79:最高の服
美味しい朝食をタップリ食べて、心地良い独り占めの朝風呂も入ってすっかり気分もリフレッシュしたので、今日は待ちに待った最強の防護服とそれなりに待ち遠しかった最高級の礼服を取りに行くことにした。
冒険者相手の道具屋の方が朝早くからやっているので先に道具屋に行って待望の防護服を取りに行くことにした。
道具屋に入ると、店主ダルカルの息子がすぐにやってきて、今父を呼んできますのでどうぞお待ちくださいと行って店の奥へと消えていき、代わりの店員が椅子とお茶を持ってきてくれた。
お茶を一口すする間もなくダルカルがすぐにやってきて、店主直々に自ら持ってきた防護服を息子と一緒に手に広げて見せてくれた。
「我が店と我が店が抱える職人たちが総力を挙げて製作させていただきました、是非ご試着いただき、少しでも気になるところがございましら、どうか遠慮なく申しつけ下さい」
「分かりました」
「こちらへどうそ」
そうしてダルカルの息子に案内されて試着室と呼ぶには広い部屋へと案内されて、待望の最強の防護服を着た。
それはこの世界では珍しいと思われる上下一体型のツナギの服で、これの上に防具を装着することを想定して身体にフィットする少しタイトな服だった。
防具で覆われない皮膚の部分は何かの革で覆われており、首も保護するため首元も覆われていた。
そしてヒジやヒザの部分には金属プレートが縫い付けられており内側にはポケットがついていて厚みのあるクッションが入れられていた。
各所に革や金属が用いられていたが、関節部分と体側には伸縮する素材が用いられており動きを阻害することがなかった。
若干重く異世界にはまだジッパーがないので前ボタンが多くて少し着るのが面倒だが、動きやすくそして何より守られてる感が大いにした。
服の細部の作りを見て感動感激したり、着心地を確かめて満足して、そこでようやく私は肝心の「情報」を確認した。
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防護服
防御力:5
耐久性:5
損耗率:0%
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「これはすごい!胴当てに近い防御力がある!」
「さすがタダノさんです!着ただけでそこまでお分かりになりますか!」
ダルカルも入って来て、私の姿を見て大いに喜んだ表情を見せた。
「いかがでしょうかタダノ様、どこか気になる点はございますでしょうか?」
「いえ、全くありません、驚くほど私の身体にピッタリ合っていて、動きにも全く支障がありません」
「それは良かった、しかし普通の防護服と異なり服の慣らしが必要かと考えております、その服の上に防具を装着して実際に槍を振るっていただき、さらなる調整をさせていただきたいと考えております」
「なるほど分かりました、早速宿に戻って防具を装着して槍を持ってきます」
「武器屋に話しを通してありますので、武器屋の裏庭の試し場に来ていただけますでしょうか」
「分かりました」
そうして私は防護服を着たまますぐに宿に戻りフル装備を整えて武器屋へと向かった。その時点で既に動きやすいことが分かった。そして防具とのフィッティングの相性もバッチリだった。
フル装備で武器屋に入ると武器屋の店員とダルカル達がいて、すぐに裏庭にあるお試し場へと向かった。
早速鞘をつけたままの槍を構えて、まずは軽くステップワークをして槍の突きを繰り返した。ほんのわずかに装備重量の重さを感じるが、素早さが阻害されることは全くなかった。
少しづつ可動範囲を広げて、大きく足を前に出したり、上半身を大きくねじったりして違和感がないか確認し、全く問題ないようなのでほんの少しだけホンキを出して実戦を想定した動きをした。
またしても瞬く間に土埃が舞い上がり、周りが良く見えなくなってしまったので動きを中止せざるを得なくなった。
しばらくしてようやく土埃がおさまると、ダルカル達だけでなく、店で買い物をしていた冒険者達も全員出てきて口と目を大きく開けて驚きの表情をしていた。
「いや、ハハハ・・・すいません、お騒がせしました」
その一声でハッと我に返ったダルカルと息子が近づき、「失礼します、防具と防護服の状態を確認させていただいてもよろしいでしょうか」と聞いてきたので「どうぞ遠慮なく気が済むまで確認して下さい」と答えて、彼等のしたいようにさせることにした。
ダルカルと息子はどこか防具が緩んでいるところはないか、無理に力がかかっているところはないかなど調べ、さらに槍を持って構えている姿勢をとるようお願いされたので、構えの姿勢をとって静止すると、防護服のあちこちを触って確認した。
武器屋に礼を言ってまた防具屋に戻り、試着室にて普段着に着替え、防具一式を防具屋に渡した。
「これからさらに調整を加えます、防護服のクッション材の厚みの調整と伸縮素材とさらに強化する部位の調整などを行いますので、大変申し訳ないのですが1日いただけるでしょうか?」
「はい、構いません、是非お願いします」
「有難う御座います、すぐにこれから取り掛かります」
こうしてさらなる改良をしてもらえることに喜びながら防具屋を後にした。
次に高級服屋へと向かった。店に入るとすぐに店主がやってきて、やはり試着室と呼ぶには広い部屋へと案内された。差し出された礼服は上下のスーツとベストとシャツだったが、スーツにもシャツにも襟がなくベストはスリーピーススーツと違ってジャケットの内側に着るのではなく、ジャケットの上に羽織るようだった。
色合いは黒に近いグレーで光の当て方によって紫っぽくも見え、肌触りも含めて非常に上質で品のある生地だというのがすぐに分かった。
ベストにはとても精工で複雑な刺繍が施されており、シャツにも首元や袖口などに刺繍が施されていた。
唯一残念な点があるとすれば、それはモデルの私の外見が礼服に見合った美しさがないことだった。それでもかなり細マッチョになったボディラインだけはしっかりと及第点を取れているようには見えた。
「いかがでしょうか、どこか気になるところはございませんでしょうか?」
「全くありません、私の要望通り派手さが抑えられていてもしっかり上品で上質なものだというのが良く分かります。これならどこに着て行っても恥ずかしくないです、そして本当にピッタリと私の身体に合っていて着心地もとても良いです」
「有難う御座います、気になる所がありましたらいつでもお申し付けください」
その後この礼服を入れて保管する通気性の良い袋とハンガー、出先でボタンが割れたり欠けたりした時の替えのボタンと服が破れた時や穴が開いた時の緊急時用の同じ布生地と簡単な裁縫道具が入ったケースを渡されて店を後にした。
もちろん出先から戻った時はいつでも無償で修理することと、体型が変わった際のお直しも無償だとのことだった。ちなみに洗濯は普通にしてもらって構わないとのことだった。上品な見た目で上質な生地ではあるが丈夫で長持ちする生地だそうだ。
しかし改めて考えてみるとなんとなく入った店で思い付きで買ってしまった高級服だが、果たしてこれを着る機会はあるのだろうか。さすがに現実世界の冠婚葬祭で着るにはデザイン的に浮くので着るわけにはいかなさそうだ。結婚式ならワンチャンありかもしれないが。
ともあれ、この世界で着るには申し分ないとても上品で上質な服が手に入ったので気分は良く、いったん宿屋に戻ってアイテム格納バッグの中に入れてあるコンテナボックスに丁寧にしまってから昼食を食べに飯屋へ行くことにした。




