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異世界小説家  作者: キクメン


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86/383

86:ヨクリュー

 宿屋の3階一番奥にある私が借りた部屋の中でワイバルンは孵化して盛大に鳴いた後で、私は断腸の思いで高級な肉を与えたところ、ワイバルンは一心不乱に食べてなんとか鳴き止んでくれた。いや、この場合泣き止んだと言った方がいいのか?


 結局一塊1万デンの黒大サソリの肉を全部平らげたワイバルンの赤ちゃんはようやくそこで私の顔を食い入るように見つめた。


「お腹いっぱいになったかい?お誕生日おめでとう、今日から君は僕達の家族、僕達の仲間、君の名前はヨクリューだよ、よろしくねヨクリュー」


「・・・クェェ!」


「よしよし、ヨクリュー、それじゃあ君のお母さんに会いに行こうか」


「クェェ!」


 実に短絡的ではあるが翼竜なのでヨクリューというそのまんまの名前をその場の思いつきで付けて、宿屋の裏庭へと向かうことにした。


 これから依頼の仕事に行く冒険者達の邪魔にならないようにリュックの中に入れて運んだのだが、ヨクリューはまったく嫌がることなくリュックの中に入ってくれて、どうやら丸まって眠ったようだった。恐らく卵の時にリュックに入れてあちこち運んでいたから慣れているのだろうか?


 これ幸いとばかりにそれならば今のうちに飯屋に行って朝食を食べてこようということで飯屋にて朝食を食べ、食後に隣の肉屋に行って年老いて死んだザラやモウムの肉はないかと尋ねたところ、ギルドから話しがいっているようですぐに出してくれた。一塊30デンとのことでかなり安かった。


 その後、宿屋に戻ると玄関ホールにはトラとポルルが心配そうにして待っていた。私は頷いて裏庭を指さして全員で裏庭に行き、そこでリュックを開いて中を見せた。


 リュックの中ではヨクリューが丸くなって眠っており、それを見たポルルは嬉しそうに微笑み、トラも小さな声でギャゥといった。


 それからポルルに肉屋で買ってきたザラの肉を渡し、基本は自分が食事に行くときに肉屋に寄って買ってくるけど、ギルドの依頼などで私がいないときのためにポルルに1万デン硬貨を渡した。


 ポルルは驚いた顔で手を引っ込めて首を振ったが、もしもトラも含めて何かあったときにはお金が必要になるかもしれないからその時のためにとっておいてと言ってなんとか説得して受け取ってもらった。ちなみにそれ以外に小銭も渡しておいた。


 そうしてしばらく二人と一匹でヨクリューを眺めていたところ、ヨクリューは大きなあくびを一つして目を覚まして起きてきたので、ポルルが手を伸ばしてヨクリューをリュックから出した。


「おはようヨクリュー、目の前にいるのがお母さんのポルルだよ」


「クェェ!」


 ポルルはヨクリューの目を真っ直ぐ見てニッコリと微笑んだ。私にも見せたことのない笑顔で微笑んだ。


 ちなみにヨクリューは赤ちゃんでも頭の先から尻尾までの全長を含めるとほとんどポルルの身長と同じ位の大きさで、体重も結構重たいのだけど、さすがポルルは力持ちの才も持っているだけあって軽々と抱っこしていた。


「ギャオウ!」


「おっと、そしてこっちが・・・あれ?そういえばトラって・・・」


 情報を念じてトラの性別を確認した。


-------------------

ロックタイガル(メス)

レベル:2

生命力:5

魔法力:0

持久力:5

攻撃力:2

防御力:2

素早さ:2

幸運度:0

魅力:0

魔法技能:0

異常耐性:0

-------------------


 トラはメスだったのか、おお、さすがタイガル、まだ赤ちゃんでもロックワームよりも強い。


「こっちがお姉ちゃんのトラだよ、仲良くしてね」


「ギャアウ!」

「クェェェ!」


「ギャアァウゥゥ!」

「クェェェェェェ!」


 うん、多分うまくやれそうだ。きっと。


 お風呂に入りたかったところだが、早速ギルドに報告に行かなければと思い、ポルルに説明してヨクリューを任せて冒険者ギルドに行くことにした。


 その前にヨクリューの情報も確認した。


-------------------

ワイバルン

レベル:3

生命力:30

魔法力:0

持久力:30

攻撃力:3

防御力:2

素早さ:2

幸運度:0

魅力:0

魔法技能:0

異常耐性:0

-------------------


 なんとさすがワイバルン、生まれたばかりでもトラよりも強い。そして性別が分からない、というよりもなかったりするのか?雌雄同体とか?ともあれお姉ちゃんのトラはこれから大変だ、いや、それ以上にポルルが大変だ、果たしてポルルはしっかりヨクリューを育てることが出来るだろうか。


 そんな一抹の不安を抱えながら、冒険者ギルドに行って、無事ワイバルンの赤ちゃんが孵化したことを報告し、道具屋に行ってギルドで管理していることを証明する証を購入した。


 道具屋の店主トルバノの話しでは、ワイバルン討伐によって早くも中央大陸からの交易が活発になり、気球の本格利用も再開し、さらに現在あのズール族の族長が町長に掛け合って金輪際悪事から身を引き自分達と幹部達の命を差し出すからどうか将来がある若い者達に真っ当な仕事をさせてくれと嘆願しているらしいという話しを聞いた。


 他にも中央大陸のさらに中央にある大魔法協会の代表者も町長に会いに来ているらしく、近く魔法協会の上層部が直々にこの町に来るかもしれないと教えてくれた。


 ともかくワイバルンが討伐されたことで一気に活気づいてきてこれから相当この町は発展するかもしれないと意気込んでいた。それらの話しを聞いて私もとても嬉しい気持ちになった。


 それから飯屋で昼食を食べて、宿屋に戻ると玄関前でポルルとトラとヨクリューが待っていたので、ヨクリューにギルドの管理証を付けてモウム達のいる場所へと向かった。その際ヨクリューは早くも空を飛んでいき、道中行き交う人々は驚いた様子でヨクリューを見た。しかし自分が付き添っているのと、既に何度もポルルがトラを連れて歩いているのを見ているので大きな騒動になることはなかった。


 モウム達のいる場所に着くと、トラはいつものように柵の中に入っていき、ヨクリューもパタパタと遅れて後をついていった。モウム達はヨクリューに怖がることもなくマイペースで思い思いに行動しており、ヨクリューは珍し気にモウム達を見ていたが、モウム達を刺激するようなことはしなかった。


 家畜小屋からモウム達の世話をしている少女がやってきて「あれは何ですか?」と尋ねられたので、私は若干緊張して顔が引きつった笑顔で「え~と、実はその・・・あれはワイバルンの赤ちゃんで、ヨクリューっていう名前なんだ、ちゃんと冒険者ギルドから許可ももらっていて、これから僕とギルドでしっかりサポートしてポルルに育ててもらうつもりなんだ、ちゃんと使役することが出来れば町にとってとても大きな恩恵が得られるそうなんだよ」


 いかにも懸命に弁明するかのように早口でまくしたててしまった。


「そうですか、ワイバルンって意外に可愛いんですね」


「そ、そうなんだよ、やっぱりどんな生き物でも赤ちゃんって可愛いもんだよね、ハハハ・・・」


 気のせいかモウムを世話する少女も一瞬笑ったかのように見えた。


 とりあえずミルクと乳製品をたっぷり買ってなんとか少女の機嫌をとることにした。その際なんとヨクリューがチーズに興味を示してスンスンと鼻を近づけて匂いを嗅いでいたので、「えっ?ヨクリューもしかしてチーズ食べてみたいの?」と聞いてみると「クェェー!」と元気そうに鳴いたので、口元に近づけてみるとパクッと食べて美味しそうに目を細めて咀嚼して飲み込んだ。


 これには私もポルルも驚いたが少女も目を丸くして驚き、それから今度は一瞬ではなくしっかりと微笑んで「アナタは良い子ね」と言い、ヨクリューも「クェェェ!」と元気に返事した。


 当然その後はたっぷりチーズを買いこんで宿へと戻った。

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