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異界で、犬と。  作者: 夏谷崚
スカルクラッシャー編
13/30

仮面

7/18 一部修正

「最後の仕事?」


「ええ、あなたたちがスカルクラッシャーを仕留めるのよ。大丈夫、サポートはするから」


「どうしてですか?」


 ナオが不思議そうな顔をする。


「だってあなたたちが引き付けていた敵を我々が横取りしちゃ悪いからね。それに自信につながりそうだからって」


 その間スカルクラッシャーはクインクと戦いを繰り広げていた。激しい金属音と地面の割れる音が響く。


「時間がないわ。団長達が隙を作ってくれるから、その内に九人全員で攻撃しなさい」


 そう言い残し女は駆け出した。


「やるしかねーな」


 イズミが自分を奮起させるように顔をぱちぱち叩く。


「マス、ヒトハ、リオの為にも…!」


 ミロカは剣を強く握った。


「そうだね、僕たちで決めないと!」


「お!晴樹キュンやる気だね〜。てかさっきどさくさに紛れてなっちゃんのこと呼び捨てにしてなかった〜?」


 ナオがここぞとばかりに晴樹をイジる。


「は!?今関係ないでしょ!」


 晴樹が顔を真っ赤にし誤魔化そうとする。


「わははは!終わったらもっと話をしようじゃないか!」

ナオはそうして準備にかかる。


「ったくあいつはこんな時だってのに…でも晴樹、呼び捨てできたじゃん」


「ようやく距離が縮まったね」


 ジユンも応戦する。


「二人まで!」


 晴樹はどんだけこいつらは恋愛脳なんだと呆れた。そんな話をよそにシュージは黙々と準備を進めていた。


「おいもう行くぞ、イズミ、ジユン──晴樹…」


「え…?今、晴樹って…」


「なんだよ、足引っ張んじゃねーぞ!」


 シュージは照れくささを隠すように強い口調で突き放す。


「うん!」


 晴樹は思わず笑みが溢れた。


──その間スカルクラッシャーとクインクの戦いは熾烈を極めていた。


 スカルクラッシャーはその右腕で重々しく殴りかかる。

 クインクは左手の盾で顔色ひとつ変えずに攻撃を受ける。

 異形がその反動で巨体がぐらついた瞬間、クインクは高く飛び上がった。


 空中で構えた剣が唸り、異形の右肩の肉を深く削り取る。

 他の騎士の魔法が爆ぜ、目元が焼かれた。

 着地とともに異形の右足の腱を切り裂き、その巨体がゆっくりと崩れた。

 地面から土煙が舞い、深く振動させる。


「クソォ!クインク・ホーリー!全員まとめて苦しめェ!!!ノウシンンンンン!!!」


「ぐッ……ああ…グアアアアアアアア!」


 クインクは力を失い、剣が滑り落ち膝をつく、その周りの兵士たちも苦しみ始める。


「うグうっ…クハハハハハハハハハ!!ノウシンこそ最強魔法よ!この痛みに耐えられるものは、誰一人としていない!!あの魔王様でも!」


 兵士達が悶絶する中、異形が体勢を直す。その刹那、


「──氷槍炎魔(ヒョウソウエンマ)!」


 氷の槍が炎を絡めて飛来する。


「何!?ガキの魔法!?しまった!」


 槍はスカルクラッシャーの腹に深く突き刺さり、その身をえぐる。


「晴樹とジユンの言った通りだ!」



「──狙うならノウシンを発動した後?」


 イズミが頓狂な声をあげる。


「うん。奴がシュージの頭を砕こうとした時、苦しそうに武器を拾いあげたんだ。足取りもなんか重かったような気がする。多分だけど、ノウシンは自分も含めてかかるんだと思う」


 晴樹は考察したことを話した。


「あるかもしれない。しかもあれは相当な魔力を使うらしい。ノウシンが発動している最中は他の魔法を使うことができなくなる。そこが奴の隙だ」


「どうしてそう思う?」


「俺が妖蛇と戦っていた時、急に消えたんだ。そして消えた後にみんなの悲鳴が聞こえた。晴樹の予想が正しければ、そこで間違いなくでかい一撃を喰らわせられるはずだ」


「なるほどね」



──スカルクラッシャーは両手でその槍を引き抜こうとするが、回転が掴むことを困難にする。


「クソォ…!!!」


 しかしその槍は肉体を貫くには至らなかった。その間ナオが駆け出す。


「はああああああ!」


 炎を纏った刃が左足を斬り裂き、血飛沫が舞う。


「──ワン!」


 それに呼応するようにペックが水弾を飛ばし、その巨体を転ばすのを手伝う。地面に背中から叩きつけられ、その衝突で仮面に少しヒビが入った。


冥牙(メイガ)!」


 ユメノが呟くと黒い牙が異形の右腕を喰らい、硬い表面をバリバリと音を立てながら砕く。


「ミロカ、晴樹、ナツキちゃん!今がチャンスだ!」


 イズミが叫ぶと同時に三人が走り出し、ミロカはスカルクラッシャーの頭を力一杯突き刺す。


「──まずこれは!!!…マスの分!!!」


 硬質な仮面が鈍く弾く。だがヒビが一本走る。


「そしてこれは…ヒトハの分ッッ!!」


 歯を食いしばりながらまた頭に突き刺す。仮面のヒビが広がる。


「そしてこれが…!!リオの分だああああああ!!!!!」


 今までの感情を爆発させるように、自分の涙にも気が付かず、グリップを握り締め顔を突く。


──バキィィィィッ!


 仮面は粉砕し、破片は宙を舞う。仮面の下には人間のような顔があった。その目は虚で冷め切っていた。


「今だ!」


 晴樹とナツキは駆け出す。その身体はジユンとクレハの強化魔法によって光を帯びていた。二人は剣に魔力を集中させる。


「いけええええええええええええ!」



──皆の思いが一つになる!



ガキイィィィン!──二人の手には確たる手応えがあった。


 スカルクラッシャーは最後の力を振り絞り腕を動かそうとしたが、身体の動かし方を忘れたように力は伝わらなかった。


「ま……だ………お、わ…りじゃ…」


 まだ死なないと自分に言い聞かせるように弱く呟くが、無自覚に意識は遠のいていく。

 すると突如として隙間から大量の黒い魔力が放出され突風が襲う。黒い霧が二人を隠して、風は悲鳴をあげ、木の葉が舞い上がり、土が視界を塞ぐ。


「総員!直ちに警戒体制を取れ!」


 クインクは冷静に叫んだ。


 風が止むと砂埃から人影が見えた。

 皆剣を構え、注視する。


 出てきたのは晴樹とナツキであった。


「みなさん!やりました!!!我々はスカルクラッシャーを倒しました!」


 晴樹が高らかに宣言すると、一団は揃って喜びの声を上げた。


 晴樹とナツキはハイタッチし、ペックが晴樹に飛びつく。


 イズミとシュージは互いの手を強く握り合い、ナオはクレハに抱きつき、クレハはミロカとユメノを抱きしめる。


 ジユンはほっと一息ついてから、五班のみんなと握手を交わす。そんな光景をクインクは安堵の表情を浮かべながら見守るのであった。

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