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異世界小説家  作者: キクメン


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92/383

92:壁画

 中央大陸にある魔法の町への留学が決まったので、出発の日までの残り僅かの日数でなんとなく大地溝帯に行きたくなり、全速力で大地溝帯に向かった私は谷底を流れる川にて大きな動物を発見したのでそちらに向かっていたところ、思いもよらない光景を目にすることになった。


 突然川の水面が大きく盛り上がり、灰色のゴツゴツした身体の大きなワニのような生き物が現れて、逃げようとして反転した一頭の動物の後ろ足を大きな頭で咥えこんだのだ。


 動物の悲痛な叫びが峡谷に響き渡り、前脚で懸命に逃げようともがいているのだが、少しづつ川の中に引き込まれていくのが見えて、私は一気に速度を上げて大きなワニへと近づいた。


 本来ならば情報を唱えて敵戦力の分析をしなければならないのだが、ワイバルンやロックサルペンティン程には大きくないのと、とにかく急いでいたので情報を確認している余裕がなく、ジャンプで一気に間合いを詰めつつ上空から槍を突き入れることにした。


 頭が大きいので狙いをつけやすく、しかも動物を咥えこんで逃がさないようにしているのに夢中なようでまるでこちらに気付いていないので、上空からワイバルンを倒した時のように頭頂部めがけて槍を突き刺した。


 やはりどんな動物も脳天の一撃には抗うことが出来ないようで、大きなワニも槍の一刺しですぐにピクリともしなくなった。


 私は持ち前の怪力で未だ懸命にもがいている動物の前脚を持ってワニごと引っ張り上げて、それから大きなワニのアゴに無理矢理身体を入れて上下にこじ開けた。


「今だ!頑張れぇーっ!」

「ヴォォーンッ!」


 前脚だけでなんとか脱出した動物だったが、出血が酷く瀕死の状況だった。


 最初はこの動物を狩って食材にしようと思っていたのだが、何故か私はこの動物に駆け寄って果たして効き目があるのかどうか分からないが、激しく出血している後ろ足に手をかざして「回復ッ!」と念じた。


 すると手のひらからほんのり青い光が放出されて動物の後ろ足を包み込み、出血が止まってみるみるうちに傷口が塞がっていった。


 ここでようやく情報を確認してみた。


-------------------

野良モウム亜種(オス、希少)

レベル:1

生命力:2

魔法力:0

持久力:2

攻撃力:1

防御力:1

素早さ:1

幸運度:0

魅力:0

魔法技能:0

異常耐性:0

-------------------


「あっ、これもモウムなんだ!しかも野良で希少種か!う~ん、食べてみたいけど・・・せっかく治してあげたんだから、さすがに狩るわけにはいかないなぁ・・・」


「ヴォーン」


「よしよし、大丈夫だよ、僕は君を食べたりしないよ、落ち着いて、もう大丈夫、そうだ、今あのおっかないのを片付けるね」


 私は野良モウムの太くて大きな首を撫でながら声をかけた後、大きなワニのところに行ってアイテム格納バッグを押し付けたところ、全長5メートル程はあったワニはなんとか格納出来た。


 お爺さんの軽トラは格納出来なかったけど、全長的には軽トラよりも長いワニは格納出来た。一体どういう基準なんだろうか?容積とか体積の問題なんだろうか?


 ともあれ巨大ワニをバッグにしまって振り返ってみると野良モウムは立ち上がって大人しくこっちを見ていた。


 私はさらにようやくそこで地図を拡大表示して付近の様子を確認したところ、100メートル付近には赤い三角マークは表示されていなかったので脅威対象はいないと判断した。ちなみに野良モウム達は白くて丸いマークだった。


「もうこの辺りにはおっかないのはいないよ、ホラ、もう水を飲んでも大丈夫」


 私は川に頭を近づけてみせた。ついでに川の中を覗いてみたところ、遠くに大きな魚がいるのを見つけて喜んだ。


「わっ大きな魚がいる!あれは後で捕獲しよう!」


 そうして喜んでいると、野良モウムがゆっくりと少し警戒しながら近づいてきたので、自分は水面を指さして「もう水を飲んでも大丈夫だよ」と言って、川の水を両手ですくってみせた。


 その様子を見た野良モウムはしずしずと水面に大きな顔を近づけて水をグビグビと飲み始めた。


「アハハ!いい飲みっぷり!」


 ひとしき水を飲んだ野良モウムは後ろを振り返って仲間の野良モウム達に向けて「ヴウォーン!」と大きく吠えた。すると後ろにいた野良モウム達も「ヴウォーン!」と吠えながら近づいてきて、皆自分のすぐ近くまで寄って来て飲み始めた。


「アハハハ!美味しいかい?大丈夫、もう怖いのはいないから沢山お飲みよ」


 私は優しく首を撫でながら話しかけて回った。


 野良モウムは町にいるモウムと違ってさらに毛が長くて顔もほとんど毛に覆われていた。最初遠くから見た時に何か不思議な生き物のように見えたが、これはこの長い体毛のせいだったようだ。


 ひとしきり野良モウムは喉の渇きを潤した後で集団で歩き始めた。なんとなく私は野良モウム達の後をついていくことにした。しばらく歩いていると断崖が大きく削られている場所があり、大きな洞窟のようになっていた。野良モウム達はその洞窟に入っていきそこで落ち着き始めた。


 自分もその大きな洞窟に入ってみたのだが、そこで驚くべきものを発見した。洞窟の壁一面に巨大な化石が存在していたのだ。その化石は全長は20メートル程もあり、なんとなくクジラのように見えた。これは凄いと思いスマホで何枚も写真を撮影し、動画も記録した。


 そして、今はどの辺りだろうと地図を拡大して表示させてみたところ、さらに驚くべきものが表示された。地図ではこの化石の奥に大きな空間が存在していることを映し出しているのだ。


 自分は地図をスクロールしてその空間に通ずる通路がないか探してみたところ、通路は見つからなかったが壁がとても薄い場所を発見した。それは巨大なクジラの化石の頭の先にあり、すぐにそこに向かって行った。


 地図では最も壁が薄い場所に立ち、壁をコンコンと叩いていったところ、一か所他とは明らかに音の響きが違う場所があったので、槍の後端の石突でその一点を叩くと人一人が通れる程の穴が空いた。


 私は早速アイテム格納バッグから夜鷹の目の眼鏡を取り出してかけて中に入った。


 中はとても大きなドーム状の空間になっており、床は平らに整地されていて明らかに人の手によって手が加えられていることが分かった。所々に幅30センチ深さ50センチ程の溝が彫られており排水溝か用水路として使われていたのではないかと思った。


 しかし建物の形跡はどこにもなく地面の上には人工的な建造物や生活用品の残骸のようなものは一切発見されなかった。


 古代の人が残した遺物がないかくまなく地面の方だけを見ていたのだが、何もなさそうなので何気なくドーム状の空間の壁を見たところ私はあっ!と声を漏らした。


 巨大な空間に壁画が描かれていたのだ。


 その壁画には上空に明らかに宇宙船と思われる大きなフェリーのような物が描かれており、そこから小さな船が降りてきて、さらにその小型船からヒトと思われる生き物達が沢山出てきて、地上に降り立っている姿が描かれていた。


 その絵には続きがあり、人々は何やら地面を耕して畑を作っていたり家を建てていたり水車のようなものを作っていたりしていた。


 さらに続けて動物を狩っていたり、動物を飼っていたり、魚を獲っていたり、魚を養殖していたり、農作物を収穫している絵が描かれていた。


 それから神殿を作り、太陽に向かって祈りを捧げている様子も描かれていた。


 そして最後に大勢の人がこちらを向いて手を振っているように見える絵で締めくくられていた。


 そしてその横には明らかに何かの金属で作られた台座と透明なクリスタルの石板のようなものが乗せられていた。

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