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異世界小説家  作者: キクメン


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85:孵化

 ワイバルンの卵を持ち帰ってきてしまった私は、その後宿屋の裏庭に行き、日当たりの良い場所に木箱と干し草で卵を置く台座を作り、リュックから卵を取り出して置いた。


 卵は灰色で黒のまだら模様が入っており、これがワイバルンの卵だと言われれば十分納得出来る程にそれらしいものだった。


 トラが卵の周りで丸くなり、トラも卵を温めているかのようだった。これなら卵に何か起きてもトラとポルルが気付いてくれるので、安心して昼食に出かけることにした。


 お礼に何かお菓子とかおやつになりそうなものを買って帰ろう。そうだ、そういえば農園で大ヌタルモドキを討伐したときの果物があった、一緒にあれを食べよう。そうして昼食を食べに飯屋へと向かった。


 飯屋に到着したがワイバルンの肉を使った料理などは特にないようで、ワイバルンの肉は食べられるのかと聞いた所、毒沼の近くで育ったワイバルンは毒抜きをしないと食べられないが、今回のワイバルンは山の上でロックジャガルなどを捕食し、水も山の雪解け水を飲んでいるはずだから毒抜きは必要なく相当美味しいだろうと言っていた。


 ただ、問題はちょっと競売では手が出ない程に高額な金額になりそうで、ウチでは手に入れられないだろうとのことだった。ただ、そのことでどうやらギルドと町が動いているようで、もしかしたら何か良いことがあるかもしれないと言っていた。


 昼食後は冒険者ギルドに行き、受付カウンターにてワイバルンのことで聞きたいことがあるので昨日会った職員の方か生き物に詳しい方を紹介して欲しいと言うと、昨日会った職員を向かわせるということで、いつものVIPルームで待っててくれと言われた。


 いつも通りの個室部屋に入って待っていると、お茶が出される前に昨日のギルド職員がやってきたので挨拶もそこそこに、これからワイバルンを育てるにあたってアドバイスをもらうことにした。


 とはいえ、ワイバルンを卵から孵化させて育てたという前例がないのであくまでもザラなどの大型爬虫類の例を参考にして、後はワイバルンの性質特徴を元にした推測による説明であることを了承してくれと言われた。


 まず先に夜に私が一緒に寝て卵を温めることは良い事だと言われ、恐らく卵の殻は相当頑丈であると思うので押し潰して割れることはまずないだろうと言われて私は一安心した。


 日中は日の光に当てて温めるのも良い事で、毒沼のある森の奥であまり日の光に当たらないで育つものよりも良い個体になるだろうとのことだった。


 また、どれ程効果があるかは分からないが、卵に話しかけたり優しく撫でたりするのも良いだろうと言われた。良いザラを育てることで有名なシュラ村では昔から女達や子供達がそのようにザラの卵を優しく扱うのだそうだ。


 また、生まれた直後から肉を食べるので、年老いて死んだザラの肉やモウムの肉を与えれば良いとのことだった。毒沼で育つワイバルンは肉以外に魚も食べるし、また他の地方では木になっていた果物を食べていた個体も確認されたようで、基本的には雑食かもしれないとのことだった。


 その後もワイバルンを育てるにあたって有益な情報を聞いたのだが、話が弾んでいつしか大地溝帯に生息する生き物についての話題になった。


「あそこの生き物は謎が多く、百年以上前に中央大陸から来た調査団が何匹か持ち帰ってきたもののみの記録しかないので私も非常に興味があります。当時の調査団もですが冒険者達もヒスイなどの鉱石目当てだったので、生き物の学術調査はほとんど進んでいないのが実情です」


 私の興味としてはその生き物の肉が美味しいかどうかという点だったので、純粋に学術的な生態を知りたいと願う職員には少々申し訳ない気持ちになった。


 結局夕方近くまで話し込んでしまい、貴重な時間を奪って申し訳ないと謝罪したが、全くその逆で大変有意義で貴重な時間だったと感謝された。また、ワイバルンの件で変化があればいつでも呼んでくれと言ってくれた。


 その後いつものように高級料理店に行って食事をし、宿に帰って部屋に戻るとベッドの上にワイバルンの卵と洗濯を終えた服が置いてあったので、現実世界に行って寝支度を整えてから大きなワイバルンの卵を抱いて寝た。結構抱き心地が良くて互いに温め合いながら、ポルルが干してくれた布団の優しい温もりに包まれながら寝た。


 明けて翌日、朝食に出かけてから宿に戻ってみると部屋に卵はなく、独り占め風呂に入ろうと脱衣所に行くとトラがいて、一緒に風呂場に入ると風呂場の床に卵が乗せられた木箱が置かれていた。


 常に温泉が流れて温かく湿度もある風呂場は確かに最適な環境だ。さすがに湯船に入れるとゆで卵になるかもしれないので湯に入れるわけにはいかないし、多くの冒険者たちが利用する時間も置いておくわけにはいかないから、私がトラと一緒に入浴するこの時間ならば置いても良いというのはなかなかナイスな判断だった。


 風呂から上がった後はトラの先導のもと、裏庭の日当たりの良い場所に置いてから、図書館に行って続きの本を借り、その後昼食を食べ、それから宿に戻ると玄関にトラとポルルと卵が待っていて「卵も連れて行くのかい?」と聞くとポルルが頷きトラもギャウ!といったので、部屋に戻ってリュックを持ってきて卵を中に入れて背負ってモウムのいる場所へと行った。


 その後宿屋へと戻りそのまま卵は自分の部屋まで運んでベッドの上に置いた。夕食の時間まで今日借りた本の撮影整理と時間調整のために現実世界へ行くことにして、卵も持って行ってみようしたところなんとポータルゲートに弾かれてしまった。リュックを置くといつも通り現実世界に戻れたので、異世界の生き物は現実世界に行けないのかもしれないと思った。


 夕食の時間まで2時間程あり、現実世界で1日程時間調整のために過ごそうと考えたが、その2時間の間に卵が孵るかもしれないので、とりあえずこまめに様子を見ることにして現実世界で時間調整をしたが特に卵に変化はなく無事時間調整を終えたので、夕食に出かけることにした。


 高級料理店に行くときもリュックに卵を入れて持ち歩き、いつもの給仕がやはりリュックについて聞いてきたので小さな声で驚かないように念を押してから打ち明けた。給仕は何事もなかったかのようにすました顔で頷き、いつものように美味しくバランスの取れた料理を食べて帰宅した。


 そうして今日もポルルが干してくれた温かい布団の中で大きな卵を抱いて眠りに着いたのだが、時折卵が動いて驚いて目が覚めることが何度かあった。その度に私は卵を優しく撫でて「大丈夫、大丈夫」と声をかけてあげた。


 翌朝、温かな朝日の光が部屋の中に入ってきて目を覚まし、ぼんやりとした眼差しでふと卵を見ると、卵にヒビが入っているのを見て一気に飛び上がるようにして起き上がった。


 抱き着いたときに力が入って自分が卵を割ってしまったのではないかという恐ろしい想像が頭を駆け巡り血の気が引く思いの中、大慌てで卵の状態を確認した。


 目を大きく見開いて指でなぞりながらくまなく卵をチェックしていると卵の中からゴン!ゴン!という音がして大きく揺れ始めた。思わず私は卵を抱きしめてベッドから転がり落ちないように支えたが、ますます勢いは増してきて、いよいよ卵のあちこちが欠けてきた。


 こりゃいよいよダメだと思ったその瞬間、卵は大きく真っ二つに割れて、中から弾けるようにして灰色の物体が現れた。


「クェェェェェ!クェェェェェ!クェェェェェ!」


 結構可愛らしい鳴き声が大きく部屋中に響き渡った。恐らく腹が減っているのだと思い、すぐにアイテム格納バッグから肉を取り出そうと思ったが、今持っている肉はどれも高級な肉ばかりでかなり悩ましかったが、一塊1万デンの黒大サソリの肉を取り出して与えることにした。


 高くて美味しい肉の味を覚えてしまって、年老いて死んだザラやモウムなどの安い肉を食べなくなったとかにならなければいいが・・・

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