第6話 ユリアナ嬢の初夏。
学院生活が落ち着いた頃、6月から選択科目が始まった。
家庭科と剣術。
もちろん家庭科を取りましたわ。男子もちらほらいます。
調理実習には指定の白いエプロン。フリルが付いて可愛い。
クッキーとか、簡単なケーキを焼くぐらいですけどね。
いつもの自称お友達ももれなくいます。あのエリザベト様も。
あら?
アウラは?
あの子、調理実習室がわからなかったのかしら?大丈夫かしら?
ざわざわと、みんな窓によって剣術の授業が始まるのを見ている。
ちらっとみると…いたわ!あの黒い三つ編み、間違いない!
剣術を取ったの?まじですか?
アウラの他に二人。ああ、辺境伯のとこのフローラ様と西の侯爵家のロッタ様は納得だけど…お二人共、自領に軍をお持ちだから。
あの子は?
大丈夫なの?
わかってるのかしら?
田舎で子供相手に棒切れ振り回すのとは違うのよ???
そわそわしながら見ていたら、難なく女の子3人で勝ち上がっていた。
へえーーー。
後で、男子生徒に囲まれたとき、あの子のことを聞いてみた。
「え?あの子、ユリアナちゃんの友達?あの三つ編み一本の子でしょ?」
「いえ…田舎から出てきたばかりで、世間知らずなのに大丈夫なのカナ?と思ってね?」
「いやあ、優しいねえ、ユリアナちゃん。今回は女子だからと思って油断しちゃって。本気出せないしねえ。今度は頑張るから見ててね?」
「僕のことも見てよね。」
「俺も今度は本気出すよ!」
はいはい。
夏休みはいつも通り実家の別荘に行く予定。毎年の事。
家族が揃ったり、揃わなかったりする。これも毎年の事。
アウラが国元に帰らないと言っていたから、誘ってみようかしら?
あの子も退屈だろうし。そうよね?誘ってあげたほうが喜ぶわよね?
「夏休みだけど、どこにも行く当てが無かったら、うちの別荘に来てもよくてよ?」
「あーーーーユリアナ様、実はエリザベト様の別荘に誘ってもらっていて。折角のお誘いですが、すみません。」
「あ、あら、そう?」
ま…いいですけれど。あの子がいたら、少し退屈しなくていいかと思っただけですし。