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異世界小説家  作者: キクメン


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89:魔法の才

 町の大門近くで想定外の大勢の見物人達に囲まれた中、私と大魔法協会の使者二人の演舞を披露したところ、辺りは大歓声に包まれていた。


 私は二人の演舞を見て、魔法においては私のファイヤーボールやファイヤーウォールなどでは到底太刀打ちできないと考え、さすが大魔法協会から送られてきた使者は違うなぁと大いに感心した。


 そこでついうっかり黙っていればいいものを、二人の魔法の方がはるかにレベルが高いと認識してしまったために、私も魔法が使えるということを漏らしてしまった。


 二人は大いに驚き、どの魔法が使えるのかと聞いてきて、小さい火の玉とすぐ消える火の壁が使えると応えると、是非やって見せてくれと言ってきた。


 二人の魔法を見た後なのでとても恥ずかしいと言いつつも、もしかしたら魔法のレベル上げに役立つ助言をもらえるかもしれないと思い、思い切ってやってみせることにした。


 ヴァルヘルムに土の壁を作ってもらい、その壁に向けてファイヤーボールを放つことにした。


 レッドボススライムを倒した後の試し撃ち以来、ファイヤーボールを放ったことがないのでうまく行くか分からないが、私のファイヤーボールは10メートルくらいしか飛ばないようなので結構近づき、詠唱する必要も手をかざす必要もないのだが、一応恰好だけでもそれらしくするため、腕を前方に伸ばして「エイッ!」と声に出して力強く念じてみた。


 ところが撃ち放った瞬間「えっ?」と声が出てしまった。


 明らかに以前レッドボススライム部屋で放った時のハンドボール競技のボールよりも大きくて灼熱の火球がゴウッ!という轟音と共に飛んでいき、ヴァルヘルムが作った土の壁が溶岩のようにドロドロに溶けて、それだけでおさまらずさらに突き抜けて飛んでいき、その延長線上にあった大岩に激突して岩もろとも爆散してようやく消失した。


 撃った本人も二人の魔法使いも、そろそろ引き返そうとしていた観衆も何も言えずに固まった。


「タ・・・タダノ・・・さん?」


「え・・・えぇと・・・あっあれっ?」


 やっちまった、と激しく後悔した。


 さすがに周りは大歓声というよりも騒然とした状態に包まれ、いよいよこれは立場が怪しくなってきた。マズイ、さすがにこれは怪しまれる、最悪の場合町から去らなければならなくなるのか、なんという失態、エライことになった、どう言い訳すればいいんだ!助けてポルル!


「思った通りだ!見たかねトゥルリィーン!」


「ええ!やはり一目見た時に感じたオーラの正体は魔法力で間違いないですわ!」


 えっ!何ッ?僕の正体?見破られた?どうしよう!どうなるの?助けてポルル!


「タダノ殿」


「はっ、はいっ!すいませんっ!」


「は?・・・いや、あなたの強さの理由は恐らく魔法力によるところが大きいと確信します」


「ヴァルヘルムの言う通りです、恐らく膨大な魔法力によって、タダノ様の身体が強化されているのだと思いますわ」


「えっ?そうなんですか?僕はこれまで槍の練習しかしてきませんでしたよ?火の玉も以前はもっと小さくてすぐに消えて無くなる程の威力しかなかったんですが」


「それはいつ頃のお話しでしょうか?」


「えっ・・・と、じゅ、10年くらい・・・前?」


 すいませんごく最近のことです。ひと月も経っていません。


「なるほど、それで魔法の才がないと判断なされてそれ以来ひたすら槍の修行をなされたのですね」


「仕方がないかもしれませんわ、魔法に関するしっかりとした知識と育成方法がない地域では才能が開花することなく生涯を普通の人として終える人も少なくありませんもの」


「恐らくタダノ殿はこれまでの修行の旅という実戦の場で己の心と身体を鍛えているうちに、魔法力の土台となる地の力が練られていったのでしょう」


「そうですわね、地味で辛い魔力を練る修練よりも技術や知識のみを追い求める最近の若い魔法使いと違ってずっと大自然の中で戦いながら魔力を練っていたのでしょう」


 えっ、そんな事していませんが・・・いや、実はしていたことになるのか?


「タダノ殿」


「はっ、はいっ!すいません!」


「・・・?いや、あなたは是非とも我が大魔法協会の本部に来て、魔法を学ぶべきだ」


「私もそう思いますわ、タダノ様ならば、歴史に名を残す大魔法使いになるかもしれません」


「えっ!?僕・・・いや、私がですか?」


「はい、既に相当魔力を練られているとお見受けしますので、技を学ぶタイミングとしては今が最も良い時期だと思います」


「私も同感ですわ、これ以上遅いと今度は理解力と想像力が低下して宝の持ち腐れになる恐れがあります」


「ここで立ち話をするのも何ですから、いったん町に戻りましょう」


 こうして私はやらなきゃいいのに、つい二人の魔法を見て何か助言がもらえるかもしれないと思ってやってしまったことで、これまでなんとか平穏にやってきたことが一気に急展開していくような感じがしてとても不安になり激しく後悔した。


 その後冒険者ギルドのVIPルームを借りて、ウォルロッドも交えて大魔法協会の二人の使者の力説が始まった。


 冒険者タダノの人並外れた能力はこれまで戦いの中で練り上げられてきた魔法力によるもので、それによって身体強化がはかられているからだと説明し、現在本人にその自覚がないのは実にもったいないことで、このままではタダノの可能性がそこで止まってしまい、大きな損失になると熱弁した。


 ウォルロッドも大いに頷き「いや、実はオレもこんなに線の細い青年にしては膂力があり過ぎると思っていたのだ」とか「一目見てただならぬ力を感じたが、あれは魔力だったのか」とか言って妙に納得した様子で、そんな風に勝手に盛り上がっている人達を見て、言われている当人ですら、なるほどそうだったのかと思い込み始める始末だった。


「おいタダノ、二人の言う通りだ、お前さん中央大陸の大魔法協会に行ってしっかり基礎から学んできた方がいいぞ、このままではまさに宝の持ち腐れだ」


「そうですね、自分も中央大陸の魔法にはとても興味があったので、是非行ってみたいと思います、しかしそうですか・・・自分には魔法の才能はなく、てっきり槍使いとしての人生を送るものだと思っていました・・・」


「いえ、槍も大いに魔法に役立つと思いますよ」


「そうですヴァルヘルムの言う通りですわ、彼も私も魔法だけでなく武器を使います、私は弓を使いますが実際に身体を使って武器を用いることで、より魔法のイメージが具体的になって、互いにとても良い相乗効果を産むのです」


「なるほど、そうなんですね」


「はい、ですからタダノさんのように相当に熟練された槍の技は一気に魔法の習得の効率を高めてくれると思います」


「良かった、これまで修行してきた技と、愛着のあるこの槍は無駄にはならないんですね」


「はい、それどころか魔法と融合することでますます技の威力は増すことでしょう」


「有難う御座います、これなら迷うことなく魔法の修練に打ち込めそうです」


「それでは早速に伝書鳥にて大魔法協会本部にこのことを連絡させていただきます」


 そうしていったん話し合いは終了し、二人は宿に戻っていった。


「しかしまさかお前さん、本来の才は槍使いではなく魔法使いだったのか、力持ちの才も実は魔力による身体強化によるものだったんだな」


「自分も全く気付きませんでした」


「今回大魔法協会の使者に会えたのは実に僥倖だった、いや、むしろこのタイミングで出会えたのは運命なのかも知れん、純粋に鍛錬で肉体を鍛え上げた戦士とは異なり魔法には理論上肉体的年齢的な限界がないと言われている、お前さんにはまだまだ可能性が広がっているのだ、こりゃ本当に10等級冒険者、いやあの二人の言葉通り歴史に名を残す大魔法使いになるかもしれんぞ」


「今から学んでも間に合うのでしょうか?」


「分からん、だが、今がラストチャンスだと思う」


「そうですね、せっかくですから精一杯頑張ってみようと思います」

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