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重いしとっても恥ずかしい

 次の日は朝から忙しかった。

 今日、教科書や体操服など学校生活に必要なものを全て購入するのだが、これがかなりの量なのだ。

 どう考えても本ばかり読んでいる私が持てる荷物の量を超えている。

 特に教科書、重すぎ。

 自分の読みたい本ならともかく、こんな沢山の教科書を一度に運ぶなんて馬鹿げてる。

 親が来てくれる子はいいが、うちは両親共働きなので来てくれないし。

 せめて着払いの郵送にしてくれ。

 この荷物を帰りに歩いて持って帰らなきゃいけないと思うだけで私の心は憂鬱だった。

 それでも明日までは午前中で学校が終わるため図書館に入り浸れる。

 そう思えば荷物が多いぐらい我慢できるというものよ。

 気持ちは上がっても残念ながら荷物の重さは変わらないが、こういう時でこそ起こるラッキーもある。

 私の様子がふらふらしているように見えたのだろう。

 加藤先生に「大丈夫?」と声をかけられた。

 心の中では『今日も綺麗だな』と思いながらも、「心配していただいてありがとうございます。何とか大丈夫です」と笑顔で返す。

 「無理はしないようにね」と言って先生は去っていったが、本当に先生は美しい。

 女の私が嫉妬するぐらいなのだから、あれがまさに絶世の美女なのだろう。

 そんな美人を毎日拝めるのだから、この学校様様だね。

 でもあれだけ綺麗だと逆に男は近寄りがたいかもね。

 お近づきになれるってことなら女で良かったって思うけどさ、できれば私もああなりたいよね。

 今更無理だけど。


 学校が終わると、私は重い荷物を片手に真っ直ぐ図書館へ向かったのだが、途中でお昼ご飯のことを思い出した。

 もちろんこの学校には学食があるが今日はやっているのだろうか?

 そもそもやっていたとしても、図書館とは正反対に位置するため今更行くのは正直めんどくさい。

 どうしよう…。

 まあお昼は食べなくてもいっか、今はお腹空いてないし。

 お腹が減った時に考えればいいさ。

 今は早く本読みたいし、昨日の人にも会いたいし。

 体には良くないかもしれないけどさ、たまには良いよね?

 私は今日のお昼を抜くことにした。


 図書館に着いた。

 昨日と同じで今日も人はまばらだ。

 学校が始まってまだ日が浅いし、半日で終わるから皆他のところに遊びに行ってるのだろう。

 人が少ないと私は嬉しいけどね。

 今日も昨日の続きで探索がメイン。

 その中であの人に会えればラッキーって感じで、あくまでも私にとっては本に関することが一番なのだ。

 重い荷物を持ちながら昨日の最終地点に向けて歩いている。

 ちなみに生徒一人一人にロッカーが与えられるらしいのだが、まだ無いので荷物は持って移動。

 一度帰る事も検討したが、一度帰って戻るのはさすがに嫌だ。

 いくら近いとはいえ、家に帰ったら家で読みたい本が私を待っている。

 その子達を尻目に図書館に行くことは多分できない。

 なので重くても我慢。

 そう思いながら歩いていると見つけてしまった。

 昨日の妖精さんを。

 彼女は二階の本棚の整理をしているようだった。

 爪先立ちで届くか届かないかの棚に本を仕舞っている。

 危なっかしいのだが、それがまたとても可愛い。

 しかしもし本が落ちたら危ないので、私は手に持っていた荷物を近くに置くと、彼女の元に近づき仕舞おうとしていた本を軽く押して入れてあげた。

 すると彼女は、いきなり私の手が現れたことに驚いてこちらを向いた。

『あれ、驚かしちゃったかな?』

 危なかったとはいえいきなり手を出したのはまずかったかもしれない。

 昨日の事もあるし私が先に口を開いた。

「いきなりごめんなさい。でも本が落ちたら危ないと思ったのでつい…」

 彼女はその言葉を聞くと即座に頭を下げて謝ってきた。

「ご、ご迷惑かけてどうもすいません」

「いや、そんな謝らなくても。それに勝手に手を出したのは私ですから気にしないで下さい」

 あまりに彼女が勢いよく謝るもんだから少し驚いた。

 私ってそんなに怖く見えたのだろうか?

 もしそうなら結構ショックだ…。

 多分今の気持ちが顔に出ていたのだろう。

 気落ちしている私を見て今度は逆に彼女が励ましてきた。

「でも手伝っていただいてありがとうございました、とても助かりました」

 そう言う彼女の笑顔が可愛いものだから、気落ちした気持ちはすぐに消えた。

 我ながら単純。

「いえそんな。さっきも言いましたけど勝手にやった事なんで本当に気にしないで下さい」

 そう言って私も笑顔を返す。

「それから今日会ったら言おうと思っていたんですけど、昨日は本当妖精とか訳わからない事言ってすいませんでした」

 今度は私が頭を下げて謝る。

 するとなぜか彼女も「いえそんなお気になさらず」と言いながら私に頭を下げている。

 互いにペコペコ謝るこの様子を第三者が見たら何と言うのだろう?

 むしろ若干笑える絵かな?

 するとここで驚きの出来事が起こった。


「ぐうー」


 なんと私のお腹が鳴ったのだ。

 しかもそこそこ大きな音で図書館内に響き渡った。

 その後一瞬の静寂の(のち)、私の顔は赤くなりそれを隠すように両手で顔を隠してしゃがみこむ。

 な、なんと恥ずかしいことを。

 相手は女性とはいえ、ほぼ初対面の人の前で女子がお腹を鳴らすなんて。

 小さくしゃがみこむ私に彼女は言った。

「あの、少し遅いですけどもし宜しかったらお昼一緒にどうですか?」

 そう言う彼女を見上げる私。

 可愛いだけでなく優しいなんて反則だろ。

 でも嬉しい、仲良くなれればいいなと思っていたから。

 私は二つ返事で了承し彼女について行く。

 しかし正直この展開は予想していなかったなあ。

 お昼を抜いたことがこうも良い方向に転ぶとは。

 小説の主人公は基本何でも上手くいくが、こんな気持ちなんだろうか?

 ふわっとした気持ちのまま彼女について行くと小さな扉の前に着いた。

「少し散らかっていますがどうぞ」

 扉を開けてくれたその部屋の中は…。

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