【ガーゴイルの間】
俺達は部屋の中央付近で立ち止まり、戦闘態勢をとった。
壁に並ぶガーゴイル達が順に動き始めていた。
出口まではまだ遠い。
急いで走っていって、罠や不意をつかれて襲われるのは避けたいな。
やはりここで戦う方がよさそうだ。
「そっち側、お前達二人に任せていいか?」
背中越しにスタンとシアを見ると、二人共自分の武器を構え、俺とは反対側のガーゴイル達の動きを注意深く観察しているようだった。
数はこちら側と同じで五体。合計十体を倒さなくてはいけない。
「任せとけって! 真っ二つにしてやるぜ!」
「砕いて潰してやります」
二人でなら多分大丈夫だろう。
そう思いながら俺の目の前のガーゴイル達の動きに警戒を強める。
なぜかすぐに襲い掛かってこないのだ。
飛翔している二体と、俺達を遠巻きに囲むようにゆっくりと動く三体。
向こう側も同じような動きをしていた。
こちらの動きをじっくり見られているような感じがして嫌な気分だ。
もう少し俺が器用に魔法を使えたら、まとめて壊してやるんだがなぁ。
この二人を巻き込まないように、という条件がつくと選択肢がほぼ無い。
魔力による肉体強化のみで戦うしかないか。
「おっしゃぁぁ! 来ないならこっちからいくぞ!」
見なくてもスタンの行動がわかった。
さっきは相手を観察してたが、もう我慢できなくなったか。
「見た目以上に硬いから無理するなよ!」
声だけかけておく。
実際このガーゴイル……床や壁程ではないにしても、かなり硬いはずだ。
武器の相性としては、スタンの大剣よりも、シアの大鎚の方がダメージを与えやすいかもな。
だが俺の方を早く片付けて、助けにいってやった方がいい。
目の前で誰かがやられるってのはご免だ。
向こう側の心配をしていると、目の前のガーゴイル達の雰囲気が変わる。
地上にいる内の二体の顔前に水の球ができはじめた。瞬く間に大きくなっていく。
そして俺に向かって二つの水弾が放たれる。
意識がまだスタンとシアの方が気になっていたために反応が遅れた。
反射的に両手を顔の前で交差し息を止める。
「うっ!」
手と腹部に鈍い痛みが走る。
水弾のダメージではない。飛翔していた奴等が急降下してぶつかって来たようだ。
なるほど、水弾で注意をひきつけてその間に攻撃か。
またガーゴイル達の水弾が俺を狙っている。
ほら、来いよ。
俺はその瞬間を待ち構えた。
先程と全く同じように二つの水弾が俺へ放たれる。
空中のガーゴイル二体も動いた。
だが今度は当るまで待つなんて事はしない。
両手に魔力集中。
自分から水弾に向かって全力で走る。
そして水弾の中を突き破って一気に距離をつめる。
さっきと全く同じ位置にいる。水弾を放ったガーゴイルがその先にいた。
「遅いんだよ! 砕け散れ!」
逃げようとしたガーゴイルの顔面目掛けて右拳を叩きつける。
当った部分から音を立てて亀裂が走る。
精悍な獅子の顔が崩れ、そしてただの残骸に成り果てた。
そして再び水弾を準備し始めているガーゴイルに向かう。
「どうした? 顔を洗うぐらいにしか使えないぞ」
水弾越しにガーゴイルの頭を掴む。
そのまま力を込めていく。
ガーゴイルの表情が変わるわけもないが、小刻みに振動し始めた。
そして振動が止んだ瞬間砕け散った。
「残念。遅かったな」
空中のガーゴイル二体が俺の方へ突っ込んできていた。
片方に狙いをしぼり、頭を抱え込むように受け止め、そのまま首の辺りを締め付ける。
石像が手足をばたばたと振り回し逃げ出そうとする姿が何とも不思議だ。
抵抗が止み、首の辺りから割れていく音が聞こえ、首から下が砕けて落ちた。
抱えていた頭部を放り投げる。
残りは二体。
距離を空けてこちらを見ている…気がする。
仲間を破壊されたから警戒しているのか?
まさかな。
スタンとシアの方はどうなった?
ちらりと見てみると、向こうも一体を片付けていた。
他に一体は左足の部分が砕けて無くなっていた。
「こいつ等、硬すぎて斬れねぇ!」
スタンはガーゴイルの硬さに苦戦中だ。
俺でも魔力をかなり込めてやっと……だからな。
あいつの大剣で斬るのは困難だろう。
「兄様! 体勢を崩すか、地面に叩き落してください。そうしてくれれば私が砕いていきますから!」
シアの言うように、スタンが相手の動きを止めて、大鎚でダメージを蓄積させていった方が良いと思う。
でも前へ出て自分で攻撃したがるあいつにそれができるかというと……。
「嫌だ! 俺がこの剣でぶった切ってやる!」
そしてまたガーゴイルに向かって突っ込んでいく。
おいおい、無理するなと言ったのに、全く効果がなかったようだ。
これは、こっちを早く片付けて向こうを手伝うのが良さそうだ。
そして俺の方のガーゴイル残り二体に意識を戻した時、こいつらが今までと違う攻撃方法をとろうとしていた。




