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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
3章 運命からは逃げられない
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見つめ合う二人

「そうだ。行きたい店があるのだが、寄って構わないか?」

 

 戻ろうとしていたが折角市場に来ているのだから、ネーファの所へ顔を出してみよう。

 そう思って俺の後ろを歩く二人に声をかける。

 スタンとシアの二人も紹介してやりたいしな。


「何か準備として必要な物を買いにですか?」


「兄貴おすすめの美味しい食べ物が売ってるとかー?」


 二人はおもいおもいの予想をするが、両方はずれだ。


「知り合いがやってる店に顔だけでも出しておこうと思ってな」


 スタンは「ふーん」と言いつつ、食べ物じゃないと聞いて興味が薄れたようだ。

 まだ食べる気だったのか……。

 

「お知り合いの店はこの近くなのですか?」


 シアは特段変化無く聞いてくる。


「あぁ、確かこっちだったはず」


 俺は開店許可した場所を思い出しながら歩き出した。

 人通りの多い所から少し離れていたはず。

 周囲の通りを見渡しながら記憶にある近隣の店舗を探してみる。

 もう少ししっかり場所を覚えておけば良かったな。

 微かな記憶を頼りに探し続けた。


 しばらく迷子になりつつ、ようやく見覚えのある少女がいる小さな店を見つけた。

 店といっても、商品を置く台と簡素な屋根があるだけだ。

 あまり広くしても商品を作って並べるだけでも精一杯になる。

 種類をたくさん作れるようになってから拡張は考えればいい。

 という訳で、始める際に俺が手配していた店構えのままだった。


 ネーファはこちらに気づいておらず、手に持っている紙に筆を走らせている。

 服装は以前の品評会で着ていた紺色のドレスにフリルのエプロンをつけていた。

 エプロンのフリル部分のデザインが少し違うか? 

 

 あと、髪や手足につけていたリボンの色も違うな。

 品評会の時は白だったが、今は淡い赤色だ。

 ドヴェルグの区画で管理人としての生活よりも、商品を作って市場で店を構える生活を楽しんでくれてるのだろうか。

 

 ここでじっと見ていても仕方ないし近くに行って声をかけてみよう。

 


「ネーファ、調子はどうだ?」


 フードを脱いで、未だ紙に向かって唸っているネーファに声をかけた。


「あ、え……ま、魔王様っ! い、いらっしゃいませっ! あっ!あわ……」


 俺に気づいたネーファが驚いて、持っていた紙とペンを落とした。

 そんなにびっくりしなくても。余程集中していたのか。


 立ち上がってあたふたとしているネーファの姿が微笑ましかった。

 商品が置いてある台を見てみると、見覚えのある木彫りのお守りがある。

 他にも木彫りを中心に違った形のものがあった。

 さっきの紙に新しい商品を考えていたのかもな。

 台の上の商品を準備見ていくと、台の隅に金属を加工したお守りがあった。

 銀製か? いや輝きから他のものが混じってるのかもしれんが詳しくはわからない。

 しかし木彫り以外にも取り組んでいるのか。

 

「前と違って色々と商品を作れるようになったか。作れる種類も増えたんだな」


「は、はいっ。木彫り中心ですけど、いまは金属のあつかいもおしえてもらってます」

  

「ほぉ。誰に教えてもらっているんだ?」


 ドヴェルグの誰かの可能性もあるが、前に訪れた時の様子からは考えにくい。

 品評会か市場で知り合った誰か、という所かな。


「まえに品評会でしりあった、親方さんにおそわってます……お時間あるときにだけですけど」   

 

 やっぱりか。でもそうやって知り合いが増えていくのは嬉しいな。

 どんどん世界を広げていってくれ。


「兄貴ー。買いに来たんじゃないの~?」


 スタン達の存在をうっかり忘れて話に夢中になっていた。

 

「あぁ、すまん紹介が遅れたな。この店の店主で俺の知り合いでもあるネーファだ」

  

 ネーファを二人に紹介する。

   

「こっちの二人が俺の視察に同行するオーガのスタンと妹のシアだ」


 二人の事も紹介した。折角だし仲良くなってくれれば良いのだが。


「俺はスタン。よろしくなっ!」


 スタンが元気良く手を上げて挨拶する。


「あ、はい。ネーファです。よろしくおねがいします」


 初対面だからだろう、若干挨拶が固いがまぁ仕方ないな。


「………………」


 あれ? シアがネーファの事を無言でじっと見ている。

 表情は……警戒している?

 という事はないか、どうみてもネーファは俺に害意があるように見えないからな。

 

「どうしたシア? ネーファの格好で何か気になる事でもあるのか?」


 そしてネーファの方に視線を移すと……あれ? こっちも何だかシアの方を見ている?

 目が前髪で隠れているからわかりにくいが、二人してお互いに見つめ合ってる気がするな。


「オーガのシアです。よろしく……お願いします」


「こ、こちらこそ……シアさん……よろしくおねがいします……」


 妙な空気が二人の間に流れている気がする。

 初対面の女の子同士ってのはこんな感じなのか?


「あの魔王様、すこしお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」


 ネーファと見つめ合っていたシアが俺の方を見て聞いてくる。


「ん? なんだ?」


「こちらのネーファさんと、ど・の・よ・う・なお知り合いなのですか?」


 知り合いは知り合いとしか言いようが無いのだけど。

 シアはなぜか『どのような』の部分を強調した聞き方をしてきた。

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