪を優しく撫でられて、解放された。

 

「今度は服も一緒に選んであげるから是非よろしくねー」

 

「は、はい。それじゃあまた……」


 代金を渡して、わたしは何だか恥ずかしくて足早に店から立ち去った。



 色々と予定外の事が多かったけど、わたしはようやく自分のお店についた。

 持ってきた商品を並べてから、椅子に座る。

 そして紙の束を取り出し、次の商品の彫る形を考える。

 店はそんなに忙しいわけじゃない。

 たまに足を止めてくれる人がいて、その中で買ってくれる人も稀にいるぐらい。

 ここの売上なんて僅かなものだけど、今は自分で商品をつくって、それを買っていってくれる人が少しでもいるのが凄く楽しくて嬉しい。


 でも、品評会の時が一番楽しかったなぁ。

 魔王様と一緒に準備して、本番も手伝ってくれて……。

 またあんな風にできるのかなぁ……。


「まおう様……」


 手にした紙に、魔王様の似顔絵を描いてみる。

 笑顔の魔王様。わたしに向かって微笑んでくれる魔王様を……。

 今頃なにしてるんだろう……と描きながら思っていたら。 

 

「ネーファ、調子はどうだ?」


「あ、え……ま、魔王様っ! い、いらっしゃいませっ! あっ!あわ……」


 突然、頭の中で思い出していたのと同じ声がわたしの耳に聞こえる。

 つい持っていた紙とペンを落としてしまった。


 いきなり現れた魔王様、それと後ろに知らない方が二人……。

 それから魔王様と近況や並べている商品について話をした。

 

 その後魔王様が二人を紹介してくれた。

 オーガのスタンさんと、シアさんというらしい。

 スタンさんは元気良く挨拶をしてくれた。


 でも……わたしの意識はシアさんの方に向いていた。

 向こうもじっとわたしの方を見ている。

 シアさんがわたしを見る目が怖い。

 けどその理由は何となくわかった。

 だって……多分わたしもおなじような目で見ていると思うから。


「オーガのシアです。よろしく……お願いします」


「こ、こちらこそ……シアさん……よろしくおねがいします……」 

 

 黙って見つめ合うわたし達を魔王様が心配して声をかけたからか、二人で挨拶を交わした。

 そしてすぐにシアさんがわたしと魔王様が「どういう知り合いか?」と聞いている。

 その問いかけに、ただの知り合いと答えた魔王様の言葉がわたしの胸をちくりとした。

 わたしはどういう答えを期待していたんだろう……、そしてシアさんも。


 シアさんがわたしの方へ近づいてきた。

 近くで見ても綺麗な人……。青くて綺麗な髪に、磨いた宝石のような二本の角……スタイルもわたしとは違ってるし、おっぱいも大きいし……。

 でも……負けたくない。わたしはそう思っていた。

 だから背筋を伸ばして真っ直ぐと正面からシアさんの方を見た。

 そして、確認しなくてはならない事がある。


「シアさんも……同じなんですか?」


「えぇ、同じです。お互いすぐにわかったようですね」


 わたしの短い問いに対してすぐにシアさんが返事をする。

 あぁ……やっぱり間違いないんだ。

 この人は、よく読む恋愛小説の主人公の前に現れては争う相手と同じ……わたしにとっての恋敵(ライバル)


「わ、わたし負けませんからっ」


 だけど、わたしだってこの気持ちは譲れない。

 その思いが自然と言葉になっていた。


「私だって負けません……これから宜しくお願いしますね」


 シアさんも気持ちや決意はわたしと同じみたい。

 そしてわたし達は開戦宣言の握手をした。 

 

 その後魔王様はわたしに声をかけて、今日はもう帰られるようでした。


「まおう様も是非また来てくださいねっ!」


 それから魔王様達は市場の雑踏の中に消えていきました。

 

「本当に……また会いに来て下さいね、まおう様……」


 わたしはその姿が見えなくなってもしばらくその方向をじっと見ていたようです。



 それから時間も遅くなって、わたしは自分の部屋に戻りました。

 今日あった事と、昨日書けなかった分の日記を書き、ベッドの上に移動。

 そして飯屋のおばさんにおしえてもらった、大きくなる体操を念入りにやりました。

 

「まおう様……わたし頑張ります。だからまた……一緒に……」

 

 今度お会いする時には、もっと素敵になっていよう。

 そう決意しながらわたしは眠りにつきました……。

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