愛6
苦労でもいいの。
あなたと一緒なら。
きっと笑える思い出になるから。
だって、先生じゃなきゃダメなんだよ?
恋心
「おはよう東先!!」
みんなに人気で廊下ですれ違うたびに声をかける。
私の恋人。
でもね、私の特別な人なんだ。
「お、川風。おはよう。」
先生からの言葉がいつも優しくて。
学校では、普通に。
でもね、やっぱり寂しいんだ。
「おはよう。先生。今日も人気だね。」
私は笑ってそう言うけど。
本当はね。
本当は先生に触れたいよ。
「また後でな。」
いつも少しの会話だけど。
きっと先生には伝わってるはずなんだ。
だから、信じるよ?
ある日。
私は帰るときに声をかけられた。
見知らぬ男。
その男は金髪で耳には黒いピアス。
首には光るネックレス。
チャライ男というのはまさにこういうことを言うのだろう。
「何かよう?」
私は眉間に皺を寄せながら尋ねた。
人相の悪い奴。
「お前俺と付き合え。付き合わないって言うのなら、ばらしてやるよ。お前と先校のこと。」
こういうのを脅迫というのだろうか?
男は笑みを浮かべた。
私はため息をついた。
「いいよ。別に。ただ、あんたみたいな奴絶対好きにならないから。」
私は目を鋭くした。
こんなので負けてたら、先生を好きでいる資格がないようなもんだと思う。
「ふーん。つまんねーやつ。」
この男は一体何が言いたいのだろうか?
私は目を細めた。
でも、どこか寂しそうな気がした。
私達はいつも一緒に帰るようになった。
でも、こんな奴を好きになるわけはない。
それに、なぜかこいつも私を好きという気持ちは無さそうだ。
でも一体なんで?
そんなことを思いながら歩いていたら。
「あれ?蓮治?隣にいるのって新しい彼女?よかったねー。」
一人の可愛らしい女の子が首を傾げながら尋ねてきた。
蓮治?
こいつそんな名前だったんだ。
「ああ、まあな。お前は新しい男と仲いいのか?」
こいつはいつも冷たいと思ってた。
でも、その子の前では顔がすごく優しくなったような気がした。
「うん。ラブラブなの~。」
少し甘い声だった。
私と正反対のような気がする。
そう思いながら見つめていた。
そして、すぐにさよならしていた。
「俺帰るわ。」
女の子の背中を寂しそうに見つめながら帰ろうと歩き始めた蓮治。
「まだ、あの子のこと好きなら私となんか付き合ったって意味ないじゃん。それとも何?あの子が嫉妬してまた自分に戻ってきてくれるとでも思ってたわけ?」
私は帰ろうとして動き出した蓮治の背中に言った。
蓮治はきっと泣いているのだろう。
今までにきいたこともないほど弱い声だった。
「かもな。」
ギュッ
私は蓮治を抱きしめた。
蓮治を好きになんてならないよ。
ただ、先生が教えてくれたんだ。
「無理しなくていいんだよ?」
先生。
今日だけは蓮治を慰めてあげたいんだ。
ごめん。
涙が私の首筋に落ちた。
冷たいけど、温かい。
人はこんな涙も流すことができるんだ。
先生。
私だって、こうなってたのかもしれない。
でも、今はちゃんと先生がいる。
大丈夫だよね?