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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
2章 兄妹からは逃げられない
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笑顔

「今日はどこへ連れて行ってくださるんですか?」

 

 俺の隣を歩いているシアが問いかけてきた。

 先程から俺の腕に抱きつこうとしてくる。


「あぁ、あっちの方へもう少し行った所だ」


 進む先を指差すように腕を動かして、シアの抱きつきを回避。

 他にも伸びをしたり、「あれはなんだろうな?」と指差したりと多彩な回避行動をとっている。

 

 

 俺は今日の仕事を終えた後、待ち合わせ場所に指定した【門の広場】でシアと合流した。

 それから転移魔法陣で移動して、現在目的の場所に向かって歩いている。


「段々誰もいない所へ……もう魔王様ってば……」


 シアは目を閉じて頬に手を当てながら首を横に振っている。

 時折「だめです。そんな風に迫られたら……」とか「あぁ、魔王様……凄いです……」という声が聞こえる。

 何を勘違いして妄想しているのかしらないが。考え事しながら歩いて転ぶなよ。


「シアとスタンはセルドやサルビアに勝った事はあるのか?」


 目的の場所までは後少し距離がある。

 その間に色々聞いてみよう。


「いえ、私達二人ともまだ一度も……」


 残念ながら、という表情でシアは答えた。

 

「そうか。ならお前とスタンはどっちが強いと思う? オーガの中で一番の戦士の座を争っているんだろう?」


「兄様とは決着がまだついていませんから……」


 俺から視線を逸らして笑顔で答える。

 その笑顔はまるで作り笑いのように感じられた。


「普段どんな訓練しているんだ?」


 サルビアなんかは厳しい気がする。

 セルドは理論とかなさそうだから教師役にはあんまり……。


「最近はずっと兄様と決闘という名の模擬戦ばっかりですね。お婆様達は他のオーガの子達の訓練をみるようになったので」


 強くなっていくシア達を見た他のオーガ達が、自分達の子供も鍛えてやって欲しいと頼み込んできたらしい。


「いつか同年代からライバルがでてくるかもな」


「そう……ですね。まだまだ先になりそうですけど」


 先程から表情が変わらない。

 そしてようやく目的地に到着した。



――――――


 

「よし、ついたぞ」


 俺は目の前の扉を開けて中へ入った。


「あの、ここは一体?」


 シアが連れてこられた場所がどこなのかわかっていなかった。


「ここはな……訓練場だ」


 訓練場の一つで、平野を再現しており広さも充分確保されている。

 前に魔王印の品評会をやった場所と同じくらいだ。


「えっと、何故私はここに連れてこられたんですか?」


 目的を告げてないから当然の疑問だ。

 そろそろ教えてやるとしよう。 


「シアの本当の力を知りたくてな。でも、また壊されて仕事増やしたくないから今回は訓練場を借りておいた」


 昨日戻ってから申請書を書いて準備した。

 空いてる訓練場の中から良さそうな場所を考えたらここだった。 

 

「は、はい? あの魔王様どういう意味でしょうか?」


「シア……会ってから今まで一度も本気だしてないよな?」


 そう、俺が二人纏めて相手した時も、ガーゴイルと戦っていた時ですら本気をだしていない。多分最初スタンと戦っていた時もそうなんだと思う。

 最初拳を交えた時には正直スタンより強いだろうと感じた。実際スタンが力が使い切っていた時に、けろっと起き上がってきていたしな。

  ガーゴイルの時は、スタンの猪突で上手く戦えないものの、ダメージは与えていた。あの硬い相手にだ。

 

 強さを発揮できないのは頭で考えすぎて、行動まで時間がかかるからだと思っていた。

 でも何だか理由としてすっきりしない。だから別の仮定を考えてみた。


「これは俺の予想なんだけどな、意図的にスタンの前で力を抑えてないか?」


 はっきりした根拠があるわけではない。

 でもこの仮定が正しいとして考えた場合、俺が感じた実力の高さに対してその後の戦いでの力の落差に納得がいった。

  

「………………」


 シアは俯いて何も答えなかった。だけど纏う空気が変わった。


「まぁ、正解かどうかは今はどうでもいい。ただ単に興味があるんだ、お前の本当の強さに」


 だからこうして他の誰の目も無い場所を選んで連れてきた。

 思い切り暴れても大丈夫な場所に。


「――――――ませんか?」


「ん? 悪い。聞き取れなかった」


 小声でぼそぼそと言ったせいでよく聞こえなかった。

 顔を上げたシアと俺の目があった。

 

「魔王様は…………潰れちゃいませんか?」


 あぁ、見たことある目だ。

 戦う事自体が好きな奴が、戦いの前にだけ見せる目の輝き。

 口元もうっすらと笑っているようだ。


「おいおい、随分この魔王も舐められたものだ。たかが(オーガ)子供(ガキ)に潰されるわけないだろう」


「そうですよね。魔王様はとっても強い方ですから……思い切り潰しちゃっても大丈夫ですよね!」


 できるかどうかはおいておいて中々物騒な事を口にする。  

 シアは持ってくるように言っておいた愛用の大鎚を構える。

 

「大人と子供の力の差ってのを教えてやろう。全力で……思い切り向かってこい!」


「はい! いきます!」

 

 大鎚を構え、全力でこっちに挑みかかってくるシアの表情はとても楽しそうに見えた。

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