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異世界小説家  作者: キクメン


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61:図書館

 道具屋のトルバノは店へと戻っていき、私は防具屋で買ったばかりの素晴らしい品質と履き心地の革靴に大満足してまたしてもスキップしながら昼食を食べに飯屋に行くことにした。


 飯屋に行くと看板に手書きで「ララルゥ肉の焼きそば150デン」とあったので、早速それを注文することにした。ララルゥって何ですかと尋ねると空を飛べない大きくて獰猛な肉食の鳥だとのことで、先日5等級冒険者が倒してきたとのことだった。なるほど、以前5等級冒険者依頼書が一枚なくなっていたがこれのことだったのだなと納得した。


 異世界にも焼きそばがあるのだなぁと感心しながらお盆を持って空いてる席に座って早速食べてみたところ、焼きそばというよりは塩味の焼うどんといった感じだった。もちろん味は抜群だ。


 ララルゥ肉は確かに鶏肉なのだろうが旨味が断然違った。すごく美味しかったのでおかわりした。ちなみに一緒についてきたララルゥの鳥ガラスープも絶品だった。


 午後は図書館に行くことにした。冒険者ギルドで聞いた胸が躍るような情報の数々、それらの詳細を知るべく私は図書館へと向かった。


 道行く人に図書館はどこですかと尋ねようと思ったが、普通に冒険者ギルドの建屋があるメインストリートを歩いているとすぐに建物の入り口横の壁に本の図柄が彫られて大きく「図書館」と書かれていた建物が見つかった。


 早速図書館の中に入ると、利用者はほとんどいないようでパッと目につくだけでも3人くらいしかいなかった。受付カウンターに司書らしき人がいたので一礼して近づくと静かな声で「失礼ですが、あなたは冒険者タダノ様でいらっしゃいますか?」と尋ねられたのでそうですと応えた。


 受付の人は眼鏡をかけていた。少し失礼ではあるがこの世界も眼鏡があるくらいには文化というか技術が進化しているのかと感心した。同じく失礼ではあるが、利発というか聡明な感じのする落ち着いた女性の方だった。


「タダノ様のご活躍はこちらでも聞き及んでおります、数々の貴重な戦利品のご提供、図書館としても貴重な情報を得られましたので、私からも御礼申し上げます」


「そうだったんですね」


「はい、目下本職人たちが本への追記作業を行っているところです」


 なるほどと感心し、お互い静かな声で会話を続けた。そして図書館の利用方法と貸出に関する説明と費用も聞いた。1冊100デンで3日まで借りれるとのことで、最長で10日、その場合は本が汚れた時の修繕費込みで千デンだった。もちろん修繕費では足りない程に本を汚したり破ったりした場合は別途請求するとのことだった。


 司書から説明を聞き終えた私は早速本を物色することにした。図書館というからかなりの数の本が館内の棚にズラリと陳列されているのだろうと想像していたのだが、驚くほど本の数は少なかった。読書スペースは広くてかなり余裕があるのだが、本の棚は一つしかなく、恐らく100冊あるかないかという程しかなかった。


 ジャンルごとに仕分けられており、一番多いのは歴史で次にノンジャンル、次に動物と植物と鉱石と宝石、次に料理、さらに防具、武具、装飾品、最後に一番少ないのが魔法だった。魔法は2冊しかなかった。


 とりあえずそれぞれのジャンルを手に取ってパラパラとめくり、歴史と魔法は文字が多いがそれ以外の本は図解が多く面白そうだった。


 手に取ってみたところどれも同じ本が2冊ずつあるので、実質50冊あるかないかという程の少なさだった。先ほど見た魔法の本は結局一冊しかないということである。さすがにこうした情報分野においては現実の現代情報化社会の方が遥かに進んでいた。


 とりあえず歴史書の中で「歴史I」と書かれた本を手に取り、読書スペースに腰かけて軽く読んでみたところ、そこでようやく初めてこの町の名前を知ることが出来た。


 この町の名前は「始まりの町」だった。


 その理由は他の国々よりも相当に古い古代の遺跡が大量にあるからだった。この地こそ人類の起源、文化発祥の地であると人々から認識されていた。


 そして古代の人々が天然資源を取り尽くしたために、森がなくなり水が枯れ、豊かな動植物がほとんど絶滅して、今の荒野になったのだと記されていた。これは読んでて十分に納得のいく説明だった。


 今軽く読んでみた歴史書もそうだが、ここにある本は冊数は少ないものの一冊一冊がとても分厚くページ数もかなりありそうなので、これは是非とも現実世界の家で飲み物を用意してじっくりゆっくり読んで現実世界での時間調整に使おうと考えた。


 いったん軽く読んだ歴史書を本棚に戻したところで、棚の後ろの奥の壁に大きな地図が貼られているのに気が付いた。そしてその壁の下の机には巻物が沢山置かれていた。恐らく地図だろう。なるほどここでは地図も売られているのかと大いに興味が湧いて近づいてみた。ちなみに小さな地図は千デンだった。


 壁に掛けられた大きな地図を見るとこれまで行った場所に加えて他にも色々な場所が記載されていた。そしてなるほど確かに至るどころに神殿やら遺跡の印があちこちに記載されていた。


 私は「大きな地図」と念じて自分だけが目にすることが出来る地図を表示させ、実物として存在する大きな地図をじっくりと一つ一つ目で見て確認していくと、その情報が私だけの地図にどんどん反映されていった。申し訳ないので後で地図を一つ買って行こうと思った。


 色々と見ているうちに私が最初に訪れたゴドルム村の東の方に、恐らく私がスライム部屋のチュートリアルを終えて出現した遺跡もあった。


 なんとなく、私は古代の遺跡の何か凄い魔法とか何かが作用してこの世界にやってきたのかもしれないなと想像した。


 ひととおり私だけの地図の更新もしたので、巻物の地図を一つ手に取り、もう一度本棚に戻って、今日借りていく本を物色し、歴史と動物と防具の三冊を手に取って受付カウンターに持っていった。


 エルフなどの他の種族に関する本と、武術のような戦闘技術的なことが記載された本はないかと司書に尋ねたところ、ノンジャンルのコーナーから二冊持って来てくれたので、それも借りることにした。地図の分と合わせて合計で千五百デンを支払って図書館を後にした。


 それからまた部屋に戻ってみると干されたばかりのベッドの布団が敷かれていて、机の上の一輪の花も新しいものに取り変えられていてとても良い香りがした。


 夕食の時間まではまだもう少しあるので、まずは持ち物の整理をすることにした。これからは人目のこともあるのでなるべく道具屋で買ったリュックを持ち歩くようにして、アイテム格納バッグの中に入れていた現実世界のリュックを取り出し、そのリュックの中のものを取り出して道具屋で買ったリュックかアイテム格納バッグの中に入れて、現実世界のリュックはお勤めご苦労ということでお爺さんの家に後で戻すことにした。


 現実世界のリュックは石油化学合成繊維素材で出来ているので見た目からして異世界では目立ってしまうのと、異世界ではまだ見たことがないジッパー、それもプラスチック製のものが付いているので、下手に道具屋とか職人に見られでもしたら、かなり突っ込まれることは必至だ。


 ステンレス製の保存性抜群の水筒もこの際お役御免とすることにした。もちろん理由はアイテム格納バッグがあるからだ。これさえあれば冷たい水も温かいお茶もそのままの温度でいつまでも保存出来るのでこれも現実世界の家に戻すことにした。


 現実世界のリュックには薬草と思われる花を咲かせた草がまだ何本か入っていたので、冒険者ギルドに持っていくことにした。帰りはそのまま今日も高級料理店に行って恐らくララルゥ肉を使った料理があるだろうからそれを食べてこようと考え、思わず涎が出そうなった。


 そうしてそろそろ夕方近くなったので、ギルドに立ち寄った後に防具屋に行けば素早さ向上の魔石が縫い込まれたブーツも仕上がっていることだろうということで、道具屋の大きいリュックを背負って、棒を持ってまたしても私は出かけていった。

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