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異世界小説家  作者: キクメン


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84/383

84:冒険者ポルル

 翌朝、いつもより遅く起きた私は防護服や下着や靴下やその前に着ていた服をカゴに入れて、他にも洗濯してもらうものがないか何気なくリュックの中身を見てようやく極めて重要な事を思い出した。


 しばらくその場で固まってしまったが、とりあえずいつも通り10デンを枕に、100デンをカゴの上に置いて、リュックを背負ってまずは飯屋に行って朝食をとることにした。今日も朝食は特別サービスの料理が出てきてお代もタダだった。


 大満足の朝食を食べてから意を決して冒険者ギルドへと向かい建屋へと入ると、その場にいた冒険者達からは拍手喝采で迎え入れられた。


 それに手を挙げて応えながら受付カウンターへと向かい、職員の人からも賛辞の言葉をもらったので感謝した後で小声で「実は非常に重要な事を報告し忘れていました、その・・・ワイバルンの生きている卵がリュックの中に入っているのですが・・・」と、正直に白状したところ職員は完全に「え・・・」と固まった後で、引きつった笑顔の表情のまま「い、いつもの部屋でお待ちください」と言って奥へと消えていった。


 さすがに今日はお茶が運ばれてくる前にウォルロッドが別の職員を連れてやってきた。


 目が合ったのですぐに頷いてリュックを机の上に置いて中を開けて見せた。


「おいおいタダノ・・・マジかよ・・・」


「すいません、昨日は完全に舞い上がってしまいすっかり忘れていました・・・」


「コレは正真正銘、間違いなくワイバルンの卵です。しかもかなり温かい、数日中には生まれてくるでしょう」


「えっ!ホントですか!?」

「ええ、間違いありません」

「オイオイオイ、マジかよ・・・」


「いっそのこと育ててみてはいかがでしょうか」

「ちょっ、おまっ、ホンキか!?」


「はい、ホンキもホンキです、ワイバルンとて所詮爬虫類ですから、孵化の直後から腕が良く面倒見の良い動物使いがしっかり餌付けして優しく親身になって育てれば使役可能だと思います。ここで成功例を示せば町にとってさらに様々な面で恩恵を得ることが出来ることでしょう」


「しかし大人になって手が付けられなくなったらどうするのだ?」


「いえ、生まれた直後からしっかりしつけていればそのようなことは起こり得ません、もしもそうなった場合は可愛そうですがエサに毒を入れるか、タダノ様に倒していただくしかないですが、決してそのようなことにはならないと私が責任を持って断言します」


「しかしだ、だとしてもだ、では一体誰がワイバルンを育てるというのだね」


「ええと・・・一人思い当たる人物がいるのですが・・・」


「何?そんな人物がいるのか?」


「ホウ!それは素晴らしい、どなたですかな?」


「宿屋にいるポルルはどうでしょうか?今ロックタイガルの赤ちゃんを育てているのですが、とてもお利口なタイガルに育っています」


「おお!ポルルか!」


「なんと!タイガルを使役している程の動物使いの方ですか!」


「はい、毎日のように私と一緒に大人しくお風呂にも入りますし、モウム達の群れの中に入っても、モウム達は驚かず一緒に仲良くしています、モウムのおっぱいも飲ませてもらっています」


「あの気性の激しいタイガルをそこまで・・・これはかなり有望な人物ですね」


「確かにポルルの母親はかなり腕の良い動物使いの冒険者だった」


「私もなるべくサポートします」


「そうか、タダノのサポートがあるならば、何かあっても安心だな」


「ええ、それは素晴らしいです」


「でも、その前にポルルとウォルゼルさんの了解を取らなければなりません」


「分かった、お袋の説得はオレからも援護する、タダノはポルルを説得してみてくれ」


「分かりました」


「いやはや、それにしてもお前さんが来てからというもの、どんどん目まぐるしく物事が変わっていく、おかげで毎日退屈しなくて助かるぜ」


 このようなやりとりの後、冒険者ギルドを後にして宿屋へと戻ることにした。共同風呂の脱衣所を覗いてみるとトラがチョコンと座って大人しく待っていたので、近づいて「大事な話しがあるんだ、ポルルを呼んできてくれるかい?」と言ってみたところ「ギャウ!」と返事をして裏口に向かって走り去っていった。


 程なくしてトラがポルルを連れてやってくると、ポルルはキョトンとした顔でこちらを見た。


「実は折り入ってポルルに頼みたいことがあるんだ」


 ポルルはコクリと頷いた。


「コレ・・・なんだけど・・・」


 リュックを開いて中を見せると、ポルルは近づいて中を覗き込んだ。トラも一緒に覗き込んだ。


「実はコレはワイバルンの卵で、さっきギルドでウォルロッドさんと生き物に詳しい職員の人と話しをしてきて、出来ればポルルに面倒を見て欲しいんだ」


 ポルルは目を大きく見開いて驚いた。トラも大きく見開いて「ギャウ!」とひと鳴きした。


 私は失礼しますと心の中で詫びながらポルルの情報を確認した。


-------------------

ポルル

??歳女性

レベル:1

生命力:1

魔法力:0

持久力:1

攻撃力:1

防御力:1

素早さ:1

幸運度:1

魅力:1

魔法技能:0

異常耐性:0

【スキル】

動物使いLv3

力持ちLv1

-------------------


 あっ!動物使いのレベルが1から3になってる!きっとトラを育てたからレベルがあがったんだ!


 私はつい表情に出てしまい、パァッと明るい笑顔の表情をしてしまった。


 そんな私の表情をポルルはまじまじと見つめており、ハッと気づいた私は「ポルルなら出来るよ、僕もサポートする」と力強く言った。


 すると、背後から「タイガルの次はワイバルンかね、いったいアンタはウチの宿を猛獣の宿にする気かい?」と言ってウォルゼル婆さんが近付いてきた。


 うっ!という表情をして、言葉が詰まってしまったが、今しがた息子から伝書鳥が届いたと言い、動物専門のギルド職員からも、ワイバルンの使役に成功した暁にはこの町に多大な恩恵をもたらすことは間違いなく、ギルドからも全面的に協力するから是非ともお願いすると頼まれたとのことだった。


「何やら大人達は勝手なことを言っているようだがポルル、お前はどうしたい?大勢の冒険者達を殺したおっかない猛獣をお前は育てたいのかい?」


 ポルルはリュックの中の卵に顔を近づけ、そして卵の表面に耳を付けて目を閉じた。


 しばらくその様子を静かに見守った後、ポルルは静かに卵を優しく撫でてからそっと離れ、ウォルゼル婆さんの目をしっかり見てコクリと強く頷いた。


「分かった、でもそうなると布団干しは他の子にやってもらわないとね」


 えっ!と内心で少しだけ残念な気になったが、別の子が布団を干してくれるのならまぁいいかと思うことにした。


 ともあれ、ポルルがワイバルンの世話をしてくれるのなら大いに安心だ。勝手に持ってきてしまった責任として自分も出来る限り全面的にバックアップしよう。


「で、その卵、孵化するまでどうするんだね?」


「えっと・・・夜は自分が抱いて寝ます」


「大丈夫かい?アンタ、寝返りうって卵を潰しちまわないだろうね?」


「き、気を付けます」


「朝から夕方まではお日様にあてておけばいいのかね、それならまぁ大丈夫だろうけど、孵化してからが大変だろうね、大きくなったらエサも相当大変だろうよ」


「依頼で何かの討伐とかでエサ代わりになりませんかね」


「まぁ強くなればそれも出来るだろうね、あっ、そしたらポルルも冒険者になって自立出来るようになるかもしれないね」


 ポルルの表情が明るくなりコクコク頷いた。


 なるほど、冒険者ポルルか!それは良い、トラが大きくなって強くなれば二頭の猛獣使いで大分稼げるようになるかもしれない。それまでは付き添いで自分が一緒に行ってもいいかも。


 ウンウンと自分も頷いて冒険者ポルルの未来の姿を想像して喜んだのであった。

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