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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
2章 兄妹からは逃げられない
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オーガの生息地

*すいません、前話の前半部分が大幅に切れた形で予約投稿してました。

5月27日22:00頃修正したので、それ以前に読まれた方は読み直して見ていただけると幸いです

 現在俺達はガーゴイルの部屋からオーガの村へ向かう途中。

 先程抜けてきた通路の仕掛けは、一度作動させてしまえば終わりらしい。

 村へ向かって戻る途中、特に仕掛けで妨害される事はなかった。

 恐らくだが、この辺りの管理者が再度設置しないとこのままなんだろう。


 村への入口は一つ前の区画。第611区画にある。

 先程選ばなかった方向の先とシアが言っていた。


「さっきの兄貴の強さは……ほんと凄かった!」


 さっきからスタンは歩きながら俺の周りで「凄い」と連呼している。

 だけど、体が炎に包まれてしばらく後から記憶が曖昧なんだよなぁ。

 そんな状態での戦いを凄いと言われても答えに困る。


「本気をだされたら、あっという間に倒せたのですね」


 シアまでもが凄いと言ってくるが、そこまでではないと自分では思う。

 この二人が傷つくのを見たくない、と一生懸命なだけだった。

 正直にそう口にすると少し恥ずかしい。

 

「うむ」


 なのでとりあえずさっきからずっとこの一言だけで済ましている。

 上手く説明できないしな。



――――――



 そして俺達は第611区画にある、オーガの生息地へ繋がる転移魔法陣の前に辿り着いた。

 まずはスタンが、次にシア、そして俺の順で転移を始める。

 二人が先に転移した後で俺も魔法陣に乗り、体を光が包んでいく。

 

 周囲の風景がはっきりと見えてきた。

 身長を遥かに超える木々で生い茂る森林が広がっている。

 見上げると木々の間には空が見えた。


 いや、空に見えているというのが正しいか。

 魔法でそう見えるようにしているだけ。

 明るいのは幻覚の他に光源としての魔法も組んであるからでしかない。


「兄貴ー! こっちこっちー」


 スタンとシアが森の入口らしき所で、こっちに向けて手を振っている。

 さて、久々に昔の仲間達に会いに行くか。

 あいつ等に会ったら何と話しかけようか、そういえば最後に会ったのはいつだったかな。

 そんな事を考えながら俺は二人の方へ歩いていった。



「ここは、どれぐらい広いんだ?」


 森の中を歩きながら疑問に思った事を聞いてみる。

 何せここには野生の獣や、知能を持たない魔獣がかなりの数住んでいるようだ。

 先程からこちらに気づくと、森の奥に消えていく姿がよく目につく。


「さぁ? もの凄く広いらしいよ」


「1日ぐらいじゃ壁まで到達しないそうです。食料調達のため狩りにでて、数日間獲物を追い求めて森の中を動き回っても端にはつきませんでした」


 どこまで広いんだよ。

 魔王城の敷地はどこまで広がっているんだか……。


「そういうの気にした事ないもん」


 スタンはそうだろうなぁ……。

 強くなる事だけに一生懸命で、自分が興味を持てない事は一切目や耳に入ってこなさそうだ。

 さっきの戦いでは猪突な所が気になったが、もう少し周りを見る事を覚えた方がいいと思う。

 後は経験を積めば強くなれるだろう。

 

「兄様はもう少し色々気になさった方が良いと思います」

 

 シアが俺の言いたい事を代弁した。

 こっちは周りを良く見て、やれる事をちゃんとわかってる戦い方をしている。

 スタンより強い気がするが、兄の方と比べると考えすぎたりして行動が鈍るんじゃないだろうか。

 こっちもまだまだ経験不足の感が否めない。


 ようするに、二人ともまだまだ子供という事だ。

 微笑ましく思いながら先を行くスタンと、横を歩くシアを見る。

 

「あら……何かおもしろい事でもありましたか?」


 どうやら自然と笑みがこぼれたらしい シアが聞いてきた。


「いや、二人共まだまだ子供だと思ってな」


「そうでしょうか? 兄様はともかくとして、私はもう大人です」


 そう言いながらシアが俺の腕に抱きついてきた。

 柔らかな感触が腕に伝わってくる。


「大人の淑女は、そう簡単に男の腕に抱きついてきたりしないと思うが?」


「私が教わった事の一つに『攻め時と見たら、徹底的に攻める』という教えがあります。それを実行しているだけですよ」


 その教えはこういう場合に使うものなのか?

 鼻をふふんと鳴らしそうなシアの表情が何だかおもしろかった。


「私は強い人が好きなんです。だから――」


「おぉーい、ついたぞー」


 シアが言い終える前に、スタンからの助け舟が先についた。

 遮られたシアは、不満気な表情に変わって兄の方に意識がいく。


「それじゃあまずはお前達の祖父母に会わせてもらおうか」


 腕への力が弱まっているようだったので、腕を振りほどいてスタンの方へ向かう。まだまだ甘いな。

 

 村は森林の中を切り開いて造ったような集落になっていた。

 気で造られた家々が並び、畑が所々に見受けられる。

 のどかな風景だった。


「じっちゃん、ばっちゃんの家はこっちだよ」


 スタンの先導で目的の小屋の方へ歩いていく。

 シアはまだご機嫌斜めな様子で、俺の少し後ろをついてきている。

   

 さぁ、いよいよ久々の再会だ。


「じっちゃんー、ばっちゃん帰ったー」


 ドアの外から小屋に向けてスタンが大声で呼びかける。

 するとしばらくして小屋のドアが開いた。


「今日は随分時間かかったじゃないか、どうせまた喧嘩しておったんじゃろうが」


 あぁ、年をとったが見覚えのある風貌をした、年配の男オーガが小屋からでてきた。


「こちらお爺様の昔の知り合いだそうです。それと、ちょっと服がぼろぼろになってしまったのもあって、村に寄っていただきました」


 シアが補足で説明した事を聞いたオーガは俺の方を見て、すぐに表情が驚きと懐かしさが同居したような顔に変わった。



「ん? ……おぉぉぉぉ、お久しぶりです魔王様。最後にお会いしたのは何十年前だったか……。それにしてもひどい格好ですのぉ……」


 俺の旧友からの第一声はこんなんだった。 

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