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異世界小説家  作者: キクメン


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45/383

45:クイーン

 シュラ村にて抜群に美味しい大サソリの肉鍋を食べて満足した私は、メスの大サソリの肉はその倍は旨いと村長のダンムに聞かされたので、俄然やる気が出た。


 まだ昼には少し早い時間だったのと、果実酒で結構気を良くしたことも相まって、私は早速メスの大サソリを探しに行くことにした。


 その際大サソリの運搬用にザラを貸してくれないかと頼んだところ、二つ返事で了承してもらい、大人しくて一番力持ちのザラを貸してもらった。そのザラにはさらに大きな荷車を牽引させた。


 またしても私はザラには乗らず駆け足で狩り場へと向かって行った。ザラは「ゲェェェ」と以前の優しいザラよりも低い声で鳴いた。なんとなく「待ってぇ」と言われている気がした。


 5分程して先ほどの狩り場に到着したが、大サソリの姿は見当たらず、さらに先に進むことにした。


 すると、小高い丘の頂上に登りきって下を見下ろしたところで10匹以上はいそうな大サソリの集団を発見したのだが、それよりもその後方の岩陰にじっとしている一際大きな黒紫色のかなり巨大な大サソリに目が釘付けになった。


 私はそれを見て恐怖で足がすくむこともなければ腰を抜かすこともなければ気絶することもなく、狂喜乱舞しそうなくらい喜んだ。


 そこですっかりプロテクターとマントを装備していないことに気が付いて、果実酒で少し酔っているせいか?と酒のせいにしつつもこれはいけないと反省しながら、アイテム格納バッグからプロテクターとマントを取り出して装着した。


 その後やっと追いついたザラがさらに弱々しく「ゲェェェ」と鳴いたところ、巨大な黒紫色の大サソリがこちらというよりも私の後ろにいる大きなザラを見てここからでも聞こえる程の甲高い音を発した。


 まるでガラスを爪で引っ掻いたような酷い音で、その音に呼応するかのように即座に10匹以上の大サソリが一斉にこちらに向かってきた。


 ザラが完全に恐怖で固まって動けなくなったので、私は槍の鞘を抜いてこちらに近づけさせる前に一気に全部仕留めてやると心に誓い、速度を上げて突進した。


 もう「情報」で確認することすらせずに、7メートルを割ったそばから一気にステップインして速攻で眉間に槍を突き刺した。


 大サソリは移動自体はそれほど速くないので、私は横を突破されることはなく、自慢のステップワークで次々と各個撃破していった。


 ついさっきまで果実酒を飲んでいたのだが足元はフラつかず、いつものようにしっかりと素早く移動することが出来た。自分は結構お酒に強いのだろうかとふと考える程の余裕があった。


 5匹の大サソリを1分もかからず撃退したところで、他の大サソリはさすがにうろたえたようにして、こちらに近づいてこなくなった。ただひたすら威嚇の音を発するだけだった。


 するとまたしても耳をつんざく甲高い音がして、岩陰でじっとしていた巨大な大サソリがその姿を現した。


 まだ10メートル以上は離れているのでステータスは分からないが確かにデカイ。村人が言っていた通り3メートル以上はありそうだ。そして黒紫色の殻が実に禍々しく見えるのだが、実は少しカッコイイと思ってしまった。


 その巨大大サソリはこちらをじっと見つめたかと思うとより一層大きな声で威嚇というよりも威圧してきた。今度はガラスを爪で引っ掻く音というよりは「キャアァーッ!」という甲高い声のような高音だった。


 確かに非常に耳障りで不快な音だが、それだけのことなので、自分は槍を構えて慎重に数メートル近づいて「情報」と念じた。


-------------------

大サソリ(メス、希少)

レベル:5

生命力:10

魔法力:0

持久力:10

攻撃力:5

防御力:5

素早さ:4

幸運度:0

魅力:3

魔法技能:0

異常耐性:0

【特殊】

毒射出

-------------------


 私はまぁまぁ強いことに感心しつつも、希少と表示されていることに喜んだ。そして当然最後の一行を見逃さなかった。


「なるほど、そういうのアリなんだね」

 私はニヤリとして、それならばこちらも面白いものをみせてやろうとした。


 残りの大サソリ達の目の前に向けて私は右手をかざし、かざす必要も唱える必要もないのに仰々しく「ファイヤーウォール!」と唱えて、炎の壁を発生させた。ちなみに自分の想定よりも壁が大きくて、放った本人が「えっ!?」と拍子抜けする声を出してしまった。


 大サソリ達はさらにうろたえて、悲鳴のような声をあげて後退した。


 これで邪魔は入らないということで、いよいよクイーンサソリへと近づいた。


 私の射程圏内7メートルに達した所で、予想通り頭上に高く掲げた毒針の付いた尻尾の先端がプクッと膨れたのをハッキリと確認したので、余裕で横にサイドステップして避けると、先程まで自分がいた位置にベシャッと黒紫色の液体が降り注いだ。


 クイーンサソリが目を細めて喜んだように見えたが、次の瞬間には私の槍が眉間に深々と刺さり、そのままこちらを見ることもなく絶命した。ゆっくりと力なくクイーンサソリの大きな尻尾は地面に倒れていった。


 ちょうどファイヤーウォールの効力が切れてその光景を見た大サソリ達はすごすごと後退して逃げていった。


 私はクイーンサソリの横に回ってお腹の辺りを見てみたら白い大きなパンパンに膨れ上がった袋がついているのを見つけて恐らく卵だと確信し「ィヤッホゥ!」と声をあげた。


 クイーンサソリがいた辺りを見ると、ザラの骨とみられる骨が大量にあって、なるほど、この辺りで放牧しているザラが餌食になったんだなと思った。


 私はアイテム格納バッグを開いてクイーンサソリに押し当てようとして、以前お爺さんの軽トラは入らなかったからこれは無理かなぁと思ったが、少しづつゆっくり吸い込まれていったので喜ぶと同時に、これぐらいのサイズがギリギリなのだなと分かった。


 それからザラの所に戻りながら倒した5匹の大サソリもアイテム格納バッグに入れて、怯えるザラのもとに辿り着いた。


「もう、おっかないのは全部倒したよ、仲間の仇もとったよ、さぁ帰ろうか」と言って、鼻筋を優しく撫でてやったら「グェェェ」とやはりあまり前回のザラよりも可愛くない低い声で鳴き、顔を舐めてくれた。可愛くはないがなんとなく愛嬌のある声で、これはこれで可愛いかもと考え直した。


 そうしてザラを連れて途中まで一緒に歩き、シュラ村が見えてくる前でプロテクターとマントを脱いでアイテム格納バッグに入れて、ザラに話しかけたり撫でてあげたりお茶を飲んだりして1時間程時間を潰し、ザラも大分落ち着いたところで、かなり大きな荷車に大サソリを乗せて村へと凱旋した。


 見張り台の人に手を振りながら村の入り口に差し掛かったところ、見張りの人は何やら大慌てで村の中の方に入っていき、私はそのまま渡り橋を通過して村の中に入ったところで村長のダンムを先頭にまたしてもナタを持った中年女性達が殺到してきて、事情を知らない旅人なら腰を抜かすところだが、自分は知っているので荷車から少し離れて「さぁこちらをどうぞ」と言わんばかりに荷車の方に手を差し出した。


 若干鼻を高くしてすまし顔というかしたり顔というかドヤ顔だったかもしれない私だったが、そんな私など目もくれず全員荷車に乗せられた大サソリを見て固まり、村長のダンムが「こりゃ大変だ!すぐに伝書鳥と早ザラの用意を!」と大声をあげた。


 さすがにそのただならぬ様子を見てドヤ顔から一転「えっ?何事?」と急に不安になるのであった。

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