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異世界小説家  作者: キクメン


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82/383

82:ワイバルン討伐

 翌朝、フル装備を整えて部屋を出て玄関に向かうと、ウォルゼル婆さんとポルルとトラが待っていた。


「行くのかい?」

「はい」

「絶対に生きて帰ってくるんだよ」

「絶対に生きて帰ってきます」

「ギャオウ!」


 今にも泣き出しそうな顔のポルルの前で私はしゃがんでしっかりと言った。


「絶対に生きて帰ってくるよ、信じて、僕は必ず生きて帰ってくる、そしたらまたトラ一緒にモウム達のところに行こう」


 ポルルはコクリと頷いた。


「それでは行ってきます」

「行っといで」

「ギャウゥ!」


 それからまずは朝食を食べに飯屋に行くと、なんと朝から大ヌタルモドキの高級部位のステーキが出てきた。


「アンタだけの特別な朝食だ、前祝いとして食ってってくれ!」

「ありがとう!」


 遠慮なくたらふく食べて弁当を3っつとナンに似たパンと干し肉を沢山買って飯屋を後にした。


 そして大門に行くと一際身体の大きいウォルロッドとその家族、門番たち、冒険者達、ギルド職員達、道具屋の店主のトルバノ、防具屋の店主のダルカルと彼の息子、武器屋の店員と恐らく店主と思われる人物などが勢揃いしていた。


 全員から熱い激励をもらい、ウォーッ!という咆哮を3回して、多くの人達に見送られながら大門を後にした。


 それから私は隠すことなく最初から全力で駆けだした、あっという間にどんどん小さくなっていく私を見てあの速さなら万が一負けても逃げ切れるだろうと思ってくれたに違いない。


 かなりの駆け足で進んだので2時間程で山の麓に到着した。前回アイスクリスタル採取で山登りしたので、今から登れば真夜中過ぎには山頂に到達するだろうということが分かっている。


 他の冒険者達には申し訳ないが、私にはポータルゲートというチートアイテムがあるので、いくらでも休憩して身体を休ませることが出来るのだ。


 しかもさらにずるい使い方としてポータルゲートを設置したままワイバルンと戦って、危なくなったら逃げて回復したり戦闘中にも関わらず逃げて休憩するなどという方法もあるのだ。


 なのでいったん山頂前に現実世界に戻ってグッスリ眠って時間調整を行い、異世界の朝に山頂に到着するように行動するつもりだ。


 そうして私は登山を開始した、いつでも安心安全なお爺さんの家で休めるので、最初から体力温存など度外視でガンガン全力で登った。だがその分腹が減るので途中おやつ休憩が必要だった。


 そうして登山途中にロックジャガルに行く手を遮られることもなく、当初の計画通り夜には山頂手前まで到着した。そこで現実世界に戻って風呂に入って疲れを癒してグッスリ寝た。


 明けて翌日、すぐにでも異世界に戻りたいところだが時間の流れが違うので、現実世界で2日程時間調整する必要があった。なんとももどかしいが仕方がない。


 郵便受けを見ると回覧板が入っていたので、隣の家にまで届けに行った。これから町にとっての最大脅威の相手と挑むというのに、回覧板を運ぶというギャップに我ながら苦笑した。


 そうして田舎なので何事もなく2日間が経過したところで異世界に戻り、いよいよワイバルンとの戦いに挑むことにした。


 山頂を見てみたがワイバルンの姿はなく、これは下手したら山頂で何日か過ごさないといけないかもしれないなと思いながら山頂を目指して進んだ。


 間もなく山頂というところで地図上に赤いマーカーが出現した。私は背を低くして姿を隠せそうな岩伝いに移動して近づいた。


 山頂は間違いなく人の手によって平らに整地されたと思われる状態になっていた。恐らく気球や人力で物資を運搬する際に利用するためだろう。


 その場所の真ん中でワイバルンは巣を作っており、ロックジャガルをついばんで食べていた。


 困ったことに山頂には一切身を隠す場所はない。仕方がないのでいったんワイバルンの背中側に回って背後から静かに近づくことにした。


 静かに身を潜めて音を立てないようにそっとワイバルンの背後から近づいた。情報情報と念じてどうか情報が確認出来るまで気付かれませんようにと祈りながら近づいた。


 ワイバルンはロックジャガルの肉をついばむのに夢中であり、その血肉の匂いで私の匂いがかき消されていると思った。


 近づくにつれてその大きさがこれまで戦ってきたものの中で最大級であることが分かった。それは大人7人乗りの高級ミニバン程もある大きさだった。翼を広げるともっと大きいだろう。


 さらに近づくとロックジャガルをついばんで肉を裂いたり骨を砕く耳を覆いたくなる程の嫌な音が聞こえてきたが、そこで待望の情報が表示された。


-------------------

ワイバルン(希少)

レベル:7

生命力:70

魔法力:0

持久力:70

攻撃力:7

防御力:7

素早さ:5

幸運度:0

魅力:0

魔法技能:0

異常耐性:0

【特殊】

毒射出

-------------------


 なるほど、確かにそこそこ強いというのが分かった。恐らく初撃の一撃で倒すのは無理だろう。そうなると厄介だ、ヒットアンドアウェイ戦法で空に逃げられたらこちらの攻撃を当てるのが難しくなる。


 しかし本当にそうか?相手はスライムや以前戦ったロックゴレムと違って基本的には生き物だ。いつものように眉間に槍を突き刺せば死ぬのではないか?こちらの攻撃力の方がワイバルンの防御力を上回っているから槍が突き刺さらないということはないと思うが・・・


 そしてもう一つ生き物であるという点で見逃せない重要なことを思い知らされた。既にワイバルンの対象察知距離に入っていると思うのだが、ワイバルンはロックジャガルを食べることに夢中でこちらに気付いていないのだ。


 こうなるとやはり生き物としての弱点である脳への攻撃はかなり有効だろうと自らに言い聞かせて、いよいよ私はこの機を最大限に活かして攻撃することにした。


 私は大胆にも地面にいるワイバルンに対して空から攻撃をした。


 私は空高くジャンプした。目測を誤れば完全な空振りの奇襲失敗になりこちらが危うくなるが、それでも一心不乱にロックジャガルをついばんでいる今ならば上空からの落下に合わせて脳天を突き抜けられると考え思い切ってジャンプした。


 山頂のさらに上の上空に高らかに飛び上がると、目の前に美しく燃えるような朝日が燦々と輝いていて、それが丁度良い具合に私の影を消してくれた。


 一瞬がとても長く感じたが、私は目測と勘だけで飛んだにも関わらず、まるで現代兵器の精密スマート爆弾のように音もなくワイバルンの脳天めがけて垂直自由落下した。


 次の瞬間まるで手応えもなく槍の先端はワイバルンの脳天に吸い込まれ、その後でようやく確かな手応えならぬ確かな足応えが伝わった。要するに私はワイバルンの頭の上に立っていた。


 ワイバルンは大暴れして私を振り落とそうとすることはなく、そのまま大空に羽ばたいて私を遥か上空から落とすこともなく、静かに力なく首を下げて大きな頭を地面につけた。


 そしてピクリとも動かなくなった。


 目の前上部に表示されているゲージを見ても生命力ゲージが一気に0になっていた。


 現実世界での時間調も含めて麓からここまでおよそ3日、しかしワイバルンを目にして倒すまでに要した時間はわずか数分、あまりにもあっけない勝利だった。


 ゴドルム村一の槍使いの戦士の命を奪い、ゾンデ出身の腕の立つ魔法使いの命を奪い、ウォルロッドの冒険者人生を奪い、何十年もの間、町と中央大陸を繋ぐ交易ルートを奪い続けた大いなる災いの脅威は、どこからともなく現れた一人の青年によっていとも簡単にあっという間に倒された。

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