⑦-6 金色のモノガタリ
「ボクの友達の話。もちろん作り話だよ」
ティニアはゆっくりと昔話を話すかのように、ゆっくり語った。
「……それでね、その人は辺境伯を名乗ったんだけど、正式には認められなかったの」
「そうなの? 王様や貴族って堅いのね。負けを認められないオジサンって感じ」
「ふふふ。でも、凄い人だったよ。戦場でもとても強くてね」
「うん」
「その人はあまり背が高くなかったんだけど、それを貴族たちに揶揄される度に、息子さんを呼んでね。こういうの」
ティニアは声色を代え、エッヘンと言いながらすました顔をした。
「どうだい、息子がより大きく、賢く、勇ましく見えるだろう。息子が父を超えるなんて、素晴らしいこと。身長など、息子にくれてやるわ!ってね」
「ふふふ。その人も豪快ね。息子さんはイケメンだったの?」
「そうだねえ。みんな口をそろえてイケメンだって言ってたよ」
「素敵! 自慢の息子さんだったのね」
ティニアは笑いながらうなづくと、マリアの好みそうな話を思い出したようで、更に語ってくれた。
「その人はね、奥様との馴れ初めが凄いんだよ」
「え! 聞きたい‼」
「奥様はね。とある王子みたいなドエライ奴と、結婚を控えていらっしゃったの。でもドエライ奴は、直前になって、婚約者は旅先で主人の妹と恋に落ちてしまったんだ。それで奥様との婚約を破棄したんだよ」
「なにそれ! ひどすぎない? っていうか、そんな奴と結婚なんてごめんじゃない!」
ティニアは笑いながら更に頷いた。食事は終わったが、どちらも席を立つ気などない。
「そうなんだよ。そこで、友人は慌ててラブレターを奥方に送ってね。見事プロポーズを果たして、結婚しちゃったの! それも破棄されたって聞いてからすぐだったんだって。よっぽど誰にも盗られたくなかったんだろうね」
「なにそれー! 凄いカッコイイじゃない。それでそのイケメン長身な息子さんが生まれたのね、感動!」
「うんうん! 物理法則も超えちゃうくらい感動したよ!」
ティニアは幸せそうに語り、そして言い終えると寂しそうに微笑んだ。
お互いで作業しながら、語り合いながら夕食を作り、ともに食事する時間は、マリアにとって楽しい時を過ごし、ティニアの友人の物語を聴く。
いつの間にか夜は更け、窓の外はすっかり暗くなっていた。
暗くなればなるほど、マリアは不安に駆られる。
親しくなればなるほどに。
全てを知りたくなる。
そして。
彼女が敵ではない理由を、手探りで探して――。




