58:ゴーレム
防具屋にて最高の防護服を注文し、本日2度目の入念な採寸が行われ、前回購入した防具の下に着ることを考慮に入れた防護服の仕様を店主であるダルカルが直々に細かく決めていった。
その際、ここのしつらえは誰誰に、ここの素材は何某にといった具合に、テキパキと名指しで指定していった。これは相当期待できそうだ。
気になるお値段の方だが、ダルカルは少し目を閉じ、息子の店員も緊張そうに見守り、次に目を開けてこう言った。
「・・・150万デン・・・ほどいただけますでしょうか?」
私の前に息子の店員が「150万デン!?タダノ様に買っていただいた防具一式に近い値段ですよ!?父さん!」
「うむ、つい私も最高の防護服を作りたくなってしまいいささかやり過ぎたと反省している、ウォルロッド殿の時の二の舞はしたくなくてな・・・だが、その代わりかつてない程に最高の防護服になるぞ」
「是非それでお願いします!」
「「 えっ!? 」」
「その・・・防具の下に着る防護服で150万デンですぞ・・・」(ダルカル)
「ええ構いません、むしろそれ以上かかっても良いくらいです、それで命が買えるのなら安いものです!」
「な・・・なんというお方だ、あなたならばいつかあのワイバルンでさえ倒せる気がします、いや必ずや倒せることでしょう!息子よ、早速手配するのだ!我が店始まって以来の最高の物を作り上げるぞ!」
「分かりました!早速職人たちを押さえます!」
そうして防具屋を後にした、出来上がりにはやはり10日かかると言われた。そしてここでも全額先払いで支払ったので、親子ともども目を丸くして驚いていた。
結局午後はまるまる服の爆買いに時間を費やし、夕暮れ間際にギルド建屋に入って掲示板を確認した。6等級冒険者の掲示板には2枚の依頼書しかなかった。
そのうちの一枚を見てみた。
-------------------
【6等級冒険者向け】
~ ロックゴレムの破壊 ~
【内容】
西のハデレス神殿の守り神
ロックゴレムの破壊をお願いしたい
後日ギルド職員の立ち合いで確認する
【期限】
なし
【報酬】
完全破壊の場合600万デン
部位破壊の場合は
箇所と破損度によって算出する
-------------------
「ゴーレム来たァーッ!」と、当然心の中で喜び叫んだ。
すぐに依頼書を持って、受付カウンターに持っていった。
「今日はタダノさん、今日はまた色々とお買い物したようですね」
「はい、実は恥ずかしい話、服が今着ているものしかないという有様でして、色々と服を爆買いしました」
「ハッハッハ!爆買いですか、いいですね!面白い言葉です!」
「はい、田舎出なもので、つい色んな服を買ってしまいました」
「なるほどそうでしたか、いや分かる気がします、服屋に行くとつい色んな服が欲しくなっちゃうんですよね」
「そうなんですよ、えっと・・・ところで、この依頼書なんですが、もう5等級冒険者用の依頼がないので6等級冒険者用のを持ってきたんですが、やはり受けられないものなのでしょうか?」
「どれ、拝見させていただけますか?・・・あっ、ゴレムの件ですね、こちらでしたら大丈夫です、タダノさんでも受諾可能ですよ」
「やった!そうなんですね」
「はい、あくまでも推奨というもので、強制ではありません、それにこちらはちょくちょく5等級冒険者の方がお受けになります」
「そうなんですか?」
「ええ、皆さん大抵ゴレムの足を部位破壊して依頼を達成なされています、ゴレムはそれほど動きが速くないので、足だけを破壊するならば5等級冒険者クラスの方にとってはそれほど危険で難しい依頼ではありません。ただその場合それほど依頼報酬は多くありません、大抵100万デン前後です」
「なるほど、ところでこのゴレムは神殿の守り神と書いてありますが、それを壊しても良いのでしょうか?」
「はい、構いません。確かに神殿の守り神として太古の昔に作られた石像だったのですが、今から2百年程前に自らを天才と自称する魔術師がゴレムに魔法を込めたところ、神殿に近づく生き物を全て殺してしまうようになったのです、その魔術師もゴレムによって殺されました、そのため誰もそのゴレムの魔法を解くことが出来ずにいるという状況です」
「なんとまぁ・・・」
「ほんと、迷惑な話ですよね、まぁ神殿にはこれといったものはなく、せいぜい観光客が見に来る程度なので特に問題ないのです。それに足を破壊すればゴレムは半年ほど自己修復のために動かなくなるのでその間は神殿観光出来ます」
「なるほど、ではむしろ完全破壊しない方がいいのでしょうか?」
「まぁ数少ない5等級冒険者の小遣い稼ぎのためにはその方がいいのでしょうが、別になくても誰も気にしないと思います、もの好きな観光客がゴレムを見れなくなるのが残念に思うかもしれません」
「ゴレムを完全破壊するにはどうすれば良いのでしょうか?」
「まだ、誰も試してみたことがないので分からないのですが、恐らく額にある宝石を破壊すれば良いと言われています」
「なるほど」
「しかしゴレムは5メートル程もあるのでなかなか額を攻撃するのが難く、投げ槍や弓や魔法で攻撃しても手でガードする上に、そもそも硬いのでキズを付けることすら難しいのです」
「そういえば弓使いの人ってここでは見たことがありません、あと魔法攻撃ってどんな魔法があるんですか?」
「弓使いは大抵エルフなのですが、エルフは森がないこの地を好まないのでほとんどやって来ません。魔法についてはやはりこの町では土地柄的に土魔法使いしかいません、昔はごくたまに中央からやってきた魔法使いが火や水の魔法を使ったと聞きます。あとエルフの中には木や風の魔法を得意とする者もいるようです・・・おや?タダノさん、随分嬉しそうですね」
「はい!それはもう!何せ田舎の出なもので、そういった話しは全て遠い世界の夢物語だと思っていたのです!」
「ははぁ・・・なるほど、そうですか・・・でしたら、今度町の図書館に行って色々調べてみることをお勧めします、中央大陸のことや、北方の魔族国境線とか、最強冒険者のことなど、色々な本がありますよ」
「行きます!行きます!絶対行きます!」
「ハハハハ!お金を払えば貸し出しも可能なので是非ともご利用ください、ギルド収益にもなるので大歓迎です」
「分かりました!」
「それではタダノさんのロックゴレム依頼、確かに承りました、ご武運を」
こうして私はギルド建屋を後にした。後半のギルド職員が発した言葉の数々がたまらなく魅力的なキーワードだらけで、これからの冒険がますます楽しみになった。
死ぬまでに一体どれほどの場所に行って冒険することが出来るだろうか、どれもこれも全部行ってこの目で見て体験したい。この世界はどこまで広いんだろうか、どんな種族や生き物がいるんだろうか。
それに魔族!魔族と来たか!会ってみたい!怖いけど会ってみたい!私はワクワクが止まらなかった。
そして図書館!この町には図書館があり、お金を払えば持ち出し可能だとのことだ。これはもう全部読んでみたいくらいだ。しかも持ちだして借りて、現実世界で読書に当てれば最高の時間つぶしになる。
こちらの世界にきてまだ1週間すら経っていないが、もの凄く世界が広がった感じだ。
正直もう少しでこなせる依頼がなくなってしまうと心配したが、これならばまだまだいくらでもこの町でも楽しめそうだ。
そうして、私はこれからの事に大いに期待して、毎晩のように行ってご馳走になった料理屋に今晩は一人で自腹で行ってみることにした。いくら高級料理店とはいえ手持ちで40万デン近くあるから大丈夫だろう。




