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魔王城からは逃げられない  作者: 野良灰
2章 兄妹からは逃げられない
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 俺の方が残り二体、スタン達の方が四体。

 目の前のガーゴイル達を手早く片付けてしまおうと思った矢先、奴等の動きについてある疑問が湧いた。


 一体だけ全く攻撃に参加して……ない?

 直前までの敵の行動と、攻撃の役割を頭の中で冷静に考えてみる。

 俺が撃破したのは最初水弾を撃ってきた二体と、空中から襲い掛かってきた奴等のうちの一体。

 違和感を感じた一体だけは少し後ろに陣取って、こちらとの距離をとっているからだ。


 スタン達の方を見てみると、同じように明らかに一体だけ攻撃に参加していない。

 まるで何かチャンスを伺っているようにも見えた。


 心に湧く言い知れぬ不安が拭いきれない。

 何があるのか試してみよう。 

 

 俺は距離をとっている一体に狙いをしぼり攻撃を仕掛ける。

 自分から前へ。距離をつめるために加速する。

 俺の進路を遮るようにもう一方のガーゴイルが前へ出る。

 やはり奥の奴には何かある。


 庇うようにでてきた一体を、どけ!と左の裏拳の一撃にて粉砕する。

 首から上が激しい音をたてながら粉微塵に消し飛んだ。

 狙っていたガーゴイルは距離を空けようとするが、そうはさせない。

 相手が逃げるより早く。こちらはさらに加速する。


 一撃で決めるために、右拳に魔力を集中し強化。

 力を込めた一撃を、相手の脳天目掛けてぶつける。


 だが当った瞬間、俺の手に伝わってくる手応えがおかしい。

 今までのやつに比べて明らかに脆い。

 そしてその理由がすぐにわかる。


 それは……そのガーゴイルの中身が他とは違っていたのだ。

 

 中に空洞があり、そこに液体が詰まっていた。

 そしてその液体からは鼻に嫌な臭いが漂ってくる。

 

「これは……油か!」


 気づいた時には俺の体には砕いたガーゴイルの中身がぶちまけられていた。

 加速して拳で殴りつけたのが裏目にでる。

 中から噴き出したのが、液体である事に気づいた時には避けようがない。  

 

 スタンとシアに注意を促そうとして彼等の方を見た時、向こうでも攻撃に参加してなかった一体が動いた。

 二人に向かって走り出している。


「そいつに攻撃するな! 罠だ!」


 俺が叫んだ時には、走り出していたガーゴイルは二人のいる位置に向かって飛び掛かった。

 そしてスタンは迎撃のため、大剣で飛び掛ってくる相手を薙ぎ払おうとしている。

 勢いは俺の声が届いていたとしても止まらない。

 

 スタンの大剣がガーゴイルの体を横に切り払う。

 相手は胴体から真っ二つになる。

 しかし……ガーゴイルが起こした行動の意図は俺の方と同じようだ。

 避けきれずにスタンの頭の上で油がぶちまけられる。


「うわっ!? なんだこれ?」


 スタンは自分の体が油まみれになった事に驚いている。シアも足や服の一部分に油をかぶっていた。

 だが問題は油まみれにされた事よりも、この後の相手の行動だ。


 こういう場合に予想される相手の攻撃は……。

 俺は残りの敵の動きを無視して、二人の下へかけよる。

 

 その時ガーゴイル残り三体は部屋の四隅に移動しようとしていた。

  

「二人ともじっとし――くっ!」


 二人に下手に動かないように言おうとした俺の目に見えたのは、元々ガーゴイルが設置されていた両方の壁に現れた魔法陣だった。

 そしてそこから放たれようとしていた魔法は……炎の矢だった。

 

 だめだ。


 避けきれない。


 燃える。


 焼ける。焦げる。 


 誰が?


 俺。


 二人。


 それは駄目だ。


 俺の前で。


 させない。


 させるわけに……いくかっ!



 二人を助ける。



「強引だがすまん!」

    

 俺は二人の体を掴み、唯一開いてる部屋の角に思い切り放り投げた。

 直前にガーゴイルがそれぞれ四隅に移動した事から、そこが比較的安全と判断したからだ。

 そして二人を投げた瞬間魔法陣から多数の炎の矢が俺のいる位置に放たれる。 

   

「ぐうぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺の体が焼ける。焦げた臭いが鼻につく。

 体を強化しているとはいえ、熱い、痛い。

 

 体に纏わりついている油に引火し、体の至る所が炎によって覆われた。

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