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異世界小説家  作者: キクメン


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96:名誉町民タダノ

 町役場の立派な会館に入ると、町長やウォルロッドや幾人かのギルド職員に先ほど会った大魔法協会の使節団に道具屋や防具屋や武器屋などの各店の店主に何故かウォルゼル婆さんも集まっており、まずはワイバルン討伐とこれまでの多大な貢献を賞して名誉町民の栄誉を授かる授与式が行われた。


「ワイバルンのためにこれまで何十年もの間中央大陸との交易ルートが大きく迂回を余儀なくされていたが、冒険者タダノによってワイバルンは討伐され以前のように中央大陸とも大いに交易と交流が行われるようになった、さらに多くの冒険者達の命を奪った大蛇も討伐され彼等の無念を晴らすことが出来た、さらにまた紫ヒスイをはじめ、ロックゴレムの魔法宝石、黒水晶、漆黒水晶など、本日お越しいただいている大魔法協会からも非常に貴重な鉱石の提供を心から感謝していただいた、これだけでも冒険者タダノの功績は大変多大なものであるが、それでも決して驕り高ぶることなく彼は常に優しさと真摯さを持って人々と接し、彼が勝ち取った報酬を惜しみなく親を亡くした孤児達に分け与えた、これ程までの貢献を行った者が果たして過去にいただろうか?私はここに冒険者タダノを最優秀名誉町民として讃えることを心から祝福し宣言する!」


 私は町長の言葉を一体誰のことを言っているんだと思う程に自分の事とは思えず傍観して聞いていたが、その場に集まっている人達からの盛大な拍手喝采を聞いて我に返り、記念のメダルを首にかけてもらい、町長と固い握手をすると、さらに一層拍手の音が大きくなってようやく自分のことなのかと少しだけ自覚することが出来た。


 また、ギルド長のウォルロッドから7等級冒険者としての正式な承認証を授与された。


 続いて町長は大魔法協会からの使節団を紹介し、今後互いの町の交易と交流は以前のように、いや、以前よりもより一層活発に行い、互いの町の発展に大いに協力し合うことを宣言した。


 大魔法協会の会長ハルケンロルグも挨拶し、まずはこれまでの貴重な鉱石と宝石の提供に感謝を述べ、続いてワイバルン討伐を大いに賞賛し、これからは大魔法協会としても互いの発展のために大いに交流をはかるつもりであることを宣言した。


 その後夕食の時間になったので会食パーティーとなり、様々な料理が並ぶビュッフェスタイルでの夕食会となった。


 様々な人が私のところに来て話しをしていき、魔法の町への留学のため明日この町を発つことを惜しんで別れの挨拶をしていった。ただ皆一月に一回は戻ってくることも知らされているようで、戻った際は顔を見せに来てくれと言ってくれた。


 ちなみに会う人全員から実に素晴らしい仕立ての礼服だと褒めてもらったので、礼服を買って良かったと思い、心の中で高級服店に感謝した。


 絶え間なくひっきりなしに私のところに人が来てくれるので、食事をしているヒマもなかったが、今日はたっぷりと飯屋や高級料理店の出店のワイバルン料理やポルル達が食べていた甘いお菓子も食べていたので空腹に悩まされることはなかった。おまけにこれまで自分が獲ってきた食材で味わってきた料理でもあったのでアレ食べたかったなぁと後悔することもなさそうだった。


 中央大陸からやってきた大魔法協会の使節団と、それとは別の恐らく交易商と思われる人達は大いに食事を堪能し料理を褒め称えていた。


 ウォルロッドがそれら料理のほとんどの食材がタダノが獲ってきたもので、しかも食材を一切傷めることなく一撃で仕留めたからますます食材の鮮度が保たれているのだということを説明すると、多くの人達は感心して「魔法の勉強をさせておくのがもったいないですなぁ」と言い、大魔法協会会長のハルケンロルグも「確かにそれは一理ある、いくら魔法が使えても美味しい食材を産み出す魔法はさすがにないですからな」と言って会場は笑いに包まれて盛り上がった。


 そろそろ夕食会もお開きといった時間になる頃、外からも祭りの終了を知らせる太鼓とほら貝のようなものの音が鳴り響き、それぞれ三々五々解散していった。


 私は大魔法協会の使節団達のために用意された貴賓室へと一緒に行って、改めて彼等に自己紹介をすることになった。


「先ほどの授与式でそなたの活躍、そしてそのたの人となりは十分に分かった。授与式が始まる前も多くの人達がそなたを賞賛しておった。実力、人格ともに大いに優れた素質を持った人物であることは疑いようのない事実であると我々も認めよう」


「有難う御座います」


「ヴァルヘルムとトゥルリィーンからもそなたの火魔法の魔力は非常に高いということも聞いておる、そこで今後のそなたの教育方針を定めるために、協力して欲しいことがある」


「分かりました、よろしくお願いします」


「うむ、では・・・そうだな、漆黒水晶で試すとしよう」


「黒水晶ではなくてですか?会長」


「ヴァルヘルムとトゥルリィーンの証言では恐らく黒水晶では砕けてせっかくの黒水晶が一つもったいないことになってしまうだろう」


「なるほど、かしこまりました」


「ではタダノよ、この漆黒水晶を握って、そなたの火の魔法を念じるのだ、漆黒水晶にありったけの火の魔法を注ぐようにイメージして放つのだ」


「分かりました、やってみます」


 私が採掘してきた漆黒水晶はこぶし大の大きさにカットされており、なめらかな楕円形に整われていた。相当な技術レベルだと思った。


 私は漆黒水晶を右手に握り目を閉じた。目を閉じる必要はないのだろうけど、その方がなんとなくイメージしやすいと思ったので自然とそうした。


 四肢の末端から身体の全ての燃料をポンプで吸い上げるようにイメージして右腕に送り込み、手のひらへと送り込んだ。やがて手のひらが燃えるようにジンジンと熱くなってきた感じがして、このままでは右手が膨れ上がって爆発してしまうのではないかと思ったところで、目をカッと見開き全てを漆黒水晶に放出させた。すると・・・


「ムッ、いかん、ウェイルー!」

「承知!」


バシャッ!ボウンッ!ゴォォォッ!


 ハルケンロルグからウェイルーと呼ばれた女性が私を取り囲む分厚い水の球体の壁を出現させた。


 それと同時に漆黒水晶は爆散し、周囲に猛烈な灼熱のエネルギー奔流を巻き起こし、みるみるうちに分厚い水の球体の壁が蒸発していき、ウェイルーと呼ばれた女性は蒸発して薄くなっていく壁に対して負けじと水を送り込み続けた。


 貴賓室はまるでサウナ風呂のような状態になり、ヴァルヘルムと他のひとが急いで窓を開け、トゥルリィーンが風魔法で蒸気を外に逃がした。


 1分程かかってようやくおさまり、危険な蒸気も無事部屋の外で霧散していった。


「・・・なんという凄まじい魔法力だ、漆黒水晶がひと欠片も残さず消えてしまった・・・」


「もっ!申し訳ありませんでした!」


バタッ!

「しっかりしろ!ウェイルー!なんとかひと口でも飲んでくれ!」


 褐色の肌の体格の良い大男が手のひらに収まる小さな革袋の口をウェイルーの口に押し当て、ウェイルーはなんとか喉を動かしてひと口飲むと、青ざめていた顔がおさまり、コクコクと飲み続けたところで一息ついてなんとか立ち上がるまでに回復した。


「タダノよ、そなたはなんともないのかね?」


「あっはい、大丈夫です、ただ腹が減りました」


グゥ~~~ッ!


「・・・す、すいません」


「・・・」

「・・・」

「・・・」


「ウワァッハッハッハッハッ!アッハッハッ!なんという者だ!ウワッハッハッハッ!これ程愉快な気持ちになったのは生まれて初めて魔法で部屋を吹き飛ばした時依頼だ!実に愉快!ワッハッハ!」


 それまで感じていたハルケンロルグの印象からは想像出来なかった程に豪快で快活に笑うのを見て、どことなくウォルロッドに近いものを感じ、私個人的には親近感がわいた。


 大魔法協会会長ということで、普段はその役職に相応しい立ち居振る舞いをしなければならないだろうし、年齢的にも多くの人生経験を積み重ねてきたことで、それ相応の優れた人格者なのだが、その奥に隠れている本質を垣間見た気がした。


 そしてそれは好ましいもののように感じた。

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