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異世界小説家  作者: キクメン


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65:レベル20

 西のハデレス神殿から南西に行ったところにある図書館の地図にも記載されていないとても小さな山には扉があり、全力を振り絞ってなんとかして片側の扉を開けてみると赤黒い石の回廊が出現した。


 今回の回廊はなだらかに傾斜していて地中へと向かっているようだった。


 色合い的にも禍々しい感じがして、何故か胸がざわつきここには入ってはいけない感じがした。


 扉の前でこの先がどうなっているのか見てみたいという思いと、危険な感じがするから入ってはいけないという思いが交錯し、どうしたものかと考え込んだ。


 足を踏み入れた途端扉が閉まり、自分では到底相手にならない敵が出現してポータルゲートすら機能しないとか、死の罠が大量に仕掛けられた大迷宮が現れて、やはりポータルゲートが使えず食料も調達出来ないなど、色々なマイナスネガティブ想像力が働いた。


 それでもやはり見てみたい。ちょっとだけでも見てみたい。そこで私は90度だけ開いた向かって左側の扉に対してパッと斜めにサイドステップしてすぐに戻るのを試してみようかと思った。


 かなり危険ではあるが、扉が閉まる速度がこれまでと同じなら、今の私の最速のサイドステップならばパッと入ってサッと戻ることが可能ではないかと思ったのだ。


 私は意を決してそれを実行に移すことにした。砂で滑ってズッコケたらシャレにならないので、ポータルゲートを取り出して現実世界に戻り、箒を持ってきて足場の砂を掃いよけて、ジャンプしてブーツの底の砂も払い落した。


 何度も頭の中でイメージしてから深呼吸して覚悟を決めて、サッと斜め右前にステップして、即座に元居た位置に戻った。扉は全く動かなかった。


 同じことを5回程繰り替えてみたが扉は全く動かなかったので、今度はパッと入って一瞬だけ停まってから戻るのを繰り返してみたのだが、やはり扉は全く動かなかった。


 少しづつ停止する時間を長くして、どうやらここの扉は閉じないらしいことが分かったので、扉の中に入ってから地図と念じてみた。


 目の前に地図を表示させると、真っ直ぐ一本道が続きその先には大きな部屋が表示された。これまでのスライム部屋よりも倍ほどもある大きな部屋だった。


 その部屋はレベル20と書かれていて、部屋の中央には大きな赤い▲のマークが描かれていた。


「レベル20ゥ!?」

 思わず口から大きな声が出てしまい、赤黒い石の回廊内をこだました。


 どうしたものかと考えながらも私はとりあえず回廊を進んでみることにした。後ろの扉が閉まらなければいいがと心配したがそのままだった。


 赤黒い石の回廊を歩き進むこと5分、目の前には高さおよそ5メートル程もありそうな大きな扉が出現した。向かって左側の扉を押してみたがビクもしなかった。全力で押してもビクともしなかった。


 まぁ自分の今のレベルからすると当然かと納得して、私は来た道を戻ることにした。


 扉を抜けて外に出ようとしたところで立ち止まり、回廊内でもポータルゲートが利用出来るか試してみたところ、なんとただの鏡になっており、自分の姿が映し出されているだけだった。手を当ててみてもヒンヤリとした鏡の手触りがあるだけで、当然鏡の中の世界になど入ることは出来なかった。


「まぁそうだよね」

 私は納得して外に出た。お昼ご飯を食べるには丁度良い頃合いなので、ポータルゲートで現実世界に戻ってお弁当を食べることにした。


 お爺さんの家の中に入って時刻を確認すると夜中の0時で、異世界では何日も過ごしているのに現実世界ではまだ1日も経過していないことにあらためて、ちゃんと時間管理しないといけないなと思った。


 出来立てホヤホヤのララルゥ肉の切り落としが入ったミートサンドを食べながら、安物でいいのでデジタルではない機械式の針時計を買おうと考えたところで、以前時間潰しで家の中の大掃除と物の整理をしていた時にお爺さんの古い腕時計があったことを思い出し、お弁当を食べ終わった後で30分程あちこち探していたらお目当ての腕時計を見つけた。


 側面のネジを回せば動く完全な機械式の腕時計で、多機能腕時計でも高級腕時計でもないが、丈夫で長持ちしそうな腕時計だった。革のバンドではなく金属製のバンドで錆びもなかった。早速装着しようと思ったが、こんなものをして異世界の町の人、とりわけ道具屋辺りにでも見られたら大騒ぎになりそうなので、針の音が聞こえないようにハンカチに包んで上着のポケットにしまった。


 食後ステンレス製の水筒の中に入った泉の水を沸かしスティックカフェオレに注いで飲むと、やはり程なくして眠くなったので仮眠をとった。その後目を覚ますと午前4時過ぎになっていた。私は異世界に戻り町へ帰ることにした


 行きと違ってそれほど飛ばさずゆっくり駆け足で帰り、途中おやつのナンに似たパンを食べて、恐らく午後3時くらいの時間に大門に到着した。


「おおタダノ!大分早かったな!やっぱり足しか壊せなかったのか?」

「いえ、全部粉々になるまで壊してきました、額にあった魔法宝石もキズ付けることなく取って持ち帰ってきましたよ」


「なんだって!?」

 門番が大声を出すので注目の的になったが、とりあえずギルドに報告に行くと言ったのですぐに通してくれた。


 冒険者ギルドの受付カウンターでもギルド職員に門番と同じ反応をされたが、完全破壊してきたと言いながらリュックの中のアイテム格納バッグからエメラルドグリーンに光り輝く魔法宝石を取り出して見せたところ、ギルド職員は絶句してすぐにウォルロッドを呼びに行った。


 すぐにギルド職員がやってきて「先にいつもの個室に入っていてくれとのことです、こちらの魔法宝石は少々お預かりしてもよろしいでしょうか?」と言ってきたので了承して、勝手知ったるVIPルームへと向かって行った。


 一人で勝手にVIPルームへ入ると、程なくしていつもの女性職員がいつものシナモン入りミルクティーを持ってきてくれた。「間もなくギルド長もやってくると思いますので、しばしおくつろぎください」と言って退室していった。


 私はその間帰りに立ち寄ったレベル20の部屋について考えた。果たしてあの部屋には何がいるのか、この世界とどう関係があるのか、古代の遺跡、古代にいたらしい異世界人と何か関係があるのか、やはり近いうちにこちらで過ごした時間調整を兼ねて、じっくり現実世界の家で歴史書を読む必要があるなと考えていた。


 そのように考え事をしていると、ウォルロッドが入室してきた。


「おお、タダノ待たせてすまん、うん?なんだ、何やら難しい顔をしているな」


「あっ、ウォルロッドさんこんにちは、ええ古代の遺跡や古代の人達のことを考えていたのです」


「なるほど、神殿に行ってロックゴレムを見てそう思ったのか」


「ええ・・・」

 申し訳ない、確かにそれも気になるが、それよりもレベル20のことで頭が一杯だったのだ。


「もう何千年も前のことだ、もっと古い時代のものだと言う学者もいる、だが何百年も前に既に金目の物やら貴重な物などは全て持ち去られ、世界中のあちこちに金に返られて出回ってしまっているので、今となっては詳しく調べることも出来ず、ほとんど謎のままだ」


「そうでしたか・・・当時栄えた町などもすっかり風化してなくなっているのでしょうか?遺跡や神殿の跡は地図に記載されていますが、当時の町の跡などはどこにも記載されていませんでした」


「そう、タダノの言う通り、完全に風化して今ではどこが町の跡だったのかも不明なままだ。そして先ほど言った通り、金銀財宝の類は何百年も前にすっかり掘り尽くされてしまったので、当時の町の跡を示す手がかりなどもほとんどなくなってしまった」


「なるほど・・・」


 実際現実世界の地球でもそうなのだろうか、何千年前の遺跡調査ともなるとその後の人類の歴史で、荒されたりして調査不明の場所は多いのかもしれない。


「何千年も昔の古代の事は分からないが、200年前程度の昔のことならば分かるかもしれないぞ」


 ウォルロッドはそう言って、とても貴重な高級品を入れるような非常に上質で美しい箱に納められた魔法宝石を机の上に置いて語りだした。

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