表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

初登校。

こちらは久々の投稿です。

 初めての登校日。

 高校までは徒歩で約20分。

 自分で選んどいてなんだけど、素晴らしく恵まれているね。

 近くに他の高校がないせいか、朝この辺の電車はうちの高校の制服着たやつばっかり。

 一度だけ体験したことがあるけど、次から次へと乗ってくるせいで一つ前の駅にもなるとまるでお祭り状態だった。

「苦しい…」

 乗った感想はこの一言に尽きる。

 これが毎日続くと思ったら恐ろしくなったので、急遽徒歩に変更。

 電車通学はちょっとした憧れだったけど、あれは無理だね。

 本潰れるし。


 学校へは途中、桜並木を歩いていく。

 距離にして100メートルくらいだろうか。

 この辺では有名で、この時期だけは桜を見に来る人で大賑わい。

「やっぱ凄いな」

 私も一応この辺に住んでいる者として知識だけはあった。

 だけどわざわざ桜を見に出掛けるような性格じゃないから実際見るのは初めてだった。


 これから通うことになる私立雁ヶ音(かりがね)高等学校は、そんな桜並木を抜けた小高い丘の上に建っている女子高である。

 広大な敷地内には図書館だけでなく、スポーツ施設や学食専用の建物など、ここで生活できるのではないかと思わせるような設備が沢山ある。

 そしてこの学校を語る上で忘れてはいけないのが学生寮。

 希望者には一人一部屋が与えられ、各部屋風呂トイレ別で冷暖房完備。

 学生寮というには豪華過ぎるこのクオリティは、この学校の人気の一つでもある。

 実際中にはこの寮目当ての入学者もいるらしい。

 徒歩圏内の私にはあんまり関係ないけどね。

 そんなこんなであっという間に学校に着くわけ。

 近いって本当幸せ。


 今日は入学式と、クラスメイトとの顔合わせだけで終わりだから、その後図書館行けるかな?

 新入生だから施設案内の前に勝手に行ったら怒られるかも。

 でも行くけどね。

 私がこの日をどんなに待ちわびたか。

 春休みに行ったら学生証がまだ発行されてないとか言って、結局中に入れてくれなかったし。

 どうせ合格してるんだから図書館ぐらい良いじゃんね。

 だから今日は絶対に図書館に行く。

 誰がなんと言おうと行く。

 朝そう決めて家を出たんだから。


 入学式は予定通り終わって、今は新しいクラスにいる。

 既に頭の中は図書館のことでいっぱい。

 多分ぼけっとしてたんだろうね。

 背後の気配に気づかなかった。

「やっほ」

「いでっ」

 いきなり叩かれたせいでオジサンみたいな声出ちゃったよ。

 振り向くと見知った顔がニヤニヤしてる。

「何ぼけっとしてんのよ。暗い顔してると幸福が逃げてくぞ」

「ほっとけ」

 彼女は小学校からの友人で香坂千鶴 (こうさかちづる )

 砕けた会話ができる唯一の友達というか、こいつは変わり者。

 だって自分は殆ど本読まないくせに私にくっついてくるんだから。

 共通点なんか一つもないのに仲が良いなんて不思議だね。

 でもそこが逆に良いのかもしれないれどね。

「時はさ、部活とかどうすんの?」

「私がそんなめんどくさい事するわけないでしょ。本読む時間が減るじゃん」

「だよね。じゃあこの後図書館行くんでしょ?」

「まあね」

 そんな他愛のない話をしていると先生が来た。

 女性の先生なんだけど、どっかで見たことあるような…。

 それにしてもスレンダーな体系に合った短めの髪、顔も整っていて可愛いというより凄い綺麗な人。

「び、美人だ」

 保健医でもないのになぜか白衣を着ている。

 趣味かな?

「私がこのクラスを受け持つことになりました加藤律子(かとうりつこ)と言います。この学校の担任は三年間変わらないので、三年間よろしく」

 凛々しい声での宣言に、男子から黄色い歓声が上がった。

 まあこの先生に三年間受け持ってもらえるなら、その気持ちもわからんでもない。

 私も男子ならあの中の一人だったと思うしね。

「今後の詳しい日程などは明日配るので、今日はこれでお終いになります。では皆さん起立して下さい」

 皆が一斉に立ち上がり挨拶を済ませ、各々ばらばらに散っていく。

 私にとって最大で最高の時間が今始まった。

 浮かれた足を止めることはできない。

「時、私さ―――」

 呼び止めようとした千鶴を軽く無視して図書館に全力疾走する私だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ