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第16話 ユリアナ嬢の初めての雪国。

お昼過ぎにはヤルヴァ領を抜けた。周りは雪景色だ。なんというか、十分な雪景色。

この3倍降るというアウラの領地を想像してみたが難しかった。時々馬が走っているのが見える。この雪の中を?寒くないのかしら?


お天気が良くて、雪がきらきらして眩しい。

森が黒々と見える。青い空と白い山並み。綺麗ね。


森の入り口に続く道は一本道。

そこに10頭ぐらいの大きな犬がいるのが見えた。


あれがハルユラ犬?

なんか…思ったより大きいのね?


馬車のドアが開いて、外の空気が入ってくる。寒いわね。馬車の中も寒かったけど。昨日泊まった宿のおかみさんに言われて、タイツの上にスラックスにしたのは正解かもね。


「ユリアナさん?」

「はい。」


手を差し伸べられたので、手を添えて降りる。アウラの家の使用人の方かしら?


「足元に気を付けて。滑るよ?」


足元に気を取られていたから気が付くのが遅れたけど、あの…舞踏会でぶつかった、アウラにそっくりな男の人が立っている。ん?そうか!お兄様か!何で気が付かなかったんだろう。似てるはずよね。なんかの動物の毛皮の帽子をかぶっている。


「よろしくお願いしますね。」

「ああ。」


犬ぞりには毛皮が敷いてあって、暖かい。足元にも包むように一枚。背中からもすっぽり大きな毛皮が掛けられる。頭になんかの毛皮の帽子。途中からしてきた自分のマフラーで口元まで覆われる。何なの?前が見えにくい。

手を出せ、と言われて手を出したら、大きな分厚い手袋をはめられた。もこもこ。


付いてきた侍女と馬車の御者さんが手伝って、積んできた荷物を次々降ろして、繋いだ後ろのそりに積み込んでいく。


「いやーー予想通り荷物が多い。一人できて正解だったな。」


その人が大きな独り言を言う。

だって、3週間も滞在の予定なんですもの、荷物は多くて当たり前です。


犬たちは、立ってたり座ってたり寝ころんでいたり…割と自由に出発を待っているみたい。耳がぴんと立って、しっぽくるん。アウラの刺繍やペーパーウェイトの木工品の通りね。毛の長い子も短い子もいる。大きいけど。うふふっ。ちらちら私を見ている。可愛い!大きいけど。


「侍女は?一緒に乗らないのか?」

「え?ああ、大人数ではご迷惑でしょうから、私一人です。」

「そう?」


走り出した犬ぞりから、侍女と御者に手を振る。


まるで冒険ね!!!


一人でお友達のお家に遊びに行くのも、もちろんこんなたくさん雪を見るのも初めて!森の中の道はまっすぐに伸びている。何度かそりで走っているのだろう、雪の道だわ。

「あら、うさぎ!うさぎよ!」

「・・・・」

「見て!あれは何?」

「てん。」

「てん?てん…可愛いわね。」


森の中を時折、いろいんな動物が行き来しているみたい。そうよね、あの子たちここに住んでいるんだわ。寒くないのかしら?よく見ると雪の上に足跡が探せる。うふふっ。

前を一生懸命走ってくれている犬たちのくるりんのしっぽが走るたびに揺れる。

可愛い。


随分と走って森を抜けたようだ。

少し風があるのか、先ほどより寒い。


「日が暮れるから…その前に着きたいな。」


独り言のようにアウラのお兄様が言う。

日暮れ?まだ3時ぐらいじゃない?

周りは雪原。真っ白。あんなにお天気だったのに、雪がちらついてきた。

いつの間にかグレーの雲の中にいるみたい。寒いわね。

犬たちの吐く息が白く見える。重いわよね、ごめんなさいね。頑張って!


「く…」

「?」

「くっつくな!!!」

「あら、だって寒いんですもの。」


隣で犬ぞりの手綱を握っているお兄様に無意識にくっついていたらしい。

だって…こうしていると温かいし。

ちらりと見てみると、帽子からほんの少し出ている黒い髪やまつ毛が白くなっている。雪が付いているのかしら?

そっと手を伸ばして、前髪に触ってみる。


「な、な、な…????」

「あら、雪が付いているのかと思って。これは?」

「凍ってるんだ。いちいち手を出すな!寒くなるだろう?」


凍ってるんだ!へえ。面白いわね!白髪になっちゃったみたいだわ。



雪の中はどっちが北でどっちが南か。それどころか、今、どっから来たのかさえ分からなくなりそう。右も左も上も下もわからないくらい。


真っ白だわね!


秘密の国への入り口みたいね?


もさもさと降り始めた雪が、足を包んでくれている毛皮にも積もる。
















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