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異界で、犬と。  作者: 夏谷崚
ケトノレーベ編
29/30

ケトノレーベの手記

 騎士団へ直接乗り込みたい所だけどやはりダメみたい、マリニカの魔法が強力すぎる。幸い奴は老いたままだし、あとは死を待つだけ。老化に抵抗しないなんて、もったいない。


 鐘の音に乗せて騎士団員の拉致に成功。あっけないものね。ただ想定外なのは、見たことのない魔物が一匹くっついてきたことだけかしら。騎士団の新たな魔法? 技術? 解明を急ぐ。


 騎士団員に命令を下す。村人を連行することに成功。やはり「騎士団」の名は絶大。あんなにすぐ連れてこられるなんて。私一人でもいいけど、やっぱり楽だわ、おかげで準備が整った。それにあの純粋に頑張ってる姿…すごく可愛い…自分がやってることが正しいと思い込んでいるの…! 早くネタバラシをして絶望に堕ちる顔を見たい……! けど我慢……機が熟すのを待ちましょう。


 村人を地下の檻に収容。男と女に分け、男はここの拡張工事に従事させて、老人と女には薬を飲ませてあげようかしら。

 子供はそうね…美味しくいただいてしまいましょう。ふふふ、子供の肉は美容にいいもんね。


 子供の肉の在庫はまだあったから、生かしておく。

 食堂で偶然騎士団の子達に遭遇。彼らも食べたの、おいしかったって。実際本当に美味しかった。やっぱり若いお肉はいいわ、筋肉が少ないから柔らかくってね。

 でも男ってほんと単純。

 ペックとやらが私をすごい警戒していた。まさか気づいている?


 団員に村人の健康チェックをさせる、健康な者をいくつか見繕っておく。


 材料の移動や薬の準備を手伝ってもらう。あの子達なかなか優秀ね。仕事は的確で早い。いつまでも飼っていたい。


 薬の投与を開始。老人の男女五名、三十代の男一名、三十代の女四名、二十代の男一名、二十代の女二名、十代の女一名、男児二名、女児三名、の計二十名の経過を観察。


 開始一時間、被験体全員に変化なし。即効性はないか。でも即時に変態して制御が効かないのも問題だしまずはよし。


 投薬開始から五時間、被験体の頭髪の一部脱毛を確認。男の老人にのみ皮膚の硬化の症状が発現。認知機能は正常。

 「さっきの薬本当に大丈夫なんですか?」って女が聞いてきたけど、大丈夫なわけないでしょ。今からあなたたちは魔人になるのだから。でも私がちゃんと飼ってあげるから大丈夫ではあるわね。

 

 七時間、老人らの目に黄疸を確認。身体が動かなくなってきたらしい。

 男女ともに皮膚の硬化を確認。老人のみ症状の進行が早いのはなぜ? 老人のみ部屋を移動。

 移動の際女の子に袖を引っ張られて「どこに行くの?」って聞かれた、「彼らは病気が大変だから、別のお部屋よ」と答えると、泣き出す。ほんとうるさい。老人が硬く黒くなった指で優しく頬を撫でていたわ。「すぐ治るさ。騎士団にいるのだから」だって。笑っちゃう。

 

 十時間、老人の皮膚の硬化の進行度は著しい。両腕の変形、木の枝ように見える。対話が困難になってきたわ。食事も拒否。老人の一名が死亡。

 若い男女がついに硬化を開始。頭髪の半分が抜け落ちる。流石に気がついたみたい。

 子供に未だ変化は見られず。年齢が若いほど症状は出ないのかしら。


 十五時間、老人らが咆哮をあげ、暴れ始める。壁や床を破壊。凄まじい力だわ。老人でこれなら若者はさらに強力ね。今度村に送りつけて腕試しと行きましょう。

 若者の頭部に腫瘍を確認。痛みはないとのこと。年齢によって症状の変化? 老人が適性か? 認知機能に異常なし。それにしても醜い顔ね。ふふ、今度旦那さんと合わせてあげましょう。

 子供についに変化あり。身体の一部に硬化が発現。発生の部位はそれぞれのよう。

 女の子が母親に抱きついていた。優しいのね母親は、「大丈夫大丈夫」って。そんなはずないのに、子供を励まして。これが愛情? くだらない。


 十八時間、三時間暴れ続けた老人がついに静まり返る。床にうずくまり、完全に停止。息はある。変態への準備か。

 若年の状態変わらず。


 例の女の子がずーっと泣き喚いていて耳障り。やっぱり大人しい子が一番だわ、だって反抗しないもの。


 十九時間、老人は静止のまま。


 二十時間、老人は未だ静止。死んだ?


 二十一時間、老人が動き始め完全に魔人化に成功。身体は木のように硬化しほとんど動かない、体長は大体二メートルくらい? 私より少し大きい。腕は枝の触手と化して自在に伸び縮みする。隙間や頭部が、赤く光るのが二体、青く光るのが一体、緑に光るのが一体。属性によって変化? 魔力の流れかしらん?

 しかし自我はないの? 私をみても襲いかかってこなかったけれど。

 試しに壁を殴れと命じる。すると腕を振りかぶった。壁のヒビもすごい。自我はないけれど、言うことを聞く…傑作ね!

 これより赤いのを一体、転移魔法で近くの村に落として破壊力を試す。騎士団の子らに倒してもらいましょう。後で感想を聞いてみる。これ倒せるかな? ふふふ、楽しみ。

 魔人の名前は、デクビトとでも呼びましょう。


 二十四時間、若者の腫瘍が肥大化してきた。それに伴い言語機能が阻害され始める。身体が麻痺しはじめているとの症状を訴える者も。

 子供は硬化が進行。発熱の症状あり。やはり変化はあまり見られない。


 二十八時間、三十代の人間が沈黙に入る。そろそろ完成ね。二十代ももうそろそろか。


 例の母親を旦那に会わせる。

 最初女は「見…ない…で…」と言って顔を隠していたのに、旦那に「どんな見た目になっても、俺は君を愛している。顔を見せて」なんて言われると、顔を曝け出す。むかついた。それから抱擁の中ずーっと泣いていたのが耳障り。

 「愛している」

 ってずーっと言い合ってて、吐き気がした。

 だから引き離して無理矢理男の唇を奪ってやった。女は泣きじゃぐりながら、必死に黒い手で私を引き離そうとしていたけど、力が入らないのかスルスル滑ってた。無様ね。よくわからない唸り声をあげながらずーっと泣いて、

 その後男が「なんですか…この醜い怪物は……」って言ったのも痛快! 身も心も私に奪われて…ああ…キュンキュンしちゃった…!

 顔が変形していたけど、さらに歪んでいたのが目に見えて笑っちゃった。彼女の最後の記憶に残ってよかった…

 女の頭は引き裂け、絶叫しながら無事魔人化する。


 三十時間、子供の容体が急変。ある時間を境に著しく硬化が進行。すごく笑ってる。ただ動きが衰えることがない。老人や大人は鈍るのに、寧ろ運動機能が発達している気がする。ふふふ、やっぱり若いっていいな。


 三十九時間、ついに子供達が完全体になる。子供の個体は妙に自由度が高い。小さい身体で檻の中走り回って、私の命令はそんなに聞いてくれないし。お互いを攻撃して笑い合ってるし。やっぱり子供は無邪気で元気なのが一番よ。大人のデクビトなんかよりずーっと可愛らしい!

 ただ一応眠らせておく。


 嬉しい報告、騎士団の子たちが避難していた村人をここへ連れてきてくれたこと。ああ、なんていい子たちなの…! 壊すのが勿体無いくらい利用価値がある。

 デクビトの記録。

 伸縮自在の体、攻撃速度と破壊力の両立、火に耐性あり(今回赤だったから火に強い?)、驚異的な再生力、ただ核の破壊で機能停止と騎士団の子の報告。

 村の八割は崩壊、触手を伸ばし人間を攻撃、と村人の報告。

 初回にして素晴らしい!! あの子たちもかなり疲弊していたし、有用性は高いと思われる。老人ベースと若者ベースの違いがますます気になってきた!

 デクビトの量産を急ぐ。


 新しく入った村人たちに投薬を開始。今回は全員に投薬。


 騎士団の子達が体調不良を訴えてた。まあ食べ慣れてないご飯をいっぱい食べさせちゃったし、それもそうか。

 少し吐いてしまった子もいたって。もったいない。貴重な肉なのにね、また連れてきてもらわないと。

 でもボロボロになりながらも頑張ってる姿はちょっとよかった。すごく哀れで。


 ここの工事がそろそろ終わりそう。地道に村人を集めて来たけど、ついにか。最高の仕上げになった。魔王軍の前線基地としては十分すぎる。早く魔王様にもお披露目したい!

 もっと早く騎士団員捕まえてくればよかったな。ああ、マリニカを意識しすぎた。


 ペックが脱走。魔物に催眠がかからなかったなんてありえない! 私の元から逃げ出したということが一番の問題。なんという屈辱!! 絶対に許さない! あの子達が檻にいたけどどうでもいい。


 結局見つからなかった。もし見つけたら必ず私の物にしてやる。

お読みいただきありがとうございます!

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