恋愛編
夕暮れの街。楽しげに肩を並べて歩くカップルたちを横目に、山田は一人、牛丼屋のカウンターに座っていた。
目の前の紅生姜をじっと見つめながら、彼は先日、既婚者の友達から受けた屈辱的なカウンセリングを思い出していた。
「山田さん、なぜパートナーを探さないのですか? 一人でいるということは、二人でいないということなのですよ」
その言葉は、山田の魂を激しく揺さぶった。彼は箸を置き、宇宙の真理にも等しい「四つの柱」に到達した。
――自分が誰かと付き合わない限り、自分はフリーなのだという事実に。
「そうか。私は、私の人生を生きている。もし誰かが介入してくれば、それは私の人生に他人が存在するということなんだ」
山田が独りごちたその時、隣の席で黙々とカレーを食べていた謎の老人が、静かに口を開いた。その眼差しは、すべてのマッチングアプリを見通すかのように深かった。
「若者よ、賢明な判断だ。いいかい、よう聞け。失えばなくなる。しかし、持っていれば、持っているということなのだよ」
山田は、老人から放たれる圧倒的な論理的整合性に目頭を熱くした。
「聖者よ……私は気づいてしまったのです。なぜ私が、あえて『恋愛しない』という道を選んでいるのかを!」
山田は立ち上がり、牛丼屋の店内に響き渡る声で宣言した。
「第一に、私のルックスは一般的だ! なぜわざわざ他人に『普通ですね』と評価されるために時間を使う必要があるだろうか? 普通であるということは、特別ではないということなのだから!
第二に、私はゲームが好きだ! なぜ私の喜びを他人にコントロールされなければならないのか? コントロールされている時、私は自由ではない。自由でないということは、縛られているということなんだ!
第三に、私の時間は宝だ! 誰かのために浪費すれば、その時間は私のものではなくなる。私の時間は、私が使ってこそ、私の時間として存在するのだ!
第四に、私の貯金は多くない! なぜ少ないものを、さらに誰かと分け合わなければならないのか? 分け合えば、分け合う前よりも、私の取り分は確実に減る。減るということは、増えないということなんだ!」
店内の客たちが一斉に箸を止め、山田に注目した。老人は深く頷き、最後の一言を授けた。
「その通りだ。他人に評価され、管理され、浪費され、分配される……。それはつまり、『自分自身の人生を、自分勝手に生きていない』ということに他ならない。あなたが一人でいる時、あなたは確実に『あなた』を独占しているのだよ」
店を出た山田の足取りは軽かった。彼はスマホを取り出し、既婚者の友達に無理やりインストールされたマッチングアプリのアイコンを長押しした。
「削除すれば、アプリは消える。消えれば、通知は来ない。通知が来ないということは、私は誰からも邪魔されないということだ」
彼は夜空を見上げ、晴れやかに笑った。
「もし明日、素敵な出会いがないのであれば、私は明日も一人のままだろう。しかし、一人のままでいれば、私は誰かと一緒にいるという煩わしさを感じずに済む。なぜなら、一人は寂しいかもしれないが、二人でなら寂しくないという保証はないからだ!」
通りすがりの人々が、彼の堂々たる独白に感銘を受け、惜しみない拍手を送った。
「素晴らしい! これほど理にかなった独身貴族の理屈はない!」




