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彼女の家は図書館の中?

今回の話には実験的に『!』を使ってみました。

少しでも話の中で感情表現を分かりやすくできたらと思っての試みです。

好評のようでしたら今までの話数も順次直していきたいと思います。

「書庫?」

 お昼を一緒にと誘われたはずなのに、案内された扉の向こうは書庫だった。

 館内は飲食禁止のはずなのにどういうことだろう?

 まさかここで昼食!?

 きょろきょろと室内を見渡す私に「ここじゃなくてもう一つ奥の部屋ですよ」と声をかけてくれた。

 「ですよね」と私は苦笑いを浮かべながら返事をする。

 さすがにここじゃないよね。

 もし飲食物が本にかかったりしたら大変だし、食べこぼしなんかあったら虫や鼠が来て本をかじっちゃう可能性もあるし。

 私も本のある部屋には絶対食べ物や飲み物を持っていかない。

 ちなみに家には小さいながらも本専用の部屋があって、休日はそこに入り浸っている。

 自分の家で一番お気に入りのスペース。

 多分本専用の部屋があるなんて、この学校広しと言えど家ぐらいだろうな。

 二人で奥へ歩いていくとまた扉があった。

 先程の扉と似ているが、今度の扉には鍵がかかっているようで彼女はポケットからキーケースらしきものを取り出した。

 その時ちらっと見えたのだが結構な量の鍵を持っているようだ。

 ガチャっと鍵の開く音がした後「改めてどうぞ」と彼女が中へ招いてくれた。


 中に入るとそこは…玄関だった。

「玄関?」

 まさにデジャヴ。

 さっきと同じリアクションの私を後ろでクスクスと笑っている。

「えっと、これはどういうことなのでしょうか?なぜ書庫の奥に玄関が?」

 しかもレトロな図書館の概観には似つかわしくない可愛らしい玄関なのだ。

 いや、今は概観とのマッチングがどうとか以前の問題で、書庫の奥に玄関があるということに疑問を抱いている訳なのだが…。

 すると彼女は笑ったことを少し申し訳なさそうに「あっ、えっと、その、私の家です」と。

 えっ、家?

 書庫の奥っていうか図書館の中に?

 驚きと羨ましさが私の心の中で渦巻いている。

 いや、むしろ羨ましさの方が勝っている!

 だって家が図書館と繋がってるなんてまるで夢のようで、まさに私の夢を具現化した姿なんだもん!

 私の目はさぞキラキラしているであろう。

 そんな私を嬉しそうに彼女は眺めているようだった。


 家の中に入ったのは玄関を開けてくれてから約5分程経った後。

 二人で5分も玄関先で何をしていたかというと、彼女いわく私に声をかけずらかったので黙って見ていたとのこと。

 見られていることなんぞ知らない私は一人妄想の中。

「本当に申し訳ない!!」

 さっきから私は謝り続けている。

 だってそうでしょ?

 玄関の前で自分の世界に入っちゃう人なんて超迷惑!

 それに私が妄想の世界から出てくるのを黙って一緒に待っていてくれるなんて。

 しかも初対面の私をだよ!?

 実は妖精と同時に天使なのかもしれない、と相変わらずアホな妄想全開で謝り続ける私を「気にしないで下さい」と優しくなだめる彼女。

 その姿もまた可愛い。

 そんなやりとりをしていると、私の頭に一つ大事な事が浮かび上がった。

『自己紹介してないような?…ていうか間違いなくしてないし!!』

 ここに来るまで気づかないなんて今日の私はどうかしている。

「あのっ自己紹介が遅れましたが、私4月からこの学校に入学しました高峰時と言います、宜しくお願いします」

 謝っていた勢いで約90度の角度のお辞儀で自己紹介。

 きっと思い返すと恥ずかしいのだろうが、当の本人は至って真面目なのだから逆に笑える。

 心の物置に仕舞う思い出が一つ増えてしまった。

「えっとえっと」

 彼女は相変わらずわたわたしている。

 その姿を見て少し私は落ち着けた。

「あの、お名前伺っても宜しいですか?」

 私が落ち着きを取り戻したことで彼女も少し冷静になれたようだ。

 一度深呼吸をしてから、彼女は口を開く。

「私は紫苑光(しおんひかる)と申します」

 先ほどの慌てた様子からは一変した優しく聞き取りやすい口調と綺麗なお辞儀は、どこかのお金持ちのお嬢様を想像させる。

 不覚にもその姿に同性の私がドキドキしてしまった。

「ところで高峰さん、お昼は何が食べたいですか?私料理得意なんで何でもリクエストしてくださいね♪」

 顔を上げた彼女(紫苑さん)の表情は、名乗る前の可愛らしい表情に戻っていた。

 未だに胸のドキドキが止まらない。

 それを悟られないよう私は気丈に振舞った。

「私は食べさせていただけるなら何でも。メニューは紫苑さんにお任せします」

「ん~そうですねえ、それじゃあオムライスとかどうですか?私得意なんです!」

 紫苑さんのキラキラした表情に私も嬉しくなってきて、「じゃあ是非オムライスで!」と、今出来る満面の笑みで返事をした!

 彼女の笑顔を見ていたらドキドキを悟られようが悟られまいがそんなことはどうでもよくなっていた。

 それよりむしろ苗字で呼ばれたから私も普通に苗字で呼んだけど良かったかな?などとこっちの方が気になっていた。

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