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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
3章 運命からは逃げられない
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気付いた事

「知り合いとしか言いようが無いんだが……」


 どう答えたらいいんだ? 「どういう知り合いか?」という質問の意図がわからなかった。

 俺が黙ったまま考えていると、シアは目を閉じ一回頷いた。


「そうですか、わかりました」

 

 何がわかったのか、シアはネーファに近づいていく。

 市場の一角にある小さな店。その店先で二人の少女が向かい合う。

 

 一人は青く美しい髪を束ね、自分への自信をあらわすように姿勢良く二本の角が天を指す。

 

 一人は赤みがかった金髪が自信のなさからか目元を隠すが、負けじと背筋を伸ばして正面に立つ。


 そして美少女二人はただ見つめ合っている。

 目を逸らしたほうが負けとでも言うのだろうか?

 辺りに漂う空気が変化していった。

 

「兄貴……二人を見てると何だか怖いんだけど……」


「スタン、息を潜め静かにしろ。俺も何だかわからないが、介入するのは危険だと感じている」


 ここに漂う空気をスタンも感じ取ったらしく俺に話しかけてくる。

 だが下手に動かないよう制止した。

 これは理屈じゃない。ただ、俺の勘が黙って見ていろと告げる。



 沈黙を破ったのは意外にもネーファだった。


「シアさんも……同じなんですか?」


 それは短い言葉だが、はっきりと聞こえる声でシアに向かって発した。

 何が同じなのか意味はわからないが。


「えぇ、同じです。お互いすぐにわかったようですね」


 シアはあの短い言葉でわかったらしい。

 女同士だとわかるのか?

 俺とスタンは二人のやり取りを黙って見ているしかなかった。


「わ、わたし負けませんからっ」


「私だって負けません……これから宜しくお願いしますね」


 そうお互いに言葉を交わし握手をした。

 やり取りの意味が全くわからなかったが仲良くなった……のか?


「今度是非ゆっくりとお茶でも飲みながらお話しませんか?」


 握手しながらシアが声をかける。


「はい。わ、わたしも色々お聞きしたいと思ってました」


 ネーファはシアの誘いを受けるようだ。

 よくわからないが仲良くなったのだろう。

 きっとそうに違いないな。うん。

 俺は自分にそう言い聞かせるように心の中で呟いた。

 


「魔王様申し訳ございません、私の用は済みました」


 シアはそう言ってネーファから離れた。


「そ、そうか……」


 何だったのか聞きたいが、そんな感じでもない。

 ここは流すのが正解だな。


「で、ではネーファ。商売頑張れよ」


 早くここから去った方がいい気がしたので今日は切り上げる事にした。


「は、はいっ! まおう様も是非また来てくださいねっ!」


 ネーファは強い調子で返事する。

 やる気に満ち満ちているのは良い事だ。

 何か買っていこうかと思っていたが、言い出せる雰囲気ではないので今日はやめとこう。

 そして俺達はネーファに見送られて市場を後にした。



「よし明日から視察を再開する。俺の仕事が終わったら声をかけに行くからそのつもりで」


「「はいっ!」」


 二人は息もぴったりに元気良く返事をする。

 

「進んだ先に何が待ち構えているかわからないから、今日はしっかりと休んでおくように」


 買出しの最後は何故かどっと疲れたからな。

 それにしても視察がこれからの日々に組み込まれるなら、事務仕事をする時間も考えないとな。

 書類に時間をとられ過ぎると視察の時間が短くなる。

 とはいえ、まずは明日先に進む事に集中しよう。

 そして俺達は門の広場で別れて明日に備える事にした。



 部屋に戻った俺はベッドの上に倒れこんだ。


「あぁ…………疲れたー」


 自分の部屋に戻ってようやく俺は解放された気がした。

 ネーファとシアのやり取りは一体何だったんだろうなぁ。

 疲れた頭で考えようとするが答えはわからなかった。


 女の考えてる事はよくわからない。

 そう結論付けた後、俺は眠気に耐え切れず意識が落ちていった。

 

 明日からまた頑張ろう……。 


 そして眠りに落ちていく前にふと頭をよぎる考えがあった。

 毎日途切れない事務仕事をこなして終わった後に視察。

 しかもその視察は実戦形式で何が起こるかわからない。

 その中でスタンとシアを守ってやらないとな。

 それが終ったらまた事務仕事……。 


「あ……れ? 俺の仕事……段々きつくなって……ないか?」


 その考えにたどり着いた時、俺の意識は眠りに落ちた。


 次の日、意識が落ちる前に何を考えていたかを全く覚えていなかった。

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