第20話 ユリアナ嬢の雪国生活。
ブーツはアウラのおばあさまが貸してくださった。
中が毛皮になっていて、凄く暖かい。ソールにはサメの皮が張ってあるらしいけど、念のために、と、アハトが縄を巻いてくれた。
木でできた大きなスコップで玄関先の雪をよけるのを手伝う。
アウラやお母様はサクサクとよけていくんだけど、なかなか難しい。慣れてきたころには汗だくになってしまった。意外に重労働。でも、楽しい。
ここで着替えないと風邪をひくと言われて、お着替え。
「大事な事よ。自分の体は自分で守らないとね?」
はい。お母様。
これで大体午前中終了。ランチは軽く食べる。今日はライムギパンのサンドイッチだった。疲れたからお昼寝したいところなんだけど、そんなことをしたら昼間の時間が終わってしまう。日暮れが早いから。3時くらいからもう夕方。
お片づけをして、ブーツの上にスノーシューを装着。慣れたもんだわ。
これは雪の上を歩くのに、足が埋まりにくくする道具。埋まらないわけではないことがわかった。時々、ずぼっ、と埋まる。それも楽しい。
今日は近くの林で生き物の足跡探しに行った。
いろんな足跡。長く見えるのはうさぎ。それを追うように狐。ちっちゃいのはてん?
お天気が悪い時には、おばあさまと刺繍をしたりもする。
ハルユラには独特の刺し方があって、変わった幾何学模様になる。アウラにも聞いたことがあるけど、おばあさまが丁寧に教えて下さった。
そうそう、髪を洗った後は、おばあさまが隣に座って髪を乾かしてくれる。今は侍女もいないから縦ロールにしていない。髪が軽くなった気がする。その髪をゆっくり優しく拭いてくださる。
いろいろな話をする。
おばあさまの時代の王都や、貴族社会の事とかも。
*****
年末。
みんなで屋敷中を大掃除する。
私はエプロンを借りて、窓ガラスを拭く係になった。
アハトが玄関に大きな毛皮を敷いている。
「これは?何をしているんですの?」
「もうすぐ年の瀬だろう?精霊が来るんだよ。あいつら、遠慮なく入ってくるから、雪だらけになるんだ。だから敷いておく。」
「え?精霊が??」
「ああ。」
「え?本気でおっしゃっています?」
「ああ。来るんだよ。年末の夜に。お前も気を付けろ。」
「え?」
「悪い子はな、連れていかれてしまうんだ。むふふ。」
「え?」
精霊が?来るんですの?あの、絵本とかに出てくる?
*****
大晦日の日も、普通に、何事もないかのように夕食。
玄関前には松明が赤々と灯されている。
バッターン、と、大きな音でドアが開いた。外の冷気も一緒に入ってくる。
「え????」
たくさんの精霊?が、
「悪い子はいねえがあ」
と言いながら家に乱入してくる。
片手には大きなナイフ。
悪魔の面。
頭からすっぽりかぶったわらで出来た何か。
え?強盗??
わらわらと入ってきた男たちは、暖炉にあたりながら、なんの遠慮もなくお酒を飲みだした。
おじいさまとお父様が一緒にお酒を飲んでいる。アウラは精霊?に担がれて喜んでるし…。
な、何が起こっているの?
思わずアハトにしがみつく。
「な、大丈夫だから。飲むか?お前も。」
いやいやいやいや、無理でしょう?おいていかないでよ。
アハトの上着を離さないように、握りなおす。
アハトの背中からほんの少し顔をのぞかせて、精霊?を見てみる。
精霊?




