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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
序章 事務仕事からは逃げられない
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【絶望への橋】

【絶望への橋】


 転移の光が収まり、俺の眼前には巨人ですら悠々と通れそうな程巨大な扉が目の前にあった。

 扉の両面に様々な紋様が掘り込まれたこの巨大な扉。

 確か【魔王門】とかいう名前だったはずだ。


「最下層の方だからといって、何にでも魔王~とか名付けるのはどうなんだ」


 とつい口に出しつつ、見た目を裏切らない重量の魔王門を押し開いた。


 扉を抜けたその先にあるのは一本の石造りの橋だった。



【絶望への橋】


 この部屋に床は無い。ただ暗い闇が広がっているだけ。

 底を見通す事はできず、全てを飲み込みそうな深さを感じさせる。

 そんな部屋の真ん中には、眼下に広がる闇を両断するように石造りの橋がかかっていた。


 橋の横幅は一人が通れるぐらいで細いと思わせるが、隙間無く見事に組まれた石造りは重厚さを感じさせる。

 明かりは橋の手すりに等間隔で僅かに灯っており、少し前と足元を確認できるぐらいだ。

 骸骨の頭に蝋燭が立っているデザインは何とも言えないが。


「確か……見えない障害物が設置してあるんだったか」


 足元にあった石を拾い、部屋の天井に向かって投げてみた。

 真っ直ぐ飛んだ石が、空中で見えない何かに当たる。

 そして予想外の方へ跳ねて、跳ねて……また跳ねた。


 石が何かに当って三回跳ねた後、鈍い音を立てながら……割れた。


「あぁ……剣も浮かせてるんだったな」


 幻覚魔法の一種で不可視の魔法をかけた大小様々な岩や剣……他にも多種多様な障害物を部屋の各所に浮遊させているはず。

 ただ飛んで越えようとするだけでは障害物に阻まれ、負傷や墜落を避けられない仕様になっている。


 前に提出されたここの申請書の内容で覚えているのは、幻覚魔法の継続使用申請と桁数を三回数えなおした程の金額が書かれた魔王門の装飾加工及び設置費用だった。


 細かく様々な紋様を刻み、橋の半ばぐらいからうっすらと巨大な魔王門が侵入者の眼前に見えてくる。

 この演出のため門自体が僅かな光を放つ特殊加工等がされており、扉一枚としては魔王城一の費用がかかっていた。

 最後の門だからと、あいつの口車に乗って大盤振る舞いしたのが失敗だったかな……。


 『少し前しか見えない不気味な薄明かりの中、橋を渡る侵入者達は、半ばまで来る頃には気づくのです。自分達の行く先に見えるこの不気味な魔王門に! そして感じるはずです、その歩み一歩一歩が自分達が絶望へ向けて歩いているという事に!』


 目の前に橋があるのに、空を飛ぶとか空気の読めない者は許せない! と橋以外の部分に不可視の障害物を設置する意義を話す笑顔は何とも言えなかった。


「あいつは本当に性格悪い。それが笑顔にでてるものな」


と、後で秘書にそう言ったら……微妙な表情をして無言だった理由は今でも謎だ。


「向こう側から来るのが絶望への橋なら、逆向きに歩く俺は希望への橋を渡るって事かもな」


 自由への期待に胸をふくらませ、そんな事を考えながら俺は橋を渡りだした。

 頭は既に、次の区画はどんな所だったかと思い出そうとしていた。

 足取りは軽く、まさに希望へ向けて大きく踏み出していく俺の心のようだ。

 そして橋ももう半分ぐらいかと思った時であった。



「あ……れ?」



 足に伝わるはずの感覚が無かった。

 体勢を崩した瞬間、足下を見た俺の目に入ったのは自分の足が橋に半分埋まっている光景だった。


 強く踏み出していた足は止まる事無く、体ごと橋に吸い込まれていくような感覚に陥った。

 橋が壁のように俺の顔に近づいてくる。


「あぁぁぁぁぁ、何でっ!?」


 何の抵抗も無く体ごと橋をつき抜け、俺の姿は橋の下にあった。


 そうか、思い出した――元々橋の真ん中は大きく2メートル程開いていた。

 幻覚でその部分にも橋があるように見せていただけなのだ。

 

 不可視の障害物だけでなく、あるように見える橋の中央部分こそが罠。

 うっすらと見え始める魔王門を凝視しながら歩みを進めれば、容赦なく足元をすくう罠。

 それが絶望への橋の名の由来だった。


「痛ぅぅぅ!」


 橋から落下しながら、俺の体に不可視の岩や剣に次々とぶつかっていく。

 この程度、通常の状態ならダメージにはならないが、動揺して防御に向けるべき意識が大きく欠けていた。


 上を向き、橋が段々小さく見えてきた事で自分が橋から落ちて落下している事実をようやく理解できた。

 俺は、悔しさをこらえて右手にはめた指輪に向かって――目を閉じ――念じた。


「あるべき場所へ……」


 瞬間、俺の体が光に包まれ消えた。


――――――


 再び目を開けると、目の前に広がるのは玉座からの見慣れた光景だった。

 俺だけが持つ魔王城内のどこからでも玉座へ転移するアイテムの力だ。

 ただ、ここに戻ってくるだけの力しかない。


 威厳も何もなく巨大な玉座に俺はうなだれた。


 諦めないぞ……魔王による魔王城攻略は始まったばかりなんだ。




≪攻略メモ≫

【絶望への橋】

・橋中央部2メートル程がぽっかり開いている。幻覚で、そこにまるで橋があるように見えるので注意。

・橋以外の部分の上下には不可視の岩と剣等の障害物が浮いている。


足元を確かめながら橋を渡り、橋の欠落部分は飛び越える。

飛んでいく場合は障害物を破壊しつつ進路を確保して渡る。

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