愛1
フィクションです。
ねぇ、本当の「愛してる」を教えてくれたのは。
あなただよ?
ねぇ、気づいてる?
出会い
君との出会いは緑が青々としていた季節だった。
どこからでも蝉の声が響いている。
小さい頃から体が弱い私は暑さにも弱い。
図書室から見える木があまりにも気持ちよさそうだったから、甘い蜜に誘われるように引き寄せられた。
小さな木の木陰はとても気持ちよくて舟をこき始めたときだった。
「あれ?こんな可愛い子いたっけ?」
聞き覚えのない声に耳がぴくっと反応した。
なんて汚らしい声だろう。
ところどころかすれ、変なところで高音がする。
「ねぇ、一人なら俺に付き合ってよ。」
男は誰でもこうなのか?と時々呆れる。
私は腕を掴まれた。
手の甲が太陽に当たって熱く感じた。
「やめて。」
少し視界がグラッとしたのがわかった。
あ、ヤバイかも。
そんなときだった。
「おい。」
私の腕をしっかり握っている男の手を少しゴツゴツしているのに、爪がとても綺麗な手が男の腕を握っている。
私はぼやける視界からはっきりと彼の姿を見つめた。
灰色のスーツに身を包み、眉毛に薄くかかる黒い髪の毛、目じりが丁度よく上がっている。
鋭く光った瞳は男の目をしっかりと押さえた。
「新しい先校か?誰だよ。」
男はたじたじになりながら言葉を発した。
私は眉間に皺を寄せた。
ダサい男。
そう感じた。
「彼女は君より大人みたいだな?」
スーツの男は口の隅を上げた。
でも、目が笑っていないみたいで。
「は?俺、こんな女相手にしねえから。」
男はそう言って太陽でじんわりと温まっていた手を勢いよく離した。
私は力が抜けていたため自分の足で受け止めた。
そのときに小さいため息が出た。
男は逃げていくように走っていった。
「大丈夫?君、ここの生徒だよね?」
黒髪の先生らしき人は私の顔を覗き込んできた。
私は掴まれていたところを撫でながら頷いた。
「職員室に案内してくれない?」
私は綺麗な瞳を見つめた。
奥深い綺麗な黒。
整った顔。
すらっとした輪郭。
笑った顔が少し幼くって。
くす。
私は少し笑った。
本当に先生なのだろうか。
私はゆっくり立ち上がった。
「こっちですよ。」
私は先生の方には向かずに歩きだした。
何故か後ろにいても安心する。
この温かみは何年ぶりだろう。
「君、本当に高校生?」
歩いている途中いきなりその言葉が後ろから聞こえた。
その声は少し何かが抜けているような声だった。
「あたりまえじゃん。」
私は振り返った。
おかしな人。
私はそういうふうに言うように口角を上げた。
「ふーん。先生をそんなふうに馬鹿にするんだ。」
先生も望むところだというような顔で笑った。
「ひねくれものだからね。」
私はまた前を向いた。
この学校はとても広くて、移動教室はとても大変だと有名だ。
ほとんどが綺麗で、新しいペンキの匂いが微かに香る。
私は高2なので何処に何があるかはほとんど把握している。
新入生にはいい迷惑である。
そんなところにこの男がやってきた。
鮮やかに広がる蒸し暑い世界で、初めて居心地がいいと思った。
蒸し暑いはずなのに、桜が咲くような季節を思わせる。
この男は一体なにものなのだろうか?
私はきっとこのときに気づいてた。
自分が変わっていくことが。
なのに、気づかないフリをしてたんだ。
だって、私とあなたは…
続きます。