愛5
先生、泣いてもいい?
もう無理だよ。
裂け目
俺は生徒に告白された。
それもきっと、真剣だ。
俺もその目が好きだ。
髪も好きだ。
手も好きだ。
白い肌も好きだ。
全部好きだ。
でも
「俺とお前は教師と生徒だ。」
この言葉が邪魔をする。
そんなこときっとこいつだってわかってるはずだ。
触れられない距離がすごく辛かった。
遠い気がした。
「わかってるよ。困らせてごめんね。先生。」
あいつは逃げるように教室を出た。
俺は拳を握った。
爪の先が白くなる。
ごめん。
机を蹴った。
俺にはこうすることしかできない。
本当にごめん。
触れられない。
涙をふいてやれない。
ごめん。
生徒として、愛してやるから。
だから、泣かないでくれ。
私は走った。
ただでさえ泣いていて息をしづらいのにもっと息が上がって苦しい。
でも、それよりも胸が苦しい。
胸が締め付けられている。
バンッ
思い切り家に入った。
先生の香り。
愛しい。
その思いしかなかった。
最初にあったときからこうなることなんてわかってたはずなのに。
何で、あんなこと言っちゃったんだろう。
先生ごめんね。
先生も辛いよね。
困らせてごめんね。
先生に甘えてばっかりなのに。
私は先生の家を出た。
これ以上は迷惑なんてかけられないよ。
俺は家に帰った。
入った途端にわかった。
全部が違う気がした。
俺は走った。
息なんか切れたっていい。
足が痛くなってもいい。
怪我したっていい。
あいつが俺の近くにいてくれれば。
俺は最初から気づいてた。
お前を好きになることなんて。
どこだ。
川風。
きっと泣いてる。
行くあてなんかないくせに何で出て行くんだよ。
そんなときだった。
ギュッ
「やっと見つけた。」
俺は息を切らしながらつぶやいた。
伝えるんだ。
こんなに思うほど人を愛したことはない。
「優しくしないでください。」
川風はきっと泣いているのだろう。
鼻声をしている。
「ごめんな。」
「先生、ごめんね。私、先生に振られても、嫌いになんてなれないよ。」
今にも消えそうな声はとても切なそうだった。
どうして、俺は教師なんだろう?
「嫌いになんてならないでいい。好きでいてくれ。すごい、自分勝手だけど。俺もお前が好きだ。でも、そしたら、苦労するぞ?」
俺は川風の耳元でそう言った。
ただ、怖かったんだ。
川風が俺を好きでいてくれるか。
すれ違うことが多くなりそうで。
でも、違ったんだな。
川風は首を横に振った。
「先生と一緒なら何も苦労すことなんてない。」
俺は思い切り抱きしめた。
泣きながら俺に気持ちを伝えてくれた川風が。
すごく愛しくて。
いつも周りしか見なくって。
自分の気持ちをうまく言えなくて。
でも、何でも一生懸命で。
「好きだ。」
もう何年ぶりだろう。
頬に伝う涙の感触。
君をどうして好きになったのだろう?
出会って少ししか経っていないのに。
いつからか目で追うようになっていた。
なぁ、本当に俺でいいのか?