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異世界小説家  作者: キクメン


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46:競売

 私が黒紫色の巨大なメス大サソリをドヤ顔で村に運び入れた途端、何やらただならぬ雰囲気になってしまった。


 中年女性の中でも恰幅の良い女性が大きな声で「こりゃあマルムドの葉がいるよ!ありったけ持ってきて!」と周りに叫んだ。


 すぐに近隣の村人たちは家の中に入り、何やら茶色い大きな葉っぱのようなものを持ってやってきた。


「エライ事になった、アンタ、すぐ来てくれ」

 村長のダンムもすっかり酒が抜けた顔になり、自分も首を縦にブンブンと振って、ダンムの後をついて行った。


 集会所に入ると、伝書鳥の用意が出来たと報告してきた若者がいて、ダンムは「町の冒険者ギルドに至急報告、内容はシュラ村で黒紫の女王サソリを仕留めた、仕留めたのは3等級冒険者の・・・えぇと・・」ダンムが私を見たので「タダノです」と言うと「タダノだ、タダノが仕留めた、これから早ザラで町に運ぶ、一緒にかなり具合の良いオスの大サソリを10匹以上運ぶ、以上、シュラ村村長ダンム」と、一気にまくしたてた。


 ダンムのすぐ側で筆記をしていた女性が頷いて、伝書鳥の用意が出来たと報告してきた若者に羊皮紙のようなものを渡し、若者はすぐに集会所を飛び出していった。


 続いて入れ違いに早馬ならぬ早ザラの用意が出来たと報告してきた中年男性が入ってきた。


 ダンムは私に「すまないが一緒に町まで来てくれ、移動しながら説明する!」と言って歩きだしたので「分かりました」と答えてダンムの後をついて行った。


 村の出入り口に近付くと、既に早ザラの用意が出来ていて、4頭の早ザラが2頭ずつ大きな荷車を牽引しており、一方はオスの大サソリ、もう一方は女王サソリを乗せていた。オスの大サソリは解体されて先ほどの中年女性がマルムドと言った葉っぱで覆われており、女王サソリの方は尻尾の先端だけ切り落とされて葉っぱが巻きつけられており、お腹に抱えた卵袋も厳重に葉っぱで覆われていた。


 早ザラには直接またがらず、荷車に腰かけて乗るようだった。そしてそれぞれの荷車の先端中央にはザラを操る運転手が乗っていた。


「今日は町で泊まる、もしかしたら数日は町にいることになるかもしれん」

 ダンムはそう言ってから「よし!行くぞ!」と出発の合図を送った。


 早ザラはその名の通り結構速く、私の全力疾走に近い時速60キロ程の速度で走った。女王サソリが乗せられた荷車の上に座った私とダンムは少し大きな声で話をした。


「詳しい事は町に着いてから話すが、タダノが捉えたこの女王サソリはこの後町で競売にかけることになるだろう」


「競売ですか?」

「うむ、恐らく・・・いや、私にも果たして幾らの値が付くか分からん・・・」


「そうなんですか!?」

「ああ、だからこれはウチで引き取るわけにはいかん、冒険者ギルドの采配にまかせるしかない」


「なるほど・・・」

「タダノに頼みがある、あっちのオスの大サソリなんだが、追加で倒した5匹も譲ってはもらえないだろうか・・・」


「もちろんいいですよ!」

「本当かね!その・・・こう言っては何だが、個人で肉屋に売った方が儲かるのだぞ」


「ええ、構いません、自分は冒険者ギルドから成功報酬をもらえればそれでいいです、何よりもこれからもシュラ村の皆さんと仲良くしてもらった方が、長い目で見れば今後私にとって利益になりそうです」

「・・・」ダンムは黙って私の目を見てから、ウンウンと納得した様子だった。


「なるほど、腕が立つ冒険者というのは、先を見据える能力もあるのだな、私も村の代表という立場をしている以上、目先の利益ではなく村の将来を見据えた利益を考えなければならない、タダノもまさにそうした考えで行動しているのだな、そういう者が生き残りやがてさらに上の冒険者になるのだろう」


 大分過大評価されてしまったが、実の所それ程お金が欲しいわけではなかっただけのことだった。


 防具屋で一番のお宝防具を見ても今一つの性能だったので、是非ともそれを手に入れるだけのお金が欲しいということもなかったし、下手に大金を手にしたらズール族のように私の金を狙って、徒党を組んで襲ってくる可能性も高くなる。


 出来れば自分はあまり目立たず、普通にこの異世界の冒険と生活を楽しみたい。大それた壮大で波乱万丈なドラマのようなイベントは見るのは好きだが当事者になるのは勘弁願いたい。


 美味しい物が食べれて、様々な文化に触れて、そこそこ命の危険性が低い冒険を楽しめればそれでいいのである。


 まぁそれでも少し強い敵と戦ってより良いアイテムを手に入れるという冒険なら大歓迎だ。


 その後、さすが早ザラというだけあって、2時間半程で町の大門まで到着した。夕暮れ時までまだ大分余裕があった。


 入門待ちの行商人たちがこちらの荷車に乗せた女王サソリを一目見て仰天した。すぐに別の門番たちが駆け付けてきて、荷車の女王サソリを確認するや「事情は聞いている!ついてこい!」と言って先導してくれた。大門を通過する時、朝の門番と目が合い、頷いて親指を立ててくれた。ダンムも同じことをしたが、こういうゼスチャーは異世界でも同じなんだなと感心した。


 町に入るとオスの大サソリを乗せた荷車は肉屋の方に向かい、女王サソリと私とダンムを乗せた荷車は別の大きな建物へと向かった。ダンムによるとそこが競売所とのことだった。


 競売所でも既に伝書鳥で情報が届いているようで、そのまますぐに搬入口と思われる場所に誘導された。その間周りにいた人達が寄ってきて口々に凄い凄いと言っていた。


 女王サソリを競売所に預けると、すぐに冒険者ギルドに行ってくださいと言われ、ダンムと自分は冒険者ギルドへと向かった。


 冒険者ギルド建屋に入るなり、いつも以上に冒険者達の目線を感じ、先日打ち解けた若手ギルド職員に「ギルド長がお待ちです」と、またしてもいつもの個室に案内された。


 私とダンムが入室するなり、ソファーに腰かけていたウォルロッドが立ち上がり「おいおいタダノ、お前さん、またとんでもないことをしでかしたな」とその巨躯で威圧するように向かってきた。ダンムは固まり、自分も「すっ、すいません!」と目をつぶり頭を下げた。


「違う違う、そういう意味じゃない、まぁ座れ」


 ウォルロッドに言われて私達はすぐにソファーに腰かけた。するといつものようにシナモン入りの甘いミルクティーを持った職員の人が入ってきた。


 一口飲んで、あぁやはり美味しくて心が和らぐとホッとした。


「いやスマンスマン、つい私も興奮してな、勘違いさせてしまった。それにしても女王サソリを初日で、それもお前さんたった一人で倒すとはな、全くもって信じられん強さだぞ、一体お前さんの村はどうなってるんだ?戦士の一族の村か?」


「えっ?いやぁ・・・ハハハ、確かに皆成人すると色んな国に行って出稼ぎに行きます、貧しい片田舎なのでこれといった収益がないですから」


 ますます私の嘘八百にも磨きがかかってきた。


「なるほど、東方の人間に用心棒や傭兵や冒険者が多いわけだ」


 ますます私以外の日本人がこの世界に来ているのではないかと言う思いが強まった。


 その後、ダンムを交えて話し合い、オスの大サソリは全てシュラ村へと譲り、ギルドから上乗せ報酬金として受け取る事、女王サソリもギルドに献上して、ギルドから報酬金として受け取ることを誓約書に書いた。ダンムからもウォルロッドからも本当にそれでいいのか?と何度も念を押されたが、大金目当に命を狙われるよりもマシだと答えた。


 しかしウォルロッドは少し難しい顔をして「いや、それでも目を付けられるのは避けられんだろう」と、非常に不安になるセリフを言うのであった。

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