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異世界小説家  作者: キクメン


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54:山登り

 私は冒険者ギルドで1年以上放置されていた不人気依頼を受けることにした。


「もう少し待てば報酬額を引き上げる予定ですが、よろしいのですか?」


「はい構いません、個人的にもアイスクリスタルが欲しくなりました、あと山登りは得意なのです、体力づくりのため小さい頃から何度も険しい山を登ったものです」


「なるほど、そうなんですね!」


 そのうち嘘をつかずにはいられない体質になってしまいそうで心配になった。


「道具屋でアイスクリスタルを入れる丈夫なリュックを買われることをお勧めします、胸とお腹の位置でしっかり固定するリュックがあれば両手が塞がれることもなく動きやすく戦いやすいと思います」


「そうですね、自分もこのカバンでは心もとないと思っていたところです」


「そうでしたか、それではこちらの依頼で承りました、ご武運をお祈り申し上げます」


 ギルド建屋を出た私はすぐに道具屋へと向かった。この辺りの店はほとんど全てギルド通り沿いにあるので非常に便利である。


 道具屋に入店するなりすぐに店員がやってきた。


「失礼ではございますが、タダノ様でいらっしゃいますでしょうか?」

「はいそうです」


「ようこそいらっしゃいました、私目はこちらの店の主をしているトルバノと申します、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。して、今日はどのような物が要りようでしょうか?」


「はい、ギルドの依頼でアイスクリスタルを採取しに行こうと思っていまして、丁度良いリュックを買いたいと思っております」


「なんと!アイスクリスタルですか!分かりました、すぐに適したリュックをお持ち致しますが、どれくらいのサイズを御所望でしょうか?」


「力にはかなり自信があるので出来れば大きいものが欲しいです、でも槍で戦うのに邪魔にならない程度でお願いします」


「かしこまりました、すぐにお持ちします」


 さすがに武器屋や防具屋と違って鉄格子の中からリュックを持ってくることはなかったが、それでもやはり鉄格子の部屋があったので、後で何があるのか聞いてみることにした。


「何種類かお持ち致しました」


 そうして店主が持ってきたのは、現代の最新素材で作られた多機能リュックとは大分異なるが、それでも相当昔の時代に探検隊などが使っていたような丈夫で非常に作りの良さそうなリュックだった。


 手に取った時の革の質感と匂い、そしてしっかりと丁寧に縫い込まれた縫い目の一つ一つを見るだけで、相当に腕の立つ職人が作った名品だと一目で分かった。これはモンスターなどにやられなければ一生モノの道具になりそうだった。


 ちなみに一応「情報」と念じてみたが何も表示されなかった。


「これはかなり良いリュックですね、一番良い品はどれですか?」

「はい、まさに今タダノ様が手にしておられる物が当店で一番の品でございます」


 左右両方の肩掛けにはHの文字になるように胸で固定するベルトと、さらに腰の位置にもベルトがついていて、動きやすく身体に密着させて固定させることが出来た。これは動きやすい上に重さを分散させるのに大変効果的だと思った。


「これは良いですね、気に入りました、お幾らでしょうか?」

「はい、こちらの品は30万デンになります」


「分かりました、ところで、このお店にも武器屋や防具屋のように店の奥にとても価値のある物があるようですが、何があるか教えていただきますか?」


「はい!あの奥には色々と大変貴重な装飾品が置いてあります」


「どのようなものでしょうか?」


「はい、例えば疲れにくくなる首飾りや、危険な生き物が近寄ってこなくなる腕輪、さらに魔力を高める効果のある宝石などがあります」


「!」

 私は初めてこの世界に来て有用なアイテムを見つけた気分になった。


「幾らぐらいするものでしょうか」


「そうですね、安い物でも大体100万デンからになります」


「えぇと、有償でも構わないので商品リストなどいただけないでしょうか?」


「それでは千デン程いただけますでしょうか」


「分かりました、ギルドに行ってリュックの分と合わせてお金を卸してきます」


「かしこまりました」


 やったぞ!これは良い!ようやく欲しいと思えるアイテムを見つけたことで私は俄然お金を稼ぐ気になった。


 そうしてギルドに戻ってお金を降ろし、すぐにまた道具屋に戻り代金を支払った。その際商品リストを用意するのに1日欲しいと言われ、とりあえずリュック代の30万デンだけ支払って道具屋を後にした。


 次に飯屋に行って2種類のお弁当を2人前ずつと、分厚いナンに似たパンを数枚と干し肉をいくつか注文して買い込んだ。買ったばかりの大きなリュックに入れているように見せかけて、実はその中に入れたアイテム格納バッグに収納した。


 その後早歩きで宿に戻って、部屋に向かうと布団がこちらに向かってヒョコヒョコ歩いてきたので、壁を背にして避けてポルルが現れるのを待ち、ポルルがこちらに気付いてお辞儀をしたので、「おはようポルル」と声をかけるとポルルは胸ポケットに手を入れて10デン硬貨をこちらに差し出したので、「それは布団を干してくれたお礼だよ」と言うとまたお辞儀をしてポケットにしまった。


「今日は仕事で部屋には帰ってこないから明日は干さなくても大丈夫だよ」と言うとポルルはペコリとお辞儀をして布団を運んでいった。


 部屋に戻って棒を部屋の壁に立てかけて、二本の槍を手に取ったところで、今回は一本だけでいいかと思い直して、スライム部屋で獲得した威力の強い方の槍のみを持っていくことにした。


 ポルルが裏口から裏庭に出ていく後姿を見送り、自分も町の大門へと早歩きで向かって行った。


 大門を通過しようとしたところ、数人の門番が行く手を遮るようにしたので、「何事!?」と思ったのだが、大蛇討伐のことでお礼を言わせてくれとのことだった。


 とても気の良い冒険者達の仇をとってくれたことと、彼等の遺品を全て持ち帰ってきてくれたことに大いに感謝すると門番達が頭を下げた。その後、仕事の邪魔をして申し訳なかったと言って、すぐに道を開けてくれた。


 今日も徒歩で行くのか?と聞かれ、アイスクリスタルの採取に行ってくる、今晩は戻れないので明日戻ると伝えて大門を後にした。


 頭の中で地図を出し、速度をとても落とした駆け足でロックマウンテンへと走り出し、人気がほとんどなくなってから、人の目を気にせず飛ばして駆けだした。


 3時間ほどで山の麓に辿り着き、いよいよ登山を開始した。岩山なので鬱蒼と生い茂る草をかき分ける必要もなく、登山ルートも確保しやすくガレ場を避ければ比較的容易な道のりだった。普通の人間にはかなり登坂困難な急斜面を除いては・・・


 槍がいい具合にストック変わりになり、また、これまで鍛えてきたステップワークも大いに役に立っていて、ほぼ重力を無視して岩山に住むヤギの仲間のようにピョンピョン飛ぶように登って行った。


 登り続けること2時間、腹が減ってきたのでポータルゲートを取り出して、現実世界の家でお弁当を食べることにした。現実世界ではまだ1時間も経っておらず、薄暗い中で出来立てホヤホヤのお弁当を食べた。


 その後ふと思い出してリュックの中から水筒を取り出し、遺跡の泉のお湯をコップ一杯分だけ沸かしてスティックカフェオレを入れて飲んだ。静岡などの銘茶などでもあれば良かったが、残念ながらスティックカフェオレしかないので致し方ない。


 しかしこれが何とも絶品の味わいに激変した。なんともまろやかな味わいになったのだ。しかもどことなく甘味も増したようでもあった。あまりにも美味しいので、もう一杯分を沸かして今度は白湯のまま飲んでみた。やはりとてもまろやかでほんのり甘く、実に体の芯から癒されて五臓六腑に染み渡る思いだった。


 美味しいお弁当を食べて、さらに美味しい泉の湯を飲んで、とても心地良くなったものだから、ついつい横になってうたた寝してしまった。

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