湧きあがるモノ
*前半部分が切れた状態で投稿してました。気付くの遅くなり申し訳ない。
「あ、兄貴っ!」
スタンが炎に包まれた俺の姿を見て駆け寄ろうとする。
「く……くるなっ!」
体を覆う炎と熱で、喉が焼けるようだ。声が上手くでない。
だがスタンの体も油まみれだ。少しでも近づけば同じような状態になる。
「シ……アも動く……な。大丈……夫だ」
「でも!」
今にも飛び出してきそうな表情のシアを制止する。
確かに体全体が熱い。全身の焼けた所から痛みが走る。
けど、魔力で強化したこの肉体なら耐えられないわけじゃない。
むしろ耐えられないとすれば、俺についてきた二人にこの苦しみや痛みを味あわせてしまう事。
それだけは駄目だ。
俺はどんな事になっても耐える。だから、俺についてきてくれる者達は絶対に守ってみせる。
だから、二人ともそんな心配そうな顔をするな。
今、終わらせるから……。
………………。
「だから……もう終わりだ!」
体が炎に包まれて、痛みが体中から押し寄せてくるが、気にしていられない。
スタン達に一番近いガーゴイルへ向かって間合いをつめる。
二人を守る。そう決めた直後から体に力が満ちていく気がする。
先程までと違い、俺の動きに反応できていないガーゴイルの頭に右手を置いた。
そしてそのまま無造作に握りつぶす。
材質が違うのか? 中身が空洞になっているわけでもないのに、酷く脆い。
まるで、砂を水で固めてつくった像かと思うほどだ。
妙に体が軽い。今までにないくらい力が溢れ出る。
でも頭はだんだん靄がかかったみたいになっている。
残りの二体もようやく動き出した。
ほら、早く向かって来い。待っててやるから……。
でも熱いな……。
そうか、燃えてるのだから当然か。
だが、このままではスタンとシアが心配するか……。
あまりに残りのガーゴイルの動きが遅すぎてそんな事をぼんやりと考える。
左右に分かれて同時に攻撃してくるのかな?
「兄貴! 危ない!」
あぁ……ようやく来たな。
俺の眼前に二体のガーゴイルがやってきた。
そうだ、二人に心配させる事になったお返しにこの熱さを返そう。
体の表面を漂う力の流れを両の手の平に……。
そう念じると俺の手に体中から熱が集まっていく。
「炎が消えて……いく。違う……手に集まっている?」
「すげぇ! 体中炎に包まれた時はもう駄目かと思ったけど……兄貴すごい!」
そう、何も心配いらない。
大丈夫……大丈夫だから……。
誰に言い聞かせているのだろう。朦朧とする意識の中で自ら問いかける。
ガーゴイル達が蝙蝠の如き翼を大きく広げ、身体ごとこちらへ突っ込んでくる。
あぁ悪い。もう終わらせるから。
俺は攻撃を避け、飛び掛ってくる二体のガーゴイルの首を掴み取る。
すると、ガーゴイル達は俺が持った部分から熱によってどろどろに溶け出した。
「お勤めご苦労様……おやすみ」
ガーゴイル達は掴んだ部分から上下に溶け落ちた。
溶け残った部分もあるが、動く事すらできずただの石の残骸へと成り果てる。
終わりか……。なんだか頭がぼぉーっとするなぁ。
これで大丈夫なんだっけ?
もう終わりかな?
「兄貴!」
「うっ?」
急に叫び出したスタンの大声で、曖昧だった意識がはっきりした。
「ん? どうした?」
あれ、敵は?
そうか、もう倒してしまったな。
「やっぱり兄貴はめちゃくちゃ強い!」
「あんなに硬かったガーゴイル達をあんなに簡単に……すごいです!」
「いや、大した事はない。お前達こそ、どこか怪我はないか?」
途中結構無茶してたから怪我してなければいいけど。
「大丈夫!」
「兄様と同じく大丈夫です!」
二人とも大丈夫そうで安心した。
「しかし、二人とも油くさいな」
「仕方ないじゃん。思い切り浴びちゃったんだからー」
かくいう俺も体中油まみれだったせいで気持ち悪い。
全身の火傷もひりひりするが、身体強化していたおかげで見た目よりはダメージは少ない。
「これ、どうしたものか……」
自分の服の状態を確認すると、所々焼け焦げてぼろぼろになっている。
新しいの買った方が早いかな。
「あ、あの、そのまま帰るのも何ですし、一度私たちの……オーガの村へいらっしゃいませんか?」
ふむ……確かにちょっと着替えるなり、さっぱりしてから戻りたい。
「それじゃあ少し邪魔するか……旧友にも会いたいしな」
「はい! お爺様とお婆様も喜びます!」
「兄貴が俺達の村に来るんだな! じゃあ後で剣の稽古してくれよ!」
そんな会話をしながら、俺は一路オーガ達の村へ立ち寄ることにした。
≪攻略メモ≫
【仕掛け通路】
・通路の至る所に仕掛け有り。矢が飛んできたり、岩が落ちてくる。
→仕掛けの位置と内容は別紙に地図と併せて記載。
【ガーゴイルの部屋】
・部屋の入口に仕掛け有。中に入ると両側に設置してあるガーゴイルが動き出す。
ガーゴイルの攻撃方法
・水弾――威力 小 主に目晦まし。合わせた突撃に注意
・かなり硬いので攻撃方法に注意。
・二体の中身が油(燃えやすい液体?)。突撃後、破壊される事で対象を油まみれにするのが目的と思われる。
→他の個体より引いて位置取りしているので見分けはつく。
遠距離攻撃で倒すのが○。
・ガーゴイルが四隅に行く事で、炎の矢を発生させる魔法陣起動。
数の条件は無いかもしれない。




