料理。
「お、美味しい!」
彼女の作ってくれたオムライスはまさに絶品だった。
程よい味付けのケチャップライスに、ふんわりとろける卵のバランスがなんとも言えない美味!
お店で食べるオムライスと遜色ない出来に感動しつつも、同じ女として妙な敗北感に包まれた時だった。
「今まで自分の料理を私以外の方に食べてもらったことなかったので心配だったんですけど、気に入っていただけたみたいで良かったです♪」
相変わらず眩しい笑顔にこの料理スキル、将来良いお嫁さんになるだろうな。
むしろ私が男なら是非嫁に欲しい!
それに彼女の手料理を食べた人間第一号が私なんて、にやにやが止まらない♪
その後は他愛ない会話を二人で楽しんだ。
その話の大部分は本の事やこの図書館についての事なのだが、新しいことを知れて私にとってはとても有意義な時間だった。
もっと話していたかったが、残念ながら”楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう”とはよく言ったものだ。
現在二時半。
ここに来てから約二時間が過ぎたところだ。
さすがに私は彼女が仕事に戻らなくていいのか心配になってきたので、そろそろ御暇することにした。
「そろそろ三時になりそうなので私帰りますね。まあ帰るといってもまだ図書館で本を読むんですけど」
話しながら忘れ物の確認をして立ち上がる。
「今日はお昼ご飯ご馳走様でした、とても美味しかったです!それに、こうやって二人だけでお話できて楽しかったです!」
小さくお辞儀をする私。
「こちらこそ、いきなりお昼に誘うなんて少し強引かなと思っていたんですけど、快く受けていただいてありがとうございました、嬉しかったです。もし高峰さんさえよければ、また一緒にお昼食べましょう♪」
「是非!」
私はすぐ返事を返した。
だって仲良くなりたいと思ってた人にいきなり食事に誘われて、しかも自宅で手料理なんて!
まあ家の場所には正直驚いたけど、それは良い意味での驚きだしさ。
またここで一緒にご飯食べれるかもしれないと思うだけで心がうきうきする♪
食事のお礼にはならないかもしれないけど、私は今出来る最高の笑顔を彼女に返した。
私達は書庫の入り口で別れた。
私はまた図書館の探索へ、彼女は仕事へ。
その道中一つ思いついたことがある、そう料理!
「今度御呼ばれした時のために少し料理勉強しようかな?」
初めて本以外に興味を持った(料理というより彼女(紫苑さん)に興味がある)のだが、どこから始めればいいんだろう?
母親に習うのがいいのか、それとも本で勉強する方がいいのか…。
少し迷った挙句、まずは本を見てみることにした。
いきなり難しいことはできないので、邪魔にならない程度に手伝えることを目標に初心者用の教本を探したところ、『料理~基本の基本、まずはここから~』という本を見つけ、手に取った。
開いてみると中には、包丁の種類や握り方から食材や調味料の基礎知識といった、まさに今の私にうってつけの内容が書かれていた。
「よし!」
やれるかどうかは別として、私としてはチャレンジすることに意味がある。
動機は若干不純だが、これも一つのきっかけと思えばなくもない。
そう自分に言い聞かせ、私はこの本を借りて帰った。