表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 春月桜
4/10

愛4


 どうしたらいい?


 先生。





 好き


 最近は先生の家を借りている。

 あの家で盗まれたのは私の下着などだった。

 先生方や、警察がいうにはストーカーらしい。

 でも、追いかけられているなんてこと無かったはず。

 気づかなかったのかな?

 私は首をかしげた。

 私の様子を見ていたようで先生は呆れていた。


「お前って以外と鈍いのな。」


 私は苦笑いをした。

 みんなに「時々天然だよね。」といわれるのはこういうのもあるのだろうか?

 嬉しいような嬉しくないような…


 複雑なまま生活をしています。

 でも、この頃は周りでは何も起こらない。

 何故かそれが。

 すごく怖い。

 嫌な予感が胸をよぎる。


 そして、当たったんだ。

 その予感が。


 ある日。


「ここに川風 美有香はいるか?」


 先生方に拳銃を突き出す男。

 そんな男に先生方は真っ青な顔した。


 ガラッ


 いきなり開いた扉にみんなが目を移した。


「川風はいるか!!!!」


 拳銃を持っている男がそう叫んだ途端。

 みんなが恐怖の顔に変わり叫び声もところどころで聞こえた。

 私も驚いた。

 でも、どこか冷静だった。


 なぜだろう?


 私はゆっくりみんなの前に出た。


「私に何か?」


 私は落ち着いてそう尋ねられた。

 何故か、目に見えていたのかもしれない。

 この男が来ることが。


「俺と付き合え!!!そうすればみんな死なないですむぞ!!!」


 男は顔を隠しているからよくわからないけど。

 私より少し年上のような声をしていた。


「私を好きなら私の幸せを考えてください。こんなことしたって私はあなたのことを好きになんてならない。私の大切な友達を傷つけるようなことをするなら、私はあなたを訴えます。」


 私は目を鋭く光らせた。

 こんな男怖くない。


 何故?


「撃てるもんなら撃ってみろよ。」


 いきなり聞き覚えがある声が聞こえた。

 私の安心はきっとこの人だ。

 ずっと心にあったんだ。

 あなたがここに来てくれるって。


「撃てるのか?手震えてんじゃん。」


 先生は気味悪い笑顔をしていた。

 覆面をかぶった男を馬鹿にするような笑顔だった。


「俺が撃ってやるよ。」


 先生はゆっくり近づいた。

 その反応に男は今度は先生に拳銃の先を向ける。


 「先生危ないよ!!!」生徒みんなの声がそう叫んだ。

 私は危ないなんて思わなかった。

 だって、私が助けるんだから。


 ガンッ


 私は男の頭を思いっきり蹴った。

 その途端教室の床に拳銃が落ちた。


「ナイス。やってくれると思ったよ。」


 先生は笑いながら落ちた拳銃を手に取った。

 私と先生は顔を見合わせた。

 信じてた。

 だって、信頼できる人だから。

 たった一人の大切な人だから。


 この件は誰も怪我をすることもなくすんだ。


 きっと先生の言葉がきいたのだ。

 先生は最後に男の耳元で囁いた。


「今度川風に近づいてみな。そのときは容赦せずに息の根止めてやるよ。」


 すごく怖い顔で笑った。




 私は一人教室に残っていた。


 茜色に染まっている教室は、あたたかかった。

 明日の日付が書かれている黒板。

 みんなの字がいっぱいの掲示物。

 使いたての机とイス。

 見るものがすべて輝いて見えた。

 あたたかい。

 ついさっきまで騒ぎがあったことなんてなかったことのように感じられる。


 ガラッ


「まだいたのか。」


 その人の声で胸があたたかさで溢れていく。

 この人が私を変えてくれたのかもしれない。

 そんな気がした。


「居残りって楽しいね。」


 私は外を眺めながらそうつぶやいた。

 外では、みんなが一生懸命汗を流しながら部活をやっている。

 教室には吹奏楽部のいろんな音色が響いている。


「いつも学年トップのお前には無理だろうよ。」


 その言葉に私は笑った。

 すごくおかしい。

 私は学年トップを守り続けたけど。

 それはただ、暇なだけなんだ。


「そんなこという人初めてだよ。」


 先生を見つめながら微笑んだ。

 みんなは「すごい」「さすが」とかいう言葉しか言わなかった。

 みんなとどこか違う。

 すごく嬉しかった。

 そんなふうに褒めてくれた人は誰一人いなかったから。


「本当に高校生とは思えないな。」


 先生は耳を真っ赤にしていた。

 先生は照れたら耳が赤くなるんだ。

 私は笑った。

 先生のことが一個知れたような気がした。

 少し選民意識を感じた。


「先生耳真っ赤。」


「黙れ。」


 こんな言葉を交わしながら先生が隣に座った。

 先生は真っ直ぐ私を見つめる。

 私もそれに答えるように先生を真っ直ぐに見つめる。


「何か用ですか?」


 私は笑いながら尋ねた。

 先生に心臓の音が聞こえそうだったから、紛らわす。


「言いたいことがあるのはお前じゃないのか?」


 先生が微笑んだ。

 その表情に私の胸は大きく鳴った。


「私、先生のことが好き。」





 ねぇ、先生は?





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ