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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
2章 兄妹からは逃げられない
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湧きあがるモノ

*前半部分が切れた状態で投稿してました。気付くの遅くなり申し訳ない。

 「あ、兄貴っ!」


 スタンが炎に包まれた俺の姿を見て駆け寄ろうとする。


「く……くるなっ!」

 

 体を覆う炎と熱で、喉が焼けるようだ。声が上手くでない。

 だがスタンの体も油まみれだ。少しでも近づけば同じような状態になる。


「シ……アも動く……な。大丈……夫だ」


「でも!」


 今にも飛び出してきそうな表情のシアを制止する。

 確かに体全体が熱い。全身の焼けた所から痛みが走る。

 けど、魔力で強化したこの肉体なら耐えられないわけじゃない。


 むしろ耐えられないとすれば、俺についてきた二人にこの苦しみや痛みを味あわせてしまう事。

 それだけは駄目だ。 

 俺はどんな事になっても耐える。だから、俺についてきてくれる者達は絶対に守ってみせる。


 だから、二人ともそんな心配そうな顔をするな。

 


 今、終わらせるから……。

   

 ………………。

 

「だから……もう終わりだ!」


 体が炎に包まれて、痛みが体中から押し寄せてくるが、気にしていられない。

 スタン達に一番近いガーゴイルへ向かって間合いをつめる。

 

 二人を守る。そう決めた直後から体に力が満ちていく気がする。

 

 先程までと違い、俺の動きに反応できていないガーゴイルの頭に右手を置いた。

 そしてそのまま無造作に握りつぶす。

 材質が違うのか? 中身が空洞になっているわけでもないのに、酷く脆い。

 まるで、砂を水で固めてつくった像かと思うほどだ。


 妙に体が軽い。今までにないくらい力が溢れ出る。

 でも頭はだんだん靄がかかったみたいになっている。 

   

 残りの二体もようやく動き出した。

 ほら、早く向かって来い。待っててやるから……。


 でも熱いな……。

 

 そうか、燃えてるのだから当然か。


 だが、このままではスタンとシアが心配するか……。

 あまりに残りのガーゴイルの動きが遅すぎてそんな事をぼんやりと考える。

 左右に分かれて同時に攻撃してくるのかな?


「兄貴! 危ない!」


 あぁ……ようやく来たな。

 俺の眼前に二体のガーゴイルがやってきた。

 

 そうだ、二人に心配させる事になったお返しにこの熱さを返そう。

 

 体の表面を漂う力の流れを両の手の平に……。

 そう念じると俺の手に体中から熱が集まっていく。


「炎が消えて……いく。違う……手に集まっている?」


「すげぇ! 体中炎に包まれた時はもう駄目かと思ったけど……兄貴すごい!」


 そう、何も心配いらない。

 大丈夫……大丈夫だから……。


 誰に言い聞かせているのだろう。朦朧とする意識の中で自ら問いかける。

 ガーゴイル達が蝙蝠の如き翼を大きく広げ、身体ごとこちらへ突っ込んでくる。 

 あぁ悪い。もう終わらせるから。


 俺は攻撃を避け、飛び掛ってくる二体のガーゴイルの首を掴み取る。

 

 すると、ガーゴイル達は俺が持った部分から熱によってどろどろに溶け出した。

 

「お勤めご苦労様……おやすみ」


 ガーゴイル達は掴んだ部分から上下に溶け落ちた。

 溶け残った部分もあるが、動く事すらできずただの石の残骸へと成り果てる。 


 終わりか……。なんだか頭がぼぉーっとするなぁ。

 これで大丈夫なんだっけ?

 もう終わりかな?


「兄貴!」


「うっ?」


 急に叫び出したスタンの大声で、曖昧だった意識がはっきりした。


「ん? どうした?」


 あれ、敵は? 

 そうか、もう倒してしまったな。


「やっぱり兄貴はめちゃくちゃ強い!」


「あんなに硬かったガーゴイル達をあんなに簡単に……すごいです!」


「いや、大した事はない。お前達こそ、どこか怪我はないか?」


 途中結構無茶してたから怪我してなければいいけど。


「大丈夫!」


「兄様と同じく大丈夫です!」

 

 二人とも大丈夫そうで安心した。


「しかし、二人とも油くさいな」


「仕方ないじゃん。思い切り浴びちゃったんだからー」


 かくいう俺も体中油まみれだったせいで気持ち悪い。

 全身の火傷もひりひりするが、身体強化していたおかげで見た目よりはダメージは少ない。 


「これ、どうしたものか……」


 自分の服の状態を確認すると、所々焼け焦げてぼろぼろになっている。

 新しいの買った方が早いかな。

 

「あ、あの、そのまま帰るのも何ですし、一度私たちの……オーガの村へいらっしゃいませんか?」


 ふむ……確かにちょっと着替えるなり、さっぱりしてから戻りたい。


 「それじゃあ少し邪魔するか……旧友にも会いたいしな」


 「はい! お爺様とお婆様も喜びます!」


 「兄貴が俺達の村に来るんだな! じゃあ後で剣の稽古してくれよ!」


 そんな会話をしながら、俺は一路オーガ達の村へ立ち寄ることにした。


≪攻略メモ≫

【仕掛け通路】

・通路の至る所に仕掛け有り。矢が飛んできたり、岩が落ちてくる。

 →仕掛けの位置と内容は別紙に地図と併せて記載。 


【ガーゴイルの部屋】

・部屋の入口に仕掛け有。中に入ると両側に設置してあるガーゴイルが動き出す。

ガーゴイルの攻撃方法

・水弾――威力 小  主に目晦まし。合わせた突撃に注意

・かなり硬いので攻撃方法に注意。

・二体の中身が油(燃えやすい液体?)。突撃後、破壊される事で対象を油まみれにするのが目的と思われる。

 →他の個体より引いて位置取りしているので見分けはつく。

  遠距離攻撃で倒すのが○。

・ガーゴイルが四隅に行く事で、炎の矢を発生させる魔法陣起動。

 数の条件は無いかもしれない。

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