愛10
切なくて。
愛しくて。
大切で。
愛を教えてくれた先生。
愛してるよ。
幸せ
今は家で外を見つめてる。
吐く息が白くなる季節のある日。
明日から冬休み。
生徒はウキウキ。
目を輝かせてスケジュール帳を見つめる女子達。
私は結構うまっている。
でも、そのスケジュールの中にはとても大切な日がある。
先生の両親に挨拶に行く日。
赤いペンで書き足した。
両親はどんな人なのだろうか。
でも、先生と弟が美形なんだからやっぱり美形なのかな?
怖くない人だといいな。
そんなことを色々考えていたときだった。
「何ボーっとしてんだ?」
先生が私の後ろから声をかけてきた。
今日は日曜日なので、先生も家にいる。
私は微笑んだ。
こんなに人を好きになれるんだ。
「先生の両親のこと考えてたの。」
その言葉を先生が聞いて首をかしげた。
「普通だぞ?期待しないほうがいいぞ?」
先生は呆れながらそう言った。
私は「そうかな?」というように顔をしかめた。
「なんだその怪しいと言いたげな顔は。」
先生は眉間に皺をよせた。
私はふてくされた。
「お前本当に表情豊かになったよな。」
先生から出た一言。
私は首をかしげた。
でもね。
やっぱり楽しみなのは変わらないの。
どんな人でも認めてくれるような気がするんだよね。
先生が私の頭を撫でた。
優しいぬくもり。
私は先生の腕の中に飛び込んだ。
先生の香りがとても愛しい。
当日…
私はガチガチしていた。
「あんまり緊張しなくても…。」
だって…
緊張しないでいるほうがおかしい。
生徒が先生の実家に嫁になりますなんて言いに行くのだから。
どんなに場違いかが一目で目につく。
ましてや先生のお父さんは会社の社長なのだから。
「さあ、着いた。」
私の心臓はピークに達してきた。
何度もつばを飲む。
「あら。すごく懐かしいじゃない。もうしっかり大人なのね。」
普通より少し大きな一軒家の庭で女の人が声をかけてきた。
話し方や顔ですぐにわかった。
黒髪にほんの少し白髪がちらつく優しそうな人。
「久しぶり母さん。」
先生の言葉がすごく優しくて何故か目に涙がたまった。
先生がどんなことを思っていたかがすぐに話し方でわかった。
「隣にいるのはあなたが傍にいて欲しい人なのかしら?随分若いわね。」
お母様は微笑みながらそう言った。
きっと私が生徒ということがわかったのだろう。
「さすが母さんだな。俺が通っている高校の生徒だよ。」
先生が説明したらお母様は「はいはい。見ればわかりますよ。」と言って家に招いてもらった。
先生に似ている微笑みがすごく優しくて心が温かくなった。
「お父さんいるからちゃんと話しなさいね。」
お母様はそう言って扉を開けてくれた。
あけた部屋には先生のお父様が座っていた。
「来るとは思っていたよ。お前は生徒に手を出すのか。」
お父様は鋭い目つきでそう言った。
そんなお父様に先生は少し黙った。
「俺はこの子じゃないと無理だ。」
先生がそう言ったときには抑え切れなかった涙が溢れ出した。
私が生徒じゃなかったらお父様は認めてくれたのかもしれない。
ごめんね。
先生。
「俺はこの子が生徒じゃなくても生徒でもどっちにしろ好きになっただろう。誰にも譲れない。この子が泣いてるときは俺が支える。俺が弱ってしまうときはいつもこの子がいてくれたし。これからだってそうだ。だから、二人で歩いていきたいんだ。もう決めている。誰が何を言おうと俺はこの子と結婚する。」
先生ははっきりとそう言った。
その姿にお父様は驚きを隠せない様子だった。
「お前が自分の気持ちを打ち明けたのは初めてじゃないか?そうか。そうか。この子が変えてくれたんだな。だったらいいだろう。お前が決めたことだからな?それに相手の両親も許してもらってるなら。何も心配はいらないな。いいだろう。認めてやる。」
私は泣きながら先生の腕に抱きついた。
こんなに嬉しいことはないだろう。
愛しい人とこれからも歩いていく。
絶対に失わない。
この人だけは。
エピローグ
「俺のお嫁さん。」
彼はそう言って私の左手の薬指に指輪をはめた。
私は泣きながら笑った。
ねぇ、本当の「愛してる」を教えてくれたのはあなたなんだよ?
ねぇ、知ってる?
愛してる。